2014年7月13日日曜日

菅官房長官らの横暴とNHK上層部の卑屈

 集団的自衛権の行使容認を閣議決定した翌々日の3日、NHKは「クローズアップ現代」に菅内閣官房長官を招き、国谷キャスターが、「他国の戦争に巻き込まれるのでは」、「憲法の解釈を簡単に変えていいのか」などと質問しました。
 これは国民の誰もが持っている疑問なので、もしもそれを聞かないようでしたら、ジャーナリストの資格を問われたことでしょう。また菅氏も番組に出る以上は、当然その答を準備しておかなくてはならないテーマでした。
 
 菅氏がどう答えたのかは不明ですが、番組の直後に異変起こりました。
 秘書官がNHKにクレームをつけたということです。そして、数時間後再び官邸サイドからNHK上層部に、君たちは現場のコントロールもできないのかと抗議が入り、慌てふためいた上層部は番組の制作部署に対して、「誰が中心となってこんな番組作りをしたのか」、「誰が国谷にこんな質問をしろと指示を出したのか」という、「犯人捜しまで行ったということです
 
 あきれ返る話です。ごく常識的な質問に激怒するとは、一体どういう精神構造をした政権中枢なのでしょうか。
 また、NHKは政府の広報機関ではないのですから、「当然のことを聞いたまでだ」となぜ反論しなかったのでしょうか。ところが「FRIDAY」によれば、反論するどころか土下座したということです。 

 官邸とNHKの驚くべき病理が明らかにされました。
 NHKが政府の支配下にあると思い込んだり、気に入らない質問に激怒するという体質は異常ですし、公共放送の使命を全く理解していないNHKの会長以下上層部の不甲斐なさもまた異常です。
 
 11日の「澤藤統一郎の憲法日記」ブログを紹介します。 
 澤藤統一郎氏は弁護士です。
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官邸とNHK経営陣に抗議を。放送現場の良心に激励を。
澤藤統一郎の憲法日記 2014年7月11日
今、ジャーナリズムが最も関心を寄せるべきテーマとして衆目が一致するところは、安倍内閣による集団的自衛権行使容認以外にはない。曲がりなりにも戦後続いた平和を危うくして、国と国民の命運を変転させかねない重大な内容もさることながら、立憲主義をないがしろにしている点でも、行政の継続性の観点からも、国民への説明責任を尽くすことなくあまりにも性急にことを運んでいる点でも、ジャーナリズムが最大級の関心を持って取りあげるべきは当然である。
 
そして、まっとうなジャーナリズムであれば、権力批判の視点を持たねばならない。「政府が『右』と言っているものを、『左』と言うわけにはいかない」では、ジャーナリズムとしては失格。こんな姿勢のメディアは、報道機関と言うに値しない。政府広報部門に等しく、「大本営発表」の伝声管に過ぎない。権力に畏怖しない毅然たる態度で事実を糺してこそ、ジャーナリズムでありジャーナリストではないか。
 
NHKの経営陣が安倍人事によって籠絡され、ジャーリストとしての矜持を捨て去っていることは既に天下周知の事実となっている。しかし、現場までが一色に塗りつぶされているわけではない。多くの良心的な職員が重苦しい雰囲気の中で、精いっぱいの努力をしていると理解してきた。その努力が、実るのか押し潰されるのか、象徴的な事件が、7月3日に放送された『クローズアップ現代』の官房長官インタビューを舞台に生じているという。
 
本日(11日・金曜日)の主要紙朝刊に、講談社の「FRIDAY」の広告が掲載されている。そのトップに「安倍官邸がNHKを『土下座』させた一部始終」とある。「国谷キャスターは涙した‥」と付記されてもいる。小さく「『クローズアップ現代』で集団的自衛権について突っ込まれた菅官房長官側が激怒。‥」との説明。集団的自衛権の問題としても、NHK問題としても、これはただごとではない。見過ごせない。
 
「FRIDAY」を入手して目を通してみた。2頁だけの短い記事だが、「官邸・経営陣・現場」をめぐるNHK問題を浮かびあがらせている。
 
「FRAIDAY」の記事を引用する。
 「この日の『クロ現(クローズアップ現代』は、菅義偉官房長官(65)をスタジオに招き、「日朝協議」と「集団的自衛権の行使容認」について詳しく聞くというものだった。官房長官がNHKにやって来る局には緊張感が漂っていたという。「菅さんは秘書官を数人引き連れて、局の貴賓室に入りました。籾井会長も貴賓室を訪れ「今日はよろしくお願いします」と菅さんに頭を下げていました。その日の副調整室には理事がスタンバイ。どちらも普段は考えられないことです」(NHK関係者)
 
官房長官は、政府公報機関に出向いたつもりだったのだろう。ところが、ほんの少々だが、あてがはずれたようだ。現場には、政府公報機関意識が乏しく、ジャーリストとしてのプライドが残っていたからだ。
 
FRIDAYは、「『他国の戦争に巻き込まれるのでは』『憲法の解釈を簡単に変えていいのか』 官房長官が相手でも物怖じしないしない国谷氏の姿勢はさすがだった」と評している。
 
「だが、直後に異変は起こった。秘書官がNHKにクレームをつけたという。」「そして、数時間後再び官邸サイドからNHK上層部に、『君たちは現場のコントロールもできないのか』と抗議が入ったという。局上層部は『クロ現』制作部署に対して『誰が中心となってこんな番組作りをしたのか』『誰が国谷に「こんな質問をしろ」と指示を出したのか」という。『犯人捜し』まで行ったというのだ。」
 
貴重な報道である。官邸は、NHKに「君たちは現場のコントロールもできないのか」と不満をぶつけてよいと思っているのだ。NHK経営陣は、毅然とこれに抗議して現場の良心的職員を守ろうという気概はカケラもない。右往左往するばかり。いや、官邸の意を酌んで現場を締め上げているのかも知れない。
 
大切なことは、官邸とNHK経営陣に抗議すること。NHKの現場の良心を励ますことではないか。「国民は、その国民にふさわしい政府を持つ」という。「国民は、その国民にふさわしいメディアを持つ」とも言えよう。発言しなければ、NHKを再びの大本営伝声管にしてしまう。
 
さっそく、知人がメールで抗議・要請先を教えてくれた。番組専用サイトへコメントを送信するには、次のURLを開き、「コメントを投稿する」をクリックすると、コメント送信用の画面が出てくるそうだ。ぜひ、ものを言おう。