2015年1月7日水曜日

戦後70年の首相談話の骨格はほぼ決まり +

 安倍首相が戦後70年の首相談話を終戦記念日に出す予定であると新年の記者会見で述べたのを受けて、早速米国務省のサキ報道官が5日、「首相談話は、アジアへの過去の植民地支配と侵略に対する反省とおわびを表明した村山談話と、慰安婦問題に関して反省と謝罪を盛り込んだ河野談話の趣旨を引き継ぐことが好ましいの趣旨をコメントしました。
 
 元外交官の天木直人は7日のブログで、それはサキ報道官を通じて米国から安倍政権に出された命令に他ならず、村山談話だけではなく河野談話も守れと言っているのだと述べました。
 そして戦後70年を経過したにもかかわらず、日本の占領者然としたこの米国の命令に対して、菅官房長官は6日の記者会見で全面服従の回答をしたと極めつけました。
 彼の言うとおり米国には絶対服従の安倍首相としては、米国の言うことを逸脱した談話は出せないことでしょう。
 
 いうまでもなく中・韓をはじめとするアジア諸国を念頭においた談話であれば、そういう内容になることは当然のことで喜ばしいことです。さらにそのために安倍首相は70年目の終戦記念日の1年も前から、繰り返し談話を出す、出すと述べてきたのですから、それは我々にとっても近隣諸国にとっても一層喜ばしいことです。(^○^)
 
 天木氏は決して反米の人ではありませんが、安倍政権が唯々諾々と米国の言うことに従う姿勢が許せないようです。それは彼自身が自立した外交を志向してきたことの反映と思われます。
 実際安倍氏は『戦後レジームからの脱却』を繰り返して叫んできた人なのですから、本来はそれを象徴する対米従属からの脱却こそが目指すべきものではあるのですが・・・
 
 天木氏のブログと朝日新聞の記事+及び東京新聞の社説を紹介します。
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迷走が止まらない安倍談話 @天木直人 
  天木直人のブログ 2015年01月07日
 中国から牽制されたかと思ったら、今度は米国から命令された。
 安倍談話のことだ。
 
 安倍首相の新年の記者会見を知ったオバマ政権はすかさず表明した。
 日本が村山談話や河野談話で謝罪したことは日本が近隣諸国との関係改善に努める上で重要な一章だったというのが我々の見解だ、と。
 
 これはものすごい発言である。
 村山談話だけではなく河野談話も守れと言っているのだ。
 過去の謝罪は第一章であり、今度の安倍談話で謝罪の最終章を書けといっているのだ。
 しかも、それは米政府の見解だといっている。
 つまり、これはオバマ大統領の安倍首相に対する命令だということだ。
 しかも、そのような重要な命令を、サキ報道官ごときの定例記者会見を通じて下している。
 まさしく米国は戦後70年たった今でも日本の占領者だ。
 
 この米国の命令に対して菅官房長官は6日の記者会見でなんと答えたか。
 日本の歴史認識は米国にも説明しており、十分理解していいると思う、と言ったのだ。
 河野談話も継承すると国会で答弁してきた、と言ったのだ。
 全面服従だ。
 
 この言葉ですべて決まりだ。
 安倍談話はオバマ政権によって決められることになる。
 有識者会議などをいまごろあわててつくっても無意味だ。
 8月15日に安倍談話を出す頃にはすべて終わっている。
 
 どこまで行ってもピント外れな安倍政権だ。
 それにしても谷内君は何をボヤボヤしているのだろう。
 何のための国家安全保障会議なのか。
 それにしてもメディアは何をしているのだろう。
 これほど安倍外交がピンチに立たされているというのに、まるで危機意識がない。
 どいつもこいつもお気楽だ。
 そんな連中がすべてを動かしている日本の将来は間違いなく危うい(了)
 
