仏教はなぜ戦争協力をしたのか 京都で研究者ら講演
京都新聞 2016年8月16日
近代日本の仏教と戦争の関わりについて考えるトークイベント「仏教はなぜ戦争協力をしたのか?」がこのほど、丸善京都本店(京都市中京区河原町通三条下ル)で開かれた。明治維新から太平洋戦争終結まで仏教界が日本の全体主義の一翼を担った歴史と戦後の歩みについて、大谷栄一・佛教大教授や近藤俊太郎・本願寺史料研究所研究員らが講演した。
大谷教授は、仏教界が明治維新の廃仏毀釈(きしゃく)以降、危機を乗り越えるために政府との結びつきを強め、公的な役割を果たそうとしてきた中で、国家主義へと傾き、皇道化や戦時教学の道をたどったと解説した。
特に、1937年の日中戦争以降、仏教連合会が軍隊の慰問などを全国の支部や連絡団体に指示。各教団が従軍布教師の派遣や時局講演会、戦病死者追悼法要を行うなど、仏教界が国家総動員体制の中で戦争遂行の施策に動員されたとした上で、「それらは国策への順応であり、むしろ積極的に戦争協力を行い、公的な役割を果たした」と強調した。
近藤研究員は、浄土真宗の教団が軍資献納や軍事公債募集の奨励、金属回収などで一貫した戦争協力の立場をとり、宗教界と軍の相互依存関係において中心的役割を担ったと指摘。「なぜそのような立場に至ったのかを、仏教徒の仏教理解との関係に注意しながら解きほぐす必要がある」とし、戦争協力から平和主義へと転換した終戦直後の教団の歩みにも目を向けるべきだと訴えた。