2014年7月23日水曜日

集団的自衛権 : 韓国軍のベトナム派兵の経緯と実態

 安倍首相は、こともあろうに武力行使の新3要件を、集団的自衛権の行使を限定する「世界で最も厳しい歯止め」だと述べていますが、唖然とする話です。
 「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、・・・危険がある場合に」、集団的自衛権を行使出来る・・・このどこに「歯止め」があるというのでしょうか。いくらでも拡大解釈が可能な文言です。
 
 古来、「全ての戦争は自衛/国防を口実として進められてきた(「平和運動原論」福山秀夫)」といわれます。実際国連発足以降、アメリカはあらゆる侵略戦争をすべて自衛/国防のための戦争、集団的自衛権の行使であるとして、国連に報告してきました。
 
 1965年に韓国がアメリカのベトナム侵略戦争に加担するに当たり、その理由を「自国の安全保障」のためだと国会で説明し、その根拠として「地域的な集団安全保障」を挙げていたことが明らかにされました。集団的自衛権の行使に他なりません。
 
 韓国軍は73年まで延べ約31万人を派兵(最盛期には5万人)し、約4700人の戦死者を出しました。この多大な死者数はアメリカ軍に使役された韓国軍の役回りを象徴するものです。
 韓国軍はベトナムの婦女子(や農民)に対して、筆舌に尽くしがたい蛮行を行ったといわれています。それは絶対に許されないことですが、その背景にはこうした実態がありました。
 
 安倍首相はこれらのことがらについて認識しているのでしょうか。
 
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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韓国、ベトナム派兵決定の国会審議 安倍政権「閣議決定」と共通 
「自国の安全保障」理由に
しんぶん赤旗 2014年7月22日
 韓国政府が1965年8月13日、米国の要請に応じてベトナムへの陸軍戦闘部隊の派兵を国会で決定した経緯が、同国の国会議事録から判明しました。
 それによると、米国主導のベトナム侵略戦争で、韓国に何の戦火も及んでいないのに、派兵は「自国の安全保障」のためだと説明。その根拠として集団的自衛権を意味する「地域的な集団安全保障」を挙げています。安倍政権が、「他国に対する武力攻撃」で、「我が国の存立が脅かされる」として集団的自衛権の行使を容認しているのと同じ論理です。
 
■4700人が戦死
 ベトナム派兵は、韓国軍にとって初めての海外派兵でした。韓国政府は米国からの経済援助と引き換えに、64年に工兵部隊などを派兵。65年に戦闘部隊1個師団の派兵を決定したのを皮切りに、戦闘部隊を増派。最盛期には5万人を派兵しました。73年まで、のべ約31万人を派兵。約4700人が戦死しています。
 韓国政府は65年7月12日、国会に戦闘部隊の派兵同意案を提出。南ベトナムに対する「共産主義の脅威」が、「東南アジア自由陣営はもちろん、わが国の安全保障にも直接間接に大きな影響を与える」としています。
 
■集団的防衛
 さらに、8月13日の国会本会議で金聖恩(キム・ソンウン)国防相は派兵の国際法上の根拠を説明。「国際的な集団的安全保障体制」には、国連軍のような「一般的」なものと、米韓相互防衛条約のような「地域的」なものの二つがあり、今回の派兵は「地域的な集団安全保障体制に基づく」と答弁しています。米韓相互防衛条約は、相手国に対する攻撃を自国に対する攻撃とみなす「集団的防衛」(集団的自衛権の行使)を前提にしています。
 
■戦地に可能
 安倍政権は1日の「閣議決定」で、「他国に対する武力攻撃」であっても、「国の存立を脅かす」「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」場合があるとして、海外での武力行使を可能にしようとしています。しかし、これらの要件は時の政権の恣意(しい)的な判断で、いくらでも拡大され、自衛隊を戦地に送ることが可能になることが、韓国のベトナム派兵の経緯からも明らかです。