 
米「謝罪が重要な区切り」 戦後70年の首相談話に見解
朝日新聞 2015年1月6日
 米国務省のサキ報道官は5日の定例会見で、安倍晋三首相が8月の終戦記念日に合わせて発表するとしている戦後70年の首相談話について、「これまでに村山富市元首相と河野洋平元官房長官が(談話で)示した謝罪が、近隣諸国との関係を改善するための重要な区切りだったというのが我々の見解だ」と語った。
 
 米政府としては、過去の植民地支配と侵略を認めてアジアの人々に苦痛を与えたとして反省とおわびを表明した村山談話と、慰安婦問題に関して反省と謝罪を盛り込んだ河野談話の趣旨を、戦後70年の首相談話でも引き継ぐことが好ましいと指摘した形だ。
 
 サキ氏は「(日本には)過去に公表された談話がある。それ以上のコメントはない」と述べ、戦後70年の首相談話が村山談話や河野談話で示された歴史観を塗り替えることがないよう暗に求めた。その上で「日本が引き続き周辺国と平和的な対話を通じ、歴史をめぐる懸案を解決することを望む」とも語り、中国や韓国との関係改善を促した。(ワシントン=奥寺淳) 
 
(社説)歴代談話の「継承」注視 米、謝罪は重要な一章 中韓、信頼重ねて
東京新聞 2015年1月7日
 安倍晋三首相が年初から、戦後七十年の節目となる今年発表する首相談話に関する発言を繰り返している。首相はかつて村山談話の継承を否定したことがあり、国内外からは歴史認識に関する歴代内閣の見解を踏襲するよう求める発言が相次いでいる。 (後藤孝好)
 首相は六日の政府与党連絡会議で「アジア太平洋や世界のためにどのような貢献を果たしていくのか。世界に発信できるものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込む」と強調した。首相は五日の年頭記者会見でも、持論の「積極的平和主義」を談話に盛り込む考えを示している。
 首相談話は、時の政権が重要政策に関する考え方を国内外に発信する場合などに閣議決定する、公式な政府の見解。歴史認識では戦後五十年の一九九五年、過去の植民地支配と侵略に痛切な反省と心からのおわびを表明する村山談話が発表され、戦後六十年の小泉談話でも引き継がれた。
 安倍首相は今年八月十五日、戦後七十年談話を発表する予定。春ごろまでに有識者会議を立ち上げ、具体的に検討を始める。
 問題は、村山談話など過去の談話の歴史認識を本当に引き継ぐのかどうか。
 首相は継承すると強調しているが、二〇一三年四月、村山談話について「安倍内閣としてそのまま継承しているというわけではない」と国会答弁。後に修正したが「全体として引き継ぐ」という微妙な言い回しだ。
 
 終戦記念日の全国戦没者追悼式でも、近年の歴代内閣が触れていたアジア諸国に損害と苦痛を与えたことへの「深い反省」を一三、一四年と二年連続で表明しなかった。首相側近の萩生田光一・自民党総裁特別補佐は昨年十月、従軍慰安婦問題への旧日本軍の関与と強制性を認めた河野談話に関し「(七十年)談話を出すことによって、結果として骨抜きになるのではないか」と発言した。
 七十年談話でこれまでの歴史認識を変えれば、中韓が強く反発するのは確実。今年に入って首相の発言が相次ぐと各国から談話を注視する発言が続いている。
 
 米国務省のサキ報道官は五日の会見で「村山談話、河野談話が示した謝罪は、日本が近隣諸国との関係改善の努力をする中で重要な一章を刻んだ」と、談話の完全な継承を促した。
 中国外務省の洪磊(こうらい)副報道局長は六日の会見で「日本の指導者が侵略の歴史について、どのようなシグナルを発するか注目している」と指摘。韓国外務省の報道官は「歴代内閣の談話を継承することで、国際社会の信頼を重ねていくことを希望する」とまで語った。
 公明党の山口那津男代表も六日、過去の談話の継承に関し「(首相が)どういう対応をするかの基礎として大事だ」と強調した。