原油の価格が1バレル50ドルを切るところまで下落した結果、アメリカのシェールオイル企業が倒産しました。他にも採算割れに陥っているシェール企業は多いだろうということです。
アメリカはLNGガスや原油の輸出で利益を上げているロシアを破綻させるために、サウジアラビアを説得して原油価格が下がっても原油の生産量を減らさないようにさせ、原油の価格を暴落させました。いまの価格は直近のピークである昨年7月時点の半額をも大きく割り込んでいます。
原油価格が暴落すれば、当然サウジアラビアをはじめとする産油国の収入もそれに比例して減少するので、産油国側も大いに困る筈です。
サウジアラビアはアメリカとの力関係で同意するしかなかったのでしょうが、承諾する振りをしながら「肉を切らせて骨を切る」作戦に出たのではないかという見方はありました※。
※ 1月8日 原油相場の下落は産油国、EUそしてアメリカをも破綻させる
それがこの「原油価格の暴落作戦がある限度を超えれば、アメリカのシェールオイル・シェールガス産業が倒産する」という、ブーメラン効果に他なりません。事態はついにそこまで到達したということです。アメリカは今後どうしようというのでしょうか。
ところで前掲の記事で、アメリカの作戦によってルーブルの価値を半減させられたロシアが、貿易をドルベースで決済した後に、それで原油同様に価格を押し下げられている「金(=金塊)」を購入する作戦に出て、いずれこの作戦が終了したときに金の価格も上昇するので、ルーブルの価値の下落分がそれで相殺されるというロシアの頭脳的なプレーに触れましたが、アメリカの誤算はこれに留まりません。
(以下は1月 8日付マスコミに載らない海外記事「アメリカ-EU 対ロシア枢軸における動揺」 http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/-eu-a445.html の部分的要約です)
先にEUをはじめ全世界にアメリカが呼びかけて、ロシアに対する経済制裁を実行中ですが、それによるダメージはEUの側により顕著に現れました。
BBC(英国公共放送)は今週、“フランスはウクライナを巡るロシア経済制裁をおわらせようとしている”、“イタリア、ハンガリーとスロバキアの政治家達も経済制裁を緩和したがっている”と報じました。
実際にはそのメンバーに、ドイツ、オーストリア、スペイン、ギリシャ、チェコ共和国やブルガリアも追加されるべき、というのが実情だということです。
ロシアとEU間の通商・貿易は、ロシアとアメリカ間の10倍もの規模なので、経済制裁の展開と共に、EU自身の低迷する経済に顕著に悪影響を与えています。
アメリカの独断による経済制裁に倦んだヨーロッパでは、ごく最近もチェコのミロシュ・ゼマン大統領は、CIAが据えたキエフ政権アルセニー・ヤツェニュク首相を “戦争首相”として非難し、ドイツのジグマール・ガブリエル副首相は、ワシントンが主導している作戦は破壊的だとして“ロシアを政治的、経済的混乱に追いやることが狙いであってはならない”と述べ、同じくフランク外務大臣も、ワシントンのこれらの作戦への不安を表明し、“これが制御不能になれば、我々の利益にはなり得ない。経済制裁政策の上で、これを念頭に置いておく必要がある”と経済制裁に警告するなど、ヨーロッパ各国民は、ウクライナを巡る危機も、ヨーロッパとロシア間の危機も、ワシントンが駆り立てているものであり、全く不要の事柄であることを認識しています。
ここまで真相が明らかになれば、EU自体が耐え難くなっている経済制裁を更に継続していくことは困難だと思われます。
前置きが長くなりましたが、米シェール企業破綻のニュースを紹介します。
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米シェール企業破綻 原油価格急落 採算割れ
東京新聞 2015年1月9日
【ニューヨーク=共同】米南部テキサス州で新型原油「シェールオイル」の開発を手掛けるWBHエナジーが米連邦破産法一一条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻したことが八日分かった。複数の米メディアが報じた。最近の急激な原油価格下落後に、経営破綻が表面化した米シェール企業は初めてとみられる。
負債総額は最大で五千万ドル(約六十億円)という。原油安に伴って売り上げが減ったことで採算が悪化し、資金繰りが行き詰まったとみられる。
今月になってニューヨーク原油先物相場は一バレル=五〇ドルの大台を割り込んで推移しており、証券アナリストは「採算割れに陥っているシェール企業が多いだろう」と指摘している。原油安が続いた場合、今後もシェール企業の経営破綻が相次ぐとの見方が出ている。
シェールオイルの開発は、一般的に従来の原油開発に比べてコストが高いとされる。