2015年1月8日木曜日

原油相場の下落は産油国、EUそしてアメリカをも破綻させる

 原油価格の下落が西側の経済を揺るがしていますが、それは年明け6日の日本株価にも525円の急落となって反映されました。投機筋の思惑買いによって高騰した日本の株価をアベノミクスの成果と信じている安倍首相にとっては、手痛い幕開けとなりました。
 この原油安作戦は、アメリカサウジアラビアを説得してロシア経済を破綻させる目的で仕掛けていると見られていますが、その影響は当然全ての産油国に及び、OPEC加盟国は軒並み多大な収入減を来たしています。
 
 産油国が産油量を減らさないために猛烈な原油安が生じていますが、現在の油田は高圧の塩水を油田に封入して原油を噴出させる構造になっているため、産油量を絞ることが出来なくなっているとも言われています。それも当初からアメリカの作戦に織り込まれていたのでしょう。
 しかしこのまま原油安が続き、その価格がアメリカのシェール・オイルやシェール・ガスの原価よりも下がるとアメリカ自身もエネルギー政策が破綻することになります。
 サウジアラビアはそれを見越したうえでの「肉を切らせて骨を断つ」戦略なのかも知れません。
 
 ところでこうした状況の中でも肝心のロシアは音を上げず、その代わりにEU諸国が深刻なダメージを受けて、ここにきてドイツやフランスはアメリカの制裁に異を唱え始めましたアメリカの作戦がEUにダメージを与えることは当初から予想できたことで、EUの弱体化アメリカが目指しているもののひとつでした。
 
 以下に紹介する櫻井ジャーナルの記事中に、「EUに見切りをつけたロシアは中国との関係を強め、決済をドルから金へ変更させつつあり、アメリカは窮地に陥った」という記述がありますが、これはルーブルの価値を半減させられたロシアが、貿易をドルベースで決済した後に、それで原油同様に価格を押し下げられている「金(=金塊)」を購入する作戦に出たことを言い、いずれこの作戦が終了したときに金の価格も上昇するので、ルーブルの価値の下落分がそれで相殺されるというロシアの頭脳的なプレーのことを指しています
          ※ 2015年1月 4日 達人プーチンのワナ
 
 6日付の櫻井ジャーナルは、当面ロシア経済を破綻させるために「原油相場下落作戦」を遂行しているアメリカが、如何に利己的な考え方から他国を破綻させるべく腐心しているかについて簡潔に説明しています。
 
 末尾に添付した原油価格下落のグラフは、記事とは別のところから参考までに持ってきたものです。
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原油相場の下落は産油国にダメージを与え、シェール石油産業等を破壊、投機市場から資金引き揚げ    
櫻井ジャーナル 2015年1月6日
 原油価格の下落が西側の経済を揺るがしている。アメリカとサウジアラビアがロシアを攻撃する目的で仕掛けていると言われているが、その影響は全ての産油国におよび、投機市場から資金を引き揚げることは予想されていた。そうした動きが2015年の初頭から見られる。その結果として倒産、そして失業者の増加も避けられないだろう。
 WTI原油相場は1バレル50ドルを切ったようだが、OPEC加盟国が予算を組む際に想定していた価格はイランが140ドル、ベネズエラが121ドル、イラクが106ドル、サウジアラビアが93ドル、クウェートが75ドル、アラブ首長国連邦が70ドル、カタールが65ドルといった具合になっているようで、いずれも厳しい状況だ。アメリカのシェール・オイルやシェール・ガスの産業、あるいは北海油田は破綻する可能性がある。サウジアラビアは「肉を切らせて骨を断つ」戦略なのだろうが、どこまで持つかはわからない。
 
 アメリカがロシアを攻撃する大きな理由はふたつある。本ブログでは何度も書いているように、ソ連が消滅した後、ネオコン/シオニストは1992年にDPG(国防計画指針)の草案、つまり世界制覇プロジェクトを作成した。その目的を実現するため、主権を放棄していない国々を制圧したいわけだが、それを妨害しているのがロシアだということがひとつ。ボリス・エリツィン時代のロシアはアメリカの属国になっていたが、今度は復活が不可能なように、ロシア自体を消滅させることがもうひとつの理由。
 
 DPG草案作成の前年、ポール・ウォルフォウィッツはシリア、イラク、イランを殲滅すると口にしていたが、その草案では新たなライバルの出現を防ぐことを第1の目的としている。潜在的ライバルとして示しているのは西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、そして南西アジアだ。
 この草案が作成された当時、旧ソ連圏の中心的な存在、ロシアではアメリカの傀儡、ボリス・エリツィンが大統領として君臨、エリツィン周辺の腐敗したグループと手を組んだ人びとが国の資産を盗んで巨万の富を築いていた。いわゆる「オリガルヒ」だ。ロシアはアメリカの属国になっていたとも言える。ネオコンから見て、残された制圧すべき国はシリア、イラク、イランのほか、中国、そしてラテン・アメリカの国々だろう。
 
 内容がリークされたDPGは書き直されたようだが、2000年にPNAC(ネオコン系シンクタンク)が「アメリカ防の再構築」として復活させ、その翌年から始まるジョージ・W・ブッシュ政権の基盤になった。
 ラテン・アメリカでアメリカへの従属を拒否する指導者の中心的な存在はベネズエラのウーゴ・チャベスだった。そのチャベスを排除するクーデターが2002年に試みられている。
 その黒幕と指摘されているのはイラン・コントラ事件でも登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そして1981年から85年までのホンジュラス駐在大使で、後に国連大使にもなるジョン・ネグロポンテだ。このクーデター計画は、事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人のアリ・ロドリゲスからチャベスへ知らされたため、失敗に終わった。
 
 WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに組み込まれた機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入し、チャベス派を分裂させ、アメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるとしている。そのチャベスは2013年3月、癌のため、58歳の若さで死亡した。
 
 DPGでも示されているように、アメリカはEUも潜在的なライバルとして警戒の対象にしている。シリアの体制転覆を妨害し、独立国として影響力を強めているロシアを潰そうとアメリカは必死になっている。メディアでロシアを「悪魔化」する一方、軍事的な挑発でロシア軍を誘っているのだが、ロシアは自重、アメリカの作戦は思惑通りに進んでいないようだ。
 そこで、1980年代に成功した作戦を再び使い、石油相場を引き下げたようだが、これはロシアより西側にダメージを与えている。アメリカの命令に従うEUに見切りをつけたロシアは中国との関係を強め、決済をドルから金へ変更させつつあり、アメリカは窮地に陥った。
 ロシアへの「制裁」で最も大きなダメージを受けるのはEUだと指摘されていたが、その通りの展開で、ここにきてドイツやフランスはアメリカの制裁に異を唱え始めた。政府を動かしている一部のエリートは買収済みのようだが、国内の反発がそれだけ強いということだ。アメリカがEUの弱体化を狙っていることにEUも気づいたのかもしれない。
 アメリカはロシアの属国化を前提に、中国の制圧を目論んでいた。ブッシュ・ジュニア大統領が就任当初、中国脅威論を叫んでいた理由もここにある。が、日本もアメリカにとって潜在的なライバルであり、弱体化、属国化の対象でもある。 
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1710:40