2014年7月1日火曜日

全国で集団的自衛権行使容認に反対・抗議の声

 30日、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定が迫る中、反対する市民や学者らが全国で抗議の声を上げました。
 
 東京・永田町首相官邸前には、市民ら1万人が集まり「解釈改憲、絶対反対!」「集団的自衛権はいらない」とシュプレヒコールを繰り返しました。
 
 大阪市でも、自民党大阪府連の入るビル前に市民ら約200人が集まり「戦争したがる総理は退陣」「憲法守れ。ファシズム許すな」とシュプレヒコールを上げて抗議しました。
 
 憲法学者らでつくる国民安保法制懇は東京都内で記者会見し、「平和主義を捨て去る重大事。一政権の恣意的な解釈変更で認めることは、立憲主義の否定だ。閣議決定の断念を強く求める」との声明を出しました。
 伊藤真弁護士阪田雅裕元内閣法制局長官伊勢崎賢治東京外国語大教授憲法改正派の小林節慶大名誉教授らが出席しました。
 
 沖縄県議会は30日、集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈変更に突き進む安倍内閣に対し「強く抗議し、慎重な審議を行うよう要請する」とする意見書を賛成多数で可決しました。社民や共産など県議会野党が提出し、公明党も賛成し、自民党は反対しました。
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全国で抗議「憲法破壊、許すな」 集団的自衛権行使容認に反対の声
共同通信 2014年7月1日
 集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定が迫る中、反対する市民や学者らが30日、全国で抗議の声を上げた。
 
▼「憲法破壊、許すな」 官邸前に市民1万人 
 東京・永田町では、市民らが首相官邸前に集まり「解釈改憲、絶対反対!」「集団的自衛権はいらない」とシュプレヒコールを繰り返した。
 抗議行動は首都圏の市民団体や労働団体でつくる「解釈で憲法9条を壊すな! 実行委員会」と、憲法学者や作家らによる「戦争をさせない1000人委員会」が呼び掛けた。官邸前の歩道は身動きができないほど。主催者発表で約1万人が集まった。
 市民らはプラカードやのぼりを手に、太鼓を打ち鳴らしながら抗議の意思を表明。マイクを通して口々に「安倍首相は現場に行く自衛隊員のことを考えたことがあるのか」「 閣議決定だけで変えるのは 憲法の破壊行為だ」と叫んだ。
 神奈川県横須賀市のフリーターの女性(23)は、短文投稿サイト「ツイッター」で抗議行動があると知って参加。「首相は国を守るためと言っているが、逆に日本が攻撃される可能性を高める。(行使容認で)自衛隊に入る人がいなくなったら徴兵制になるのでは」と心配し「これだけ反対をしている人がいる。与党だけで決めるのはめちゃくちゃ」と訴えた。
 東京都府中市の男性(53)は行使容認について「普通に憲法9条を読んだら、そんなことはできないはずだ。これでは解釈で何でもできてしまう。立憲主義ではない」と語気を強めた。
 
 ▼ 「戦争したがる総理退陣」 大阪でも抗議
 大阪市でも、自民党大阪府連の入るビル前に市民ら約200人が集まり「戦争したがる総理は退陣」「憲法守れ。ファシズム許すな」とシュプレヒコールを上げて抗議した。
 警察が警戒する中、代表者が閣議決定の中止を求める申し入れ書を手渡そうとしたが、府連の事務所は電気が消えており誰も対応しなかった。
 6歳と3歳の息子を連れた大阪市浪速区の主婦(28)は「子どもらにすてきな未来を残してあげたい一心で参加した。戦争自体をなくせる世の中にしていくべきだ」と訴えた。
 ヘイトスピーチ(憎悪表現)の反対運動をする大阪府高石市の病院職員(46)は「レイシズム(人種差別主義)の台頭とファシズム政権はつながっている」と強調。一方で同志社大1年の男子学生(18)は「戦地に行くのは嫌だが、賛成の人の意見を聞いて、もう少し議論する場も必要だ」と話した。
 
▼学者ら「閣議決定断念を」  国民安保法制懇が声明 
 憲法学者らでつくる国民安保法制懇は30日、「平和主義を捨て去る重大事。一政権の恣意的な解釈変更で認めることは、立憲主義の否定だ。閣議決定の断念を強く求める」との声明を出した。
 東京都内で記者会見したメンバーの伊藤真(いとう・まこと)弁護士は「この国の形を大きく変えることが密室の与党協議でなされてはいけない。真剣な議論なしに国民の命が危険にさらされることは許されない」と訴えた。
  阪田雅裕(さかた・まさひろ)元内閣法制局長官は閣議決定案を引用し「わが国が攻撃を受ける事態以外で『わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される』という事態があり得るのか」と指摘した。
 国際紛争解決に従事してきた 伊勢崎賢治(いせざき・けんじ)東京外国語大教授は「憲法9条は、海外での武力行使を前提にしていない。無責任な状態で自衛隊を海外に出すなら最高司令官を名乗る資格がない」と、安倍晋三首相を批判した。
 憲法改正派の小林節(こばやし・せつ)慶大名誉教授(憲法学)は、解釈変更による行使容認という安倍政権の手法に「憲法の破壊、無視だ。(本来)国民に憲法改正を問うしかない」と憤った。
 国民安保法制懇は5月、 集団的自衛権行使容認 をめぐる 問題点を検討するために結成。メンバーは他に柳沢協二(やなぎさわ・きょうじ)元官房副長官補、 愛敬浩二(あいきょう・こうじ)名古屋大教授(憲法学)ら。
 
▼行使容認「強く抗議」  沖縄県議会が意見書 
 沖縄県議会は30日、集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈変更に突き進む安倍内閣に対し「強く抗議し、慎重な審議を行うよう要請する」とする意見書を賛成多数で可決した。社民や共産など県議会野党が提出し、公明党も賛成。自民党は反対した。
 意見書は、太平洋戦争末期に悲惨な沖縄戦を経験した県民の「戦争に対する不安と恐怖はぬぐい去れない」と強調。集団的自衛権が行使され戦争に巻き込まれれば「県民の生命、財産が脅かされ、経済や観光振興など沖縄県への影響は計り知れない」として、国民的な議論をするよう求めた。
 
集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更に反対し、首相官邸前で抗議する人たちと警備する警察官=30日夕
  

 
 
 
 
自民党大阪府連が入るビルの前でシュプレヒコールを上げる人たち=30日午後、大阪市
 
記者会見で声明を読み上げる国民安保法制懇の伊藤真弁護士(左端)=30日午後、参院議員会館