2015年1月6日火曜日

竹中平蔵氏が「正社員をなくしましょう」と発言

 竹中平蔵氏が元日の「朝まで生テレビ」で「正社員をなくしましょう」と発言したことが、いま話題になっています。
 もう少し詳細に言うと、まず彼は「日本の正規労働ってのが世界の中で見て異常に保護されているからなんです」と述べさらに同一労働同一賃金について「(実現を目指すなら)正社員をなくしましょうってやっぱ言わなきゃいけない」「全員を正社員にしようとしたから大変なことになったんですよ」と言い立てました。
 
 正社員と非正規労働者の賃金には数倍の違いがあります。そうすると全員が貧しくなって「清貧の生活」を送るべきであるという主張なのでしょうか。
 しかし彼自身は表向きは慶応大学教授を看板にしていますが、人材派遣会社パソナグループの会長を務めていて、その収入は1億円というレベルです。とても清貧の人などではありません。
 
 それどころか以前には、正月の前になると住民票を米国に移し、それによって1月1日現在の在住地に掛けられる住民税等の納入を免れていました。そのことは小泉内閣時代に大臣を務めたときに暴露されましたが、そういうせこい考え方をする人間です。
 佐々木弁護士が言うとおり、彼の真意は、正社員が派遣社員に置き換わった方が派遣する労働者が増え、派遣会社はより多くの中間マージンを得ることができ、いっそう儲かるというところにあるのでしょう。 
 
 そもそもそういう立場の人が、国の「産業競争力会議」や「国家戦略特別区域諮問会議」のメンバーに名を連ねていいのかという問題があります。そのことをあるテレビの番組で経済評論家の三橋貴明氏が指摘すると、竹中平蔵氏は激高して「無礼だ!」と叫んだということです。驚くべき反応です。
 兎に角竹中氏は、清貧とは全く無縁のしかも一筋縄ではいかない人間であることは間違いありません。
 
 彼は新自由主義経済を標榜し、大臣を務めていた当時から現在に至るまで、「規制緩和をやりさえすれば経済・社会は良くなる」の一点張りでした。しかし彼が行ったのは主に経営者に都合の良い規制緩和であって、国民にとっては何一つ良いことなどありませんでした。またそもそも新自由主義経済理論の中で、規制緩和が経済活動の活発化を招くという理論的根拠などは何もないということです。
 
 小泉内閣時代の郵政民営化選挙のときにも、あたかも郵政を民営化すれば「バラ色の社会」が到来するかのようなスローガンを立てて勝利しました。そして実際に郵政は民営化されましたが、その結果出現したのはご承知のとおり逆の「灰色の世界」でした。
 
 4日のYAHOOニュースに載った佐々木亮弁護士の記事を紹介します。 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
竹中平蔵パソナグループ会長の「正社員をなくしましょう」発言と派遣法改正案の関係
佐々木亮 YAHOOニュース 2015年1月4日   
弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表) 
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 
さてさて、新年早々、経済学者を名乗っておられる竹中平蔵氏(株式会社パソナグループ取締役会長)がいろいろ言ってくれたようなので、少しそれについて言及してみたいと思います。 
竹中平蔵パソナグループ会長曰く「正社員をなくしましょう」
報道によると、竹中パソナグループ会長は1月1日放送の「朝まで生テレビ 激論!戦後70年日本はどんな国を目指すのか!」で、「改正派遣法の是非」の議論において、同一労働同一賃金に触れ、 
「(実現を目指すなら)正社員をなくしましょうって、やっぱね言わなきゃいけない」
と述べたとのことです。 
 
まず、皆さん、よく認識しないといけないのは、竹中平蔵氏はパソナグループの取締役会長を務める人物だということです。 
株式会社パソナグループは人材派遣を事業とする株式会社パソナを中核とするグループ企業の持株会社です。 
派遣会社は、正社員が派遣社員に置き換わった方が派遣する労働者が増え、より多くの中間マージンを得ることができ、いっそう儲かるという構造があります。 
したがって、竹中氏の頭の中には、派遣会社であるパソナグループがもっと儲かるにはもっと派遣社員が増えた方がいい、という基本認識があります。 
この認識は、パソナグループの取締役であるかぎり、パソナグループの利益を第一に考えなければなりませんから、パソナグループ取締役会長という立場の竹中平蔵氏であれば、当然の基本認識と言えましょう。 
簡単に言えば、商店の店主が、うちの商品をもっと買ってもらうには・・と考えているのと同じなわけです。
 
