イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載した仏週刊紙社が襲撃された事件について、アジア歴訪中のフランシスコ・ローマ法王はテロを厳しく非難する一方、表現の自由は基本的権利ではあるものの、信仰の自由と対立する場合には制限があるとし、「他者の信仰を侮辱したり、もてあそんだりしてはならない」と述べました。
この問題でNHKの大越健介氏などはひたすら表現の自由を強調していますが、他者の信仰対象を侮辱する行為は人の心のなかに土足で踏み込むものであって、「表現の自由」で済まされるものではありません。
法王が母親を侮辱された場合にたとえたのは巧みな比喩でした。
中谷防衛相がこれを好機とばかりに、「フランスでテロ事件が起きたが、国際的にテロを防止する際に、日本は関係ないというのは許されない」と述べて、自衛隊の迅速派遣が可能となるような恒久的立法措置を講じたいとしています。フランスがイスラム国に空爆を行うのに加担しようとでもいうのでしょうか。大いに筋を外していて話になりません。
毎日新聞とNHK NEWS WEBの記事を紹介します。
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ローマ法王:「表現の自由にも限度」他者の信仰侮辱を戒め
毎日新聞 2015年01月16日
イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載した仏週刊紙「シャルリーエブド」が襲撃された事件について、アジア歴訪中のフランシスコ・ローマ法王は15日、テロを厳しく非難する一方、「他者の信仰を侮辱したり、もてあそんだりしてはならない」と述べ、「表現の自由」にも一定の限度があるとの考えを述べた。AP通信などが伝えた。
スリランカからフィリピンへ向かう機中で、同行記者団の取材に応じた法王は、事件について「神の名をかたって行われる悲惨な暴力は断じて正当化できない」と非難。表現の自由は基本的権利であるとした上で、信仰の自由と対立する場合には制限があると主張した。
法王は隣の側近にパンチをする仕草を示しながら、「私の良き友人である彼でも、もし私の母の悪口を言えば、パンチが飛んでくるのは明らかでしょう」とユーモアを交えながら説明。「宗教の悪口を言って喜んでいる人は、(私の母の悪口を言う人と)同じことをしている。それには限度がある」と話し、一方的に信仰心が侵害されることがないよう自制を求めた。
保守的でメディアでの発言に慎重だった前法王のベネディクト16世と異なり、フランシスコ法王は海外訪問時の機中で取材に応じてきた。就任後初の外遊となった2013年7月のブラジル訪問では、帰国時の機中で「私は神を探し求めている同性愛者を裁くことはできない」と言及。同性愛者を排除してきたカトリック教会トップとしては異例の発言で世界を驚かせた。【中西啓介】
中谷大臣 自衛隊の迅速派遣へ恒久的法律を
NHK NEWS WEB 2015年1月16日
中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣は神奈川県横須賀市で記者団に対し、「国際的にテロを防止する際に、日本は関係ないというのは許されない」と述べたうえで、テロ対策などで自衛隊が海外で活動をする際に、迅速に派遣できるようにするための恒久的な法律の制定に意欲を示しました。
政府は安全保障法制の整備の一環として、自衛隊が多国籍軍の後方支援などの活動をする際に、迅速に派遣できるようにするための恒久的な法律の制定を目指していて、通常国会に関連法案を提出する方向で検討しています。
これに関連して中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣は16日、神奈川県横須賀市で記者団に対し、「フランスでテロ事件が起きたが、国際的にテロを防止する際に、日本は関係ないというのは許されない」と述べました。
そのうえで中谷大臣は「自衛隊が国際的な活動する際には、しっかりと任務を果たせるよう、法律の面でも切れ目のない整備をしていかなければならない」と述べ、テロ対策などで自衛隊が海外で活動をする際に、迅速に派遣できるようにするための恒久的な法律の制定に意欲を示しました。
これに先立って中谷大臣は、海上自衛隊横須賀基地で護衛艦を視察して隊員に訓示し、活発化している中国の海洋進出について、「既成事実の積み重ねによって常態化しており、今後もその流れは続いていくだろう。しかし、国際社会ではこのような力による現状変更の行為は許されず、私たちは守るべきものは断固として守らなければならない」と述べました。