2015年1月24日土曜日

I S人質問題 政府の「本気度」が問われる

 琉球新報が24日、「イスラム国人質 政府の「本気度」が問われる」とする社説を出し、今回の政府の対応を見ていると、本気で救出しようとしているのか疑問であるとしています。
 
 湯川氏の拘束については8月17日に「外務省」から実父に連絡があったということですし、後藤氏の拘束については10月のはじめに家族にメールが来たので政府に届けたということで、政府はいずれも拘束の直後にその事実を把握していました。
 その後の数カ月間、日本政府がどのような対応をしてきたのか分かりませんが、最後の段階では20億円の身代金要求であったという説が流されています。
 
 「テロに屈しない=身代金は払わない」は確かに西側諸国の合言葉ですが、実際にはこれまでに英国を始め仏・独その他の国々がみな身代金を渡して、相当数の人質を救出してきたことは公然の秘密とされています。安倍首相の発言と行動は、世界の実情とは大いに異なっています。
 
 いずれにせよ人質が拘束されたままの状況下で、中東のうちイスラエルに比較的近いとされている国々をまわり、イスラエルの首相とも会談して、「ISILと戦う周辺各国に総額2億ドル支援する」と演説したのですから、ISが憤るのは当然の成り行きでした。
 
 これはISの行為に理があるかどうかなどという以前の問題で、現実に身代金は一挙に236億円に跳ね上がり、応じなければ人質を殺すと脅迫される事態に発展しました(従来は数億円レベルで解決されてきたといわれています)。
 
 脅迫を受けてから盛んに「周辺国の民生の安定のための2億ドルだ」と弁明していますが、既に首相のスピーチが正確に公表されている以上それでは言い訳になりません。
 これまでISも含めて周囲からは、日本はアメリカに追従はしているもののその行動はアメリカとイコールではないと見られてきました。しかしこれからは、アメリカに大きく一歩近づいたと見られないという保障はありません。
 
 琉球新報は現実的な対策として、「スンニ派難民(=IS)にも人道的支援を続けた国際赤十字への支援強化を打ち出すのも一案ではないか」と提案しています。
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社説 イスラム国人質 政府の「本気度」が問われる
琉球新報 2015年1月24日 
 今は何よりも無事な解放を祈りたい。イスラム国の人質となった邦人2人は、殺害予告の期限とされた23日午後2時50分を過ぎても安否不明のままである。政府は引き続き救出に全力を挙げてほしい。
 今回の政府の対応を見ていると、本気で救出しようとしているのか、疑問なしとしない
 人質の湯川遥菜さんが拘束されたのは昨年8月だ。後藤健二さんの家族の下に脅迫が届いたのは10月で、その時点で政府も把握したようである。
 
 安倍晋三首相は1月17日、エジプトでこう演説した。「(周辺国に)支援するのは、ISIL(アイシル=イスラム国の旧称)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためだ。(中略)ISILと戦う周辺各国に総額2億ドル支援する
 イスラム国が欧米人の人質の身代金として受け取るのは3億円前後という。だが今回、日本に対し要求したのは2億ドル(約235億円)だ。あえて、日本が各国への支援として表明したのと同じ金額だと言及している。首相の演説がイスラム国を刺激したのは間違いない。拘束を知りながらの演説だった以上、今回のような事態は予測できたのではないか。
 政府も昨年10月以降、水面下で交渉していたのかもしれない。それにしても首相の演説内容は不用意だったとの印象を否めない。
 
 人質殺害を予告し、身代金を求めるのは卑劣極まりない行為だ。このような卑劣な行為に「報酬」を与えてはいけない。
 だがそれと、人質解放のための交渉をしないこととは同じではない。この種の交渉は往々にして偽者の自称代理人が横行するから慎重を要するが、部族の指導者などから適切なパイプ役を至急確保し、少なくともまずは交渉期限延長を取り付けるべきだ。
 
 イラク戦争以降、中東でスンニ派は欧米から不公正な扱いを受けてきたと感ずる人が多いという。日本の支援は「イスラム国と戦う国」が対象と表明したから、やはり不公平と受け止められた可能性がある。それならスンニ派難民にも人道的支援を続けた国際赤十字への支援強化を打ち出すのも一案ではないか
 その上で、日本は欧米各国と異なり、中東で銃弾の1発も撃ったことがなく、人道的支援しかしていないことを粘り強く訴えたい。人命は何より優先だ。そのための「本気度」が政府に問われている