政商との指摘も・・
ただ、竹中氏は学者であるとも名乗っていますので、先のような認識をそのまま露骨に出さず、学者として、派遣社員が増えた方が社会のためであるというスタンスで発言を繰り返しているところが特徴です。 
ジャパネットたかたの社長さんが、うちで扱っている商品を買ってください!!と言っているなら、まぁ、宣伝・広告の類なので、受け取る方も、そういうものだと思いますよね。 
でも、経済学者然として、正社員をなくそう!と言われると、中には、そうか!と思ってしまう人もいますし、何よりも学者という肩書きで、政府が設置している「産業競争力会議」や「国家戦略特別区域諮問会議」に議員として名を連ねているから、やっかいなことこの上ありません。 
言うまでもなく人材派遣業は規制産業です。 
前にも書きましたが、元来、派遣という雇用形態は、賃金の中抜き(中間搾取)や雇い主の責任が曖昧となることなどから厳しく規制されていた働き方でした。それが1985年に派遣法が成立し、大幅な規制緩和をし続け、今に至っているわけです。 
この派遣法を改正してさらに規制緩和しようという議論に、派遣会社の取締役会長が加わっているのですから、利益相反は誰の目からも明らかです。 
政府も利益相反なのだから選ばなければいいのにと思いますが、何故か彼は選ばれ続けます。 
そして、彼自身も辞退をしません。 
この点で、彼を政商と指摘する声もあります。 
 
竹中会長の弁解は?
この派遣会社の会長という身分での政府の中枢の会議へ参加していることへの批判に対し、竹中氏は次のように弁解しています。 
──雇用・人材分科会担当の竹中さんが人材サービス企業の会長であることに批判もあります。
 
 経済政策の専門家として入っているので問題ない。派遣など利益相反になることには発言しない。ただそうなると雇用のテーマに会社の経営者が発言できないことになる。それはおかしい。言論封圧ではないか。
出典:東洋経済オンライン
 
言論封圧というものをあまりご存じないようなのですが、まぁ、その点は措くとして、竹中氏自身も、多少は利益相反という認識はあるようで、「派遣など利益相反になることには発言しない。」と明確に述べていますね。 
さて、実際はどうでしょうか? 
ここで、2013年9月18日の産業競争力会議の雇用・人材分科会の議事録を見てみましょう。 
2点目は、労働者派遣制度の見直しである。8月20日に有識者研究会の報告が出ているが、その中でいくつか、規制強化なのではないかと思われるところがある。例えば、今まで派遣期間の制限を、業務単位で行っていたものを労働者単位とするというのは、おそらく、世界にもそういった例がないぐらいの規制だと思う。多様な働き方を認めようというときに、間違っても規制を強化するような方向には行っていただきたくないので、そこはぜひご注意をいただきたい。 
  
 
思いっきり発言しちゃってます!!(>_<) 
 
またまた出てくる?派遣法改悪法案
この竹中氏が議論に参加してできあがった派遣法の改正案が、通常国会で再々提出されると言います(過去2回は批判にさらされ廃案になっていますが、懲りずにまた出すということです)。 
この法案は「正社員ゼロ」法と呼ばれていますが、この法案の前提となる会議に参加していた竹中氏が「正社員をなくしましょう」と言っているのですから、この呼び名は言い得て妙ということになりますね。 
しかし、派遣という働き方は雇用形態の中でも、最も不安定な形態です。これを激増させるような法案がいい社会につながるとはとても思えません。この点についてはまたの機会に書きたいと思います。また、竹中氏のその他の発言や「正社員をなくそう」の是非についても、追々言及したいと思います。 
是非、皆様も、今後の派遣法改正をめぐる議論にご注目ください。m(_ _)m