2016年8月8日月曜日

米大統領の「核の先制不使用」宣言に日本政府が大反対

 5日の『報道ステーション』(テレビ朝日)、今年5月オバマ大統領広島訪問演説した際に、「核の先制不使用」宣言を盛り込む予定であったにもかかわらず、日本側の強硬な反対で実現しなかったことを暗示する報道を行いました。
 番組ではオバマ大統領が広島訪問の直前までずっと演説の構想を練っていたことを報じました。普通であれば訪日前にまとめている筈なのですが、日本の強い反対で変更を余儀なくされたのであればそういう事態になります。
 
 日本は唯一の戦争被爆国でありながら、一貫して国連「核兵器禁止条約」の交渉開始決議に棄権するなど、被爆国に相応しくない態度を貫いてきました。佐野軍縮大使は今年の5月にも国連の委員会で「核兵器を削減・廃絶するのはほとんど非現実的」と主張しました。政府高官「日本の安全保障からして『核の先制不使用』はありえない」と発言し、外務省幹部も「『核の先制不使用』なんて、そもそもまったくナンセンス。日米安保が成り立たなくなる」とコメントしています
 
 広島平和記念式典で、安倍首相はオバマ大統領の訪広を自慢し、「唯一の戦争被爆国として、非核三原則を堅持しつつ、核兵器不拡散条約体制の維持及び強化の重要性を訴えてまいります」と述べましたが、政府が実際に行っているのはそれとは正反対のことです。
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安倍の原爆式典スピーチは口先だけ! 
オバマの広島での「核の先制不使用」宣言を日本政府が反対して潰していた
LITERA 2016年8月6日
  本日、原爆の日を迎えた広島では平和記念式典が開かれた。昨年の演説では、自身の判断で「非核三原則の堅持」の文言を省いた安倍首相だったが、今年はオバマ大統領の訪広を自慢し、「唯一の戦争被爆国として、非核三原則を堅持しつつ、核兵器不拡散条約体制の維持及び強化の重要性を訴えてまいります」と述べた。
 だが、松井一實広島市長が平和宣言で「核兵器禁止の法的枠組みが不可欠」と言及した一方で、安倍首相は今年もその点にふれなかった。
 それも当然だろう。安倍首相は「核兵器のない世界」などと殊勝に語ったが、日本は国連で一貫して「核兵器禁止条約」の交渉開始決議に棄権しているのだから。
 
 現に、今年5月の核軍縮の進展を目指す国連作業部会第2回会合でも、佐野利男軍縮大使は安全保障上の問題を理由に核が必要とし、「核兵器を削減・廃絶するのはほとんど非現実的」と主張。「核兵器禁止条約」の締結に対し、反対しつづけている。表舞台で首相が言っていることと、具体策に動く舞台裏でやっていることが、完全に矛盾しているのだ。
 しかも、日本政府はオバマ大統領が打ち出そうとしている「核の先制不使用」政策に真っ向から反対して、潰しにかかっているらしい。
 この「核の先制不使用」というのは、核攻撃を受けないかぎりは先に核兵器を使用しないとするもので、米ワシントン・ポストによると、オバマ大統領は、任期中にこの方針を宣言する核軍縮策を打ち出そうとしているという。さらに、オバマ大統領は今年5月の広島訪問時の演説にこの「核の先制不使用」宣言を盛り込む予定もあったのだが、日本政府はこれに真っ向反対。広島でも宣言が見送られたのだという。
 
 この問題を報じた昨日放送の『報道ステーション』(テレビ朝日)では、政府高官のこんな証言が紹介された。
日本の安全保障からして『核の先制不使用』はありえないでしょう。『言葉の使い方に注意してほしい』という懸念を伝えた」
 さらに、外務省幹部も「『核の先制不使用』なんて、そもそもまったくナンセンス。宣言することなんてないですよ、絶対に。日米安保が成り立たなくなる」とこれを補強するコメントを発している。
 
 広島でのオバマの宣言が中止になったのが日本政府のせいだったかどうかについてまでは番組では言及されていなかったが、現時点で日本政府が「核の先制不使用」宣言をしないように働きかけているのは明らかな事実だ。前述したワシントン・ポストの報道を受けて、日本政府はアメリカ政府に対して意図を確認する協議を申し入れているという。
 世界的な核軍縮につながる可能性のあるオバマ大統領の「核の先制不使用」宣言を、こともあろうに被爆国である日本政府が潰そうとしている、ということなのだ。
 番組では、太田昌克・共同通信社編集委員が「被爆国の政府が結果的に『核なき世界』を広島であらためて誓ったオバマ大統領の政策を潰す、そういった残念な結末になりかねない」と解説を行っていたが、その通りだろう。
 
 しかも、この態度は倫理的におかしいだけではない。オバマ大統領の宣言の裏には、中国が「核の先制不使用」を見直すことを懸念し、アメリカもそれを採用することによって、中国の動きを封じようという考えがあるという。つまり、これに反対する日本の態度は、逆に中国の脅威を高めかねないものなのだ。一方で、やたら「中国の脅威」を煽りながら、そのための外交努力に反対するというのは、いったい何を考えているのか。
 
 いずれにしても、こうした事実を見れば、安倍首相の「『核兵器のない世界』に向け、努力を積み重ねてまいります」などという言葉がいかに口先だけのものであるかがよくわかるはずだ。わが国の民主主義や平和だけでなく、国際社会の平和と安定という視点にたっても、この危険な総理大臣は一刻も早く引きずりおろさなければならない。(編集部)