2016年8月10日水曜日

10- 長崎原爆の日 核廃絶へ英知結集を

長崎原爆の日 核廃絶へ英知結集を
東京新聞 2016年8月9日
 長崎市の田上(たうえ)富久市長は九日、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典で、核廃絶に向けて国際社会に対し「人類の未来を壊さぬため、持てる限りの英知結集を」と求めた。オバマ米大統領の広島訪問を「自分の心で感じる大切さを世界に示した」と評価。広島の平和宣言と同様、各国の指導者に被爆地を訪れるよう呼び掛けた。
 
 式典では、原爆投下時刻の午前十一時二分、約五千六百人の参列者らが黙とうした。田上氏は、平和宣言の中で、国連での核軍縮論議に、核兵器保有国が参加していない現状を指摘。「廃絶への道筋を示せない。議論に参加を」と訴えた。核兵器の歴史を「不信感の歴史」と表現し、信頼を築く方策として「市民社会の行動が礎となる」とした。
 日本政府に対しては「核兵器廃絶を訴えながら、核抑止力に依存している」と矛盾を批判。非核三原則の法制化や「北東アジア非核兵器地帯」の創設検討を求めた。各国の英知結集へリーダーシップを発揮することも要求。憲法の平和理念を強調し「平和国家の道を歩み続けなければならない」と述べた。
 東京電力福島第一原発事故の影響に苦しむ福島にも、二〇一一年から続けて言及。応援していく姿勢を示した。
 
 「平和への誓い」を読み上げた被爆者代表の井原東洋一(とよかず)さん(80)は「核兵器の最後の一発が廃棄されるまで、広島、福島、(戦争で多くの犠牲が出た)沖縄と連帯する」と決意を述べた。
 安倍晋三首相は「非核三原則を堅持する。核兵器のない世界へ努力を重ねる」とあいさつした。
 長崎市によると、式典には計五十三カ国と欧州連合(EU)の代表が出席した。原爆投下国の米国は、ケネディ駐日大使が公務で欠席し、臨時代理が参列。中国など他の核保有国の代表も出席した。
 
 七月末までの一年間に新たに死亡が確認された長崎の被爆者は、三千四百八十七人。原爆死没者名簿に記された総数は十七万二千二百三十人市内に住む被爆者は今年三月末時点で三万二千五百四十七人となり、平均年齢は八〇・三二歳となっている。