2016年8月18日木曜日

英ガーディアン紙が、「天皇の生前退位のご希望を阻止する者は・・・」と

 英ガーディアン紙が「天皇陛下の生前退位」について取り上げました。
 ブログ:星の金貨プロジェクト2回に渡って「天皇陛下の生前退位の希望をつぶしたいのは、血も涙も無いあの人物《前・後篇》」として 日本語訳を載せましたので紹介します。原題は、Only a cruel despot would stop Japan’s emperor retiring (天皇陛下の生前退位を阻止したいのは残酷な暴君のみ)なので、タイトルはやや意訳されていますが、著者の意図は正確に反映されています。
 
 記事は、平和主義者で民主的な考えの持ち主である天皇を国民い、生前退位のご希望に8割以上が賛意を示していると述べています。その一方で、安倍首相が率いる自民党の真意は日本の戦前の憲法を復活させ、天皇を再び神に近い存在として人民の上に君臨させたいというところにあり、それがゆえに象徴天皇のあり方を変更することは、安倍首相が宿願としてした来た基本的人権に制限を加え、国家神道を再び市民生活の中心に据えるための憲法改定への願望に反する関係にあると述べました
 そして、天皇の人間として当然過ぎるほどの願いを踏みにじることが出来るのは、絶対的な権力を握る血も涙も無い人物だけであると断定しました。現在の日本の首相ならそれをやりかねないとも・・・
 
 ガーディアン紙の記者は、退位問題における安倍首相の立場を日本国民と同様に正確に理解しています。安倍首相は、この課題に対する対応はもはや一つしかないことを悟るべきです。
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天皇陛下の生前退位の希望をつぶしたいのは、血も涙も無いあの人物《前篇》    
星の金貨プロジェクト 2016年8月14日
ジェイク・アデルスタイン  ()ガーディアン 2016年8月11日
もしも神様が引退したいと望んだら、いったい何が起きるでしょうか?
日本の天皇はもはや神でありませんが、かつて、そんなに遠くない昔の大日本帝国において、天皇は現人神として天地のことごとくを支配する存在であると規定されていました。
 
これに対し現在の明仁天皇はとても人間的であり、自らが神でありたいという願望は持っていません。
しかし日本の政権与党、安倍晋三首相が率いる自民党は違います。日本の戦前の憲法を復活させ、天皇を再び神に近い存在として人民の上に君臨させたいものだと考えています
しかしそれは現在82歳を迎えられた天皇ご自身が望んではいないものであり、その後継者もそうあるべきでは無いと願っています。
かつてなかったできごと、天皇ご自身が国民に直接語りかけられたお話の中で、明仁天皇は遠回しな表現を用いて生前退位のご希望を明らかにされ、少なくとも7回以上自分自身を『国家の象徴』であると規定する発言を繰り返されました。
 
日本を戦前の軍国主義国家に戻すことに明確に反対の立場をとる平和主義者である明仁天皇は、1989年に即位されました。
彼の最愛の妻である美智子皇后同様、1947年に第二次世界大戦(太平洋戦争)の連合国側によって課され、国家間の紛争を解決する手段として戦争を放棄する憲法を全面的に信頼する立場をとっています。
2013年に行われた誕生日の記者会見の席上、明仁天皇はその考えを明確に示しました。
「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います。」、
それは現在台頭を続ける日本の右翼的思想を不快に思っているという、明確なメッセージでした。
 
さらに明仁天皇は国家神道の復活という考えも、はっきりと退けています
1945年までの日本の国教と定められた国家神道は、当時の政府により天皇の存在を神格化するとともに、1930年代に日本が行なった他国への侵略を正当化する道具として用いられました。
天皇の言葉は絶対的なものでした。そして大和民族は他を超越する優秀民族だと規定されました。
そして数百万の日本人の兵士や市民たちが、裕仁天皇の名の下に死んでいき、殺されて行ったのです。
しかし裕仁天皇自身はこうした強制的愛国心とは関係が無かったと見られています。
 
日本で最大の発行部数を持つ右派の読売新聞に雇用されていた英国スコットランドのジャーナリストであるマーク・オースティンはソーシャルメディアに次のようなコメントを書きこみました。
「2001年68歳を迎えて行われた記者会見の席上、長い間のタブーを破って明仁天皇は自らの祖先が朝鮮半島から渡来した可能性に言及しました。さらに春の園遊会では地方官僚である東京都教育委員会のメンバーの一人に穏やかに、しかし圧倒的に影響力のある注意を行いました。
この委員は東京都内の学校を巡回し、主要な行事が行われる際にすべての教師が起立して国家を斉唱するよう指導して回ったことを誇らしげに語りました。
これに対し明仁天皇は『もし強制したのであれば、それは良いことではありませんね。』と答えられたのです。
おべっか使いの地方官僚は、深々とお辞儀をしたまま返す言葉がありませんでした。」
「この遭遇は、後に物議をかもすことになりました。」
 
一方で辛い思いをしなければならなかった人々への明仁天皇の思いやりと、それを形にした実際の行動は国民が彼を慕う気持ちを強いものにしました。
2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の後、明仁天皇は学校の体育館などの一時避難場所に避難した被災者のもとを訪ねました。
明仁天皇は被災者と同じ目線で話をしようと、体育館の床に直接座り話をしました。
その後明仁天皇は国民全員に、力を合わせてこの悲劇を克服するよう呼びかけました
天皇が直接国民に対し公式に演説を行ったのは、1945年8月15日前任の裕仁天皇が無条件降伏の受諾を告げて以来のことでした。
 
天皇陛下の生前退位の希望をつぶしたいのは、血も涙も無いあの人物《篇》
星の金貨プロジェクト 2016年8月16日
 ジェイク・アデルスタイン ()ガーディアン 2016年8月11日
明仁天皇と皇后さまは貧しい人々、障害をもった人々、さらには第二次世界大戦(太平洋戦争)の戦前戦中に朝鮮半島から奴隷労働者として強制的に日本に連れて来られ、そのまま日本に住みついた『在日』と呼ばれる人々にも心配りをされていました。
在日朝鮮人の人々は概ね経済的に困窮し、日本の社会においてしばしば公然と攻撃、排撃の対象にされています。
 
新任の東京都知事である小池百合子氏は、安倍首相が個人的に特に指名した安倍政権の閣僚数人とともに、すべての在日外国人、特に韓国系住民を排撃している政治団体・在特会と関係があったとされています。
対照的に人に対する充分な思いやりと人間性に溢れていることで知られる明仁天皇に対しては、80%を超える国民がご本人が望むなら、生前退位を実現させてあげるべきだと考えています
 
カーネギー評議会の現代日本の専門家であるデヴィン・スチュワートは、天皇陛下の生前退位の意向を日本国民の多くが支持している状況は、幅広い分野における日本社会の変化を反映するものだと語っています。
 「日本社会は徐々に自由で多様性のある、そしてひとりