安倍首相は3日の内閣改造で、改憲タカ派で知られる稲田朋美氏を防衛相に抜てきし、明文改憲への強い意志を示しました。
稲田氏は、今年2月の衆院予算委員会の質疑で「憲法改正については、やりやすいところからやる」のではなく「9条2項などのように、本質的な議論をする」のが良いと安倍首相に9条改憲を迫りました。そのとき「現実に合わなくなっている9条2項をこのままにしておくことこそ立憲主義を空洞化する」と、珍妙な主張もしました。
安倍首相は、自分の言いたいことを明言してくれるというような信頼感を持っているのかも知れませんが、
よりによって侵略戦争正当化の急先鋒である人間を防衛相にさせるとなると、中国、韓国はじめアジア諸国には「日本軍国主義復活」をイメージさせることになり、緊張を激化させることになります。
稲田氏がこれまでのように防衛相の肩書で靖国参拝を強行すれば、中韓に与える憤激の度合いは計り知れません。それも安倍首相にとっては歓迎ということなのでしょうか。
稲田氏の防衛相就任は、国内的には“憲法攻撃” 内閣の性格を鮮明にするものですが、中韓をはじめ極東アジア諸国に対しては、大いに神経を逆なでさせるものです。
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安倍再改造内閣 稲田防衛相就任が示す“憲法攻撃”内閣
しんぶん赤旗 2016年8月4日
衆参両院で改憲勢力が3分の2の議席を占めるもと、安倍晋三首相は3日の内閣改造で、自民党内きっての改憲タカ派で知られる、稲田朋美前政調会長を防衛相に抜てきし、明文改憲への強い意志を示しました。参院選中は街頭演説で一言も改憲に触れなかった安倍首相は、選挙が終わるや「いかにわが党の案(自民党改憲草案)をベースにしながら3分の2を構築していくか。これがまさに政治の技術」と態度を「豹変(ひょうへん)」させたのです。「憲法攻撃内閣」というべき様相です。
憲法尊重擁護義務をかなぐり捨てるように、安倍首相は安保法制=戦争法で憲法破壊を強引に推し進め、さらに「(自民党総裁)任期中の改憲」への意欲を明言するなど、露骨な改憲姿勢を発信してきました。その旗振りをしてきたのが稲田氏です。
今年2月の衆院予算委員会の質疑で「憲法改正については、やりやすいところからやるべきだという議論もありますけれども、私は9条2項などのように、本質的な議論をする」と安倍首相に9条改憲を迫りました。安倍首相は、「自民党は憲法改正草案を発表し、9条2項の改正と自衛権の明記、自衛のための組織(国防軍)の設置など、将来のあるべき姿をお示ししている」と答弁し、“9条破壊”が改憲の本丸であることを示しました。
防衛相に就任した稲田氏は、戦争法の具体的発動を担うことになります。戦争法の発動に対しては、その都度国会論議においても、広範な国民世論においても、戦争法の違憲性が大論争になります。
稲田氏は前出の衆院での質問でも、自衛隊が憲法違反だという主張が憲法学者の7割を占めるもとで、「現実に合わなくなっている9条2項をこのままにしておくことこそ、立憲主義を空洞化する」と主張。“戦争法違憲論”を、自衛隊違憲論とすり替え、改憲論議を推し進める手法を示しています。
名うての靖国派
他方で稲田氏は、日本の侵略戦争を正当化する、名うての「靖国」派の一人です。同氏が政界入りする以前、小泉純一郎首相による「靖国」連続参拝のもと、2004年8月15日の靖国神社境内で行われた日本会議の集会で、「総理の参拝」を求めながら「神州不滅」などと“気迫”の演説をしました。その姿勢が買われ、05年8月の「郵政選挙」で安倍晋三幹事長代理(当時)に「刺客」としてスカウトされ、衆院福井1区から出馬しました。
「東京裁判史観からの脱却」を公言し、侵略戦争正当化の急先鋒(せんぽう)である稲田氏が防衛相に就任することは、中国、韓国はじめアジア諸国から「日本軍国主義復活」の危機感を呼び起こし、緊張を激化させる重大な懸念があります。
安倍首相は著書『新しい国へ』のなかで「尖閣問題について、よく『外交交渉で解決していく』という人がいますが、この問題に外交交渉の余地などありません」と断言し、求められるのは「誤解を恐れずにいえば物理的な力です」と述べています。
首相の危険姿勢
ここには、「緊張」を利用して軍事力強化と改憲突破を図る、安倍首相の危険な姿勢がにじんでいます。実際、13年12月には自ら靖国参拝を強行し、中国、韓国との緊張を激化させ強まる反発の中、翌14年7月1日には集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を強行しました。
8月15日の靖国参拝を欠かさず実行してきた稲田氏が防衛相の肩書で参拝を強行すれば、中韓との新たな緊張激化をもたらし、それが改憲のてことして利用される危険もあります。歴史修正と憲法破壊の結合という、「靖国政治」の最悪の表れに、重大な警戒が必要です。(中祖寅一)
改憲・靖国・核保有…稲田朋美防衛相の過去の暴言
改憲派の最右翼、稲田朋美氏が防衛相に就任したことに反響が広がっています。過去の暴言の数々をまとめてみました。
「(現)憲法は今すぐ破棄して、自主憲法を制定しなければならない」(2012年5月10日、創成「日本」東京研修会あいさつ)
「祖国のために命を捧(ささ)げても、尊敬も感謝もされない国にモラルもないし、安全保障もあるわけがない。そんな国をこれからもだれが命を懸けて守るんですか」(『致知』2012年7月号)
「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」(『WiLL』2006年9月号)
「長期的には日本独自の核保有を、単なる議論や精神論ではなく国家戦略として検討すべきではないでしょうか」(『正論』2011年3月号)
「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらうという制度はどうか。国防への意識を高めてもらうきっかけになると思う」(同)
「私たち一人ひとり、国民の一人ひとり、皆さん方一人ひとりが自分の国は自分で守る。そして、自分の国を守るためには血を流す覚悟をしなければなりません」(2010年12月1日、民主党内閣倒閣宣言!国民大集会でのスピーチ)
「例えば自衛隊に一時期、体験入学するとか、農業とか、そういう体験をすることはすごく重要。まあ、男子も女子もですね」(『女性自身』2015年11月10日号)