2016年8月29日月曜日

テロ対策口実の市民弾圧法(続報)

 自民党政権はこれまで3度にわたって廃案となった共謀罪を、「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を変えて秋の臨時国会に提出しようとしていますが、その実態は最悪の市民弾圧法です。
 条文をみると処罰対象は「4年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪を実行」することとされていて従来と同様に「テロ」とは関係なく広範に罰することができる内容になっています。
 また市民団体や労働組合対象になるのではという批判があったので、今回は「組織的犯罪集団」が対象としていますが、その認定は結局捜査当局が行うのでいくらでも対象を拡大することが可能です
 今回は共謀に加えて、犯罪を実行するために資金や物品を取得する「準備行為」が行われていることが犯罪の構成要件となっていますが、これも条文には「その他」という文言が盛り込まれているので、何が準備行為に当たるかも捜査当局の考え一つということになります。
 
 共謀罪の導入は、政府が2000年に署名した「国際組織犯罪防止条約」の締結に向け必要だと宣伝してきましたが、それも偽りで、ほとんどの国は現行の法制度のままで批准しているということです
 
 政府は既に盗聴法を改悪し盗聴できる対象や手段を拡大しています。最近も大分県警による盗撮が発覚しましたが、共謀罪によって市民監視が一層強まるのは明らかです。
 しんぶん赤旗と日刊ゲンダイの記事を紹介します
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テロ対策口実の市民弾圧法 共謀罪 名前変えても本質変わらず
しんぶん赤旗 2016年8月28日
 自民党政権が過去3度にわたり国会に提出しながら世論の強い批判をあびて廃案となった共謀罪。安倍政権は、名称を変えて秋の臨時国会に提出しようとしています。「テロ対策」のための法案と強調していますが、実態は最悪の市民弾圧法です。(森近茂樹)
 
解釈次第で対象拡大
 今回の罪名は「テロ等組織犯罪準備罪」。「テロ」という言葉を冠しています。しかし、条文をみると処罰対象は、「4年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪を実行」する「組織的犯罪集団」とされており、「テロ」とは関係なく広範に罰することができる内容になっています。
 2005年に国会に出された共謀罪でも対象は、4年以上の刑が課された犯罪とされていましたが、政府側の答弁によると罪種は600を超えます。そのなかには万引きやキセル乗車のような凶悪とはいえないものも含まれます。しかも刑法の量刑は厳しくなる傾向にある現在では、さらに該当範囲が広がっているとみられます。
 これまでの共謀罪では犯罪を実行する「団体」が取り締まり対象とされ、市民団体や労働組合も対象になるのではと強い批判があがりました。そこで今回は「組織的犯罪集団」が対象としています。しかし、その認定は捜査当局が行うので、解釈次第でいくらでも対象を拡大することが可能です。
 今回の政府案では、共謀に加えて、犯罪を実行するために資金や物品を取得する「準備行為」が行われていることが犯罪の構成要件となっています。
 しかし、条文には「その他」という文言が盛り込まれており、これも捜査当局の考え一つで拡大することができます。
 
条約批准に必要なし
 共謀罪の導入は、政府が2000年に署名した国際テロや麻薬対策のための「国際組織犯罪防止条約」の締結に向けた国内法整備の一環として必要だと宣伝されています。
 しかし日本弁護士連合会(日弁連)の調査によると、共謀罪の制定は締結の絶対条件ではありません。その国の法制度のままで批准している国がほとんどです。
 日本には、重大犯罪に限って例外的に陰謀罪が8、共謀罪が15、予備罪が40、準備罪が9も制定されています。
 テロ防止に必要な銃器の規制でも、銃砲刀剣類所持等取締法で銃や刀の所持が厳しく制限されています。
 これらの点からみても条約批准は現行でも十分に可能です。共謀罪成立を条約批准の絶対条件であるかのように主張して、国民をごまかす態度は許されません。
 
いっそう強まる監視
 共謀罪は、人と人の意思疎通そのものが犯罪となるという「内心の自由」を脅かす悪法です。
 検挙し立証するために盗聴(通信傍受)が多用されることは間違いありません。共謀罪に先んじて先の国会で改悪された盗聴法は、盗聴できる対象や手段を拡大しています。
 最近、大分県警による野党統一候補陣営への盗撮が発覚しましたが、共謀罪によって盗撮や会話盗聴(室内盗聴)などあらゆる手段を用いた市民監視が強まる危険性が大です。
 
 安倍政権は、戦争法に続いて憲法9条を改憲して、「戦争のできる国」へとさらに突き進もうとしています。共謀罪は、これに反対する市民や団体を弾圧して物言えぬようにするため、四たび持ちだされたものです。絶対に通すわけにはいきません。

 

暴走止まらぬ安倍政権 “共謀罪”圧倒多数で強行成立の恐怖
日刊ゲンダイ 2016年8月27日
 予想通り、7月の参院選で大勝した安倍政権が暴走を始めている。過去、3回廃案になった「共謀罪」を、秋の臨時国会で強行成立させるつもりなのだ。
 
 「サラリーマンが居酒屋で『上司を殺してやろう』と同僚と意気投合しただけで罰せられる」――と批判された「共謀罪」は、実際に犯罪を犯していなくても相談をしただけで罰することができるシロモノ。2003、04、05年と関連法案が国会に提出されたが、さすがに廃案になっている。
 
  国民の批判をかわすために、臨時国会に提出する法案では適用対象を単なる「団体」から「組織的犯罪集団」に限定するなど、一見ソフト化しているが、「組織的犯罪集団」は定義が曖昧で警察がいくらでも拡大解釈できるようになっている。安倍政権の誕生後、大分県警が隠しカメラで市民を盗撮するなど、ただでさえ警察組織は違法行為に手を染めているだけに「共謀罪」が成立したら、気に入らない組織を片っ端から摘発する危険がある。対象になる犯罪は、法定刑が4年以上の懲役・禁錮の罪としている。その数は600を超え、道交法違反にも適用される
 もし、臨時国会に提出されたら国会が大モメになるのは間違いない。それでも、安倍政権はなにがなんでも成立させるつもりらしい。
 
 「安倍首相は来年、もう一度、衆院を“解散”するつもりではないか、とみられています。解散総選挙となったら、自民党は議席を減らす可能性が高い。だから、圧倒的多数を握っている間に評判の悪い“共謀罪”を成立させるつもりなのでしょう。衆参とも3分の2を確保し、改憲の発議が可能なのだから解散するはずがないという声もありますが、安倍首相は改憲する時は、野党第1党の賛成を得る必要があると腹を固めたフシがある。与党単独での3分の2を失っても仕方ないと思っているのでしょう。もうひとつ、支持層である右翼を喜ばす狙いもあると思う。共謀罪は、右翼が嫌いな“市民”や“左翼”を取り締まる武器になるからです」(政界関係者)
 
  安倍首相にどんな思惑があるにせよ、「共謀罪」は成立してしまえば、政権や警察が市民の監視や思想の取り締まりに都合よく運用するのは目に見ている。絶対に成立を阻止しないとダメだ。