2016年8月6日土曜日

破壊措置命令の常態化など無意味 

 北朝鮮は3日朝、ノドンとみられる弾道ミサイルを発射し秋田沖の排他的経済水域の中に着弾させました。北朝鮮の意図は不明ですが、稲田防衛相は早速北朝鮮の中距離弾道ミサイルを迎撃する態勢をとるため、日米が開発を続けている新型の迎撃ミサイル「SM-3ブロックIIA」などの導入に向け、予算措置を取るなどの考えを明らかにしました。
 しかしそんな風な、いわば条件反射的な対応でことを進めていいのでしょうか。
 
 日本は、ノドンが秋田沖に落ちるまで何も認識せずにいました。それでは何の対応も取りようがありません。日本は高い金を払って米国からミサイル迎撃システムを購入していますが、それは全く何の役にも立たないものでした。そのことが今度のことで明らかにされました。
 政府は尤もらしく、今後は破壊措置命令を常態化させる方針に変えるとしましたが、そんなことでどうなるものでもありません。そもそも「ミサイル迎撃システム」は、いわば頭上を飛ぶ機関銃の弾丸をピストルで撃ち落とすというものなので、当たる筈がないと言われています。もしも当たるというのであれば是非実地で証明して見せてほしいものです。
 
 北朝鮮は1990年代の初期にノドンの技術を完成させ、中期には200基ほどを実戦配備したと言われています(その後は300基以上に増設)。要するに北朝鮮が多数のノドンを所有していることは何も今に始まったことではなく、ここ20年来のことであってこの間何ごともなく経過して来たというのが現実です。
 
 北朝鮮が人工衛星の打ち上げを予告したときに、政府は丁度お祭りの山車(だし)を引き出すようにして沖縄方面に「PAC3」を移動させましたが、どう考えてもあんな暢気なことで国土が防衛できる筈はありません。仮に、もう少しミサイル迎撃システムが改善されていくらかマシになったとしても、それを必要にして十分な数量備えるのは費用的にとても無理でしょう。もしもそんな方向に進めば米国は大儲けをして、日本は財政的に破綻することになります。
 
 天木直人氏は、安倍政権が取るべき防衛策は破壊措置命令の常態化ではなく、北朝鮮との関係を改善することであると端的に述べました。それ以外に有効な方法はありません。
 
 FNNニュースと天木直人氏の二つのブログを紹介します。
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稲田防衛相、新型ミサイル導入の考え 来年度予算概算要求計上へ
FNN 2016年8月5日
新型ミサイルを導入する考えを明らかにした。
稲田防衛相は、「弾道ミサイル防衛システムについて、わが国全域を防護しうる能力を強化するために、即応態勢、または同時対処能力、および継続的に対処できる能力を強化する必要があると思っている」と述べた。
稲田防衛相は4日、北朝鮮のムスダンなど、中距離弾道ミサイルを迎撃する態勢をとるため、日米が開発を続けている新型の迎撃ミサイル「SM-3ブロックIIA」などの導入に向け、2017年度予算の概算要求に必要な経費を計上する考えを明らかにした。
北朝鮮は3日朝、ノドンとみられる弾道ミサイルを発射し、日本の排他的経済水域の中に落下させるなど、挑発的な軍事行動を活発化させている。 
 
 
日本の防衛力のなさを白日の下にさらしてくれた北朝鮮
天木直人 2016年8月4日
 北朝鮮のミサイルがついに日本の排他的経済水域に落下した。これを知った安倍首相は、「許しがたい暴挙」だと非難した。
 暴挙どころではない。攻撃されたも同然だ。中谷防衛大臣も自ら認めている。「まったく予告がなかった。発射実験ではない」と。攻撃とはそういうものだ。物凄く深刻な事態が起きたのだ。今度のミサイル発射は牽制だったらしいが、本気で攻撃してきたら、もっと深刻だ。それなのに、なぜ日本政府は迎撃ミサイルシステムによる破壊活動措置を命じなかったのか。なぜか、実験ではなかったからだ。落下物の破壊ではなかったからだ。攻撃だから、いつ、どこから攻めてくるかわからなかったからだ。しかも今度の発射は移動発射台が使われたという。ますます事前探知が困難だ。まだ排他的経済水域でよかった。
 
 なぜなら「もし日本の領土まで飛んできても、迎撃できなかった」(政府関係者)(8月4日毎日新聞)からだ。これを要するに、高い金を払って米国から買わされた日本の迎撃ミサイルシステムは、北朝鮮のミサイル攻撃にはまったく対応できないということだ。
 発射実験の時だけ、万が一その落下物が落ちてきたら破壊する、そのためにゴロゴロと、その都度動かして対応する。それが我が国の迎撃防衛システムである。それだけのものなのだ。これが安倍首相が強行成立させた安保法にる我が国の防衛力強化の実態である。
 
 そして、その安保法を戦争法だと言って反対した野党からは、今度の北朝鮮の「攻撃」に対する発言は一切ない。安倍政権では日本を守る事は出来ないが、野党共闘政権では平和を叫ぶだけで安全保障政策すら存在しない。これが日本の現実である(了)
 
 
破壊措置命令を常態化させようとする安倍政権の馬鹿さ加減
天木直人 2016年8月5日 
 けさ早朝のNHKテレビが流した。政府は破壊措置命令を常態化させる方針で最終調整を始めたと。 これを聞いて思わず笑ってしまった。
 私はきのう書いたばかりだ。今度の北朝鮮のミサイル発射は、日本のミサイル防衛の無策を白日の下にさらしたと。すなわち今度の北朝鮮のミサイル発射は実験ではない。もはや攻撃そのものだ。
 
 発射実験の時には予告通報があるからその都度破壊命令措置を出せる。実験が失敗した時の落下物の破壊に備える事が出来る。しかし、攻撃だとそうはいかない。いきなり発射されたら破壊命令措置を出す余裕はない。
 しかも今度の発射は移動式発射台から撃たれたものだ。ますます事前に知る事は出来ない。
 これを要するに、日本のミサイル迎撃システムは、高い金を払って米国から買わされた役立たずの防衛システムだ。それを今度の北朝鮮のミサイル発射は教えてくれたのだ。そう私は書いた。
 
 まさかこの私の批判を知って、慌てて破壊措置命令を常態化させることにしたのではあるまいな。
 もちろんそんな事はあり得ないが、まるでそう思わせるようなタイミングでの破壊措置命令の常態化方針だ。しかし、たとえ破壊措置命令を常態化させても、矛盾は拡大するばかりだ。
 発射直後にミサイルを撃ち落とす事は、それが現実に可能かどうかは別として、イージス艦を日本海に常時浮かべれば、迎撃体制の格好は取れる。しかし発射直後に一発でもミサイルを撃ち損じたら、それはあっという間に日本に向かって飛んでくる。それを撃ち落とすのは、破壊措置命令を常態化しても無理なのだ。
 
 地対空迎撃ミサイルの射程はわずか数十キロだ。どこにミサイルが着弾するかわからない。それに備えるなら、ゴロゴロと自衛隊基地から移動させるようでは手遅れだ。皇居や永田町や霞が関や都心や原発施設など、もっとも北朝鮮が攻撃して来る可能性の高い場所に常時設置しておかなくてはならない。そんな事が、この平和な日本で出来ると思っているのか。
 やはり北朝鮮のミサイル発射は、我が国の防衛体制の不備を白日の下にさらした。安倍政権が取るべき防衛策は、破壊措置命令の常態化ではなく、北朝鮮との関係を改善する事である.
 こんな簡単な事も分からない安倍首相は、やはり相当な劣等生である(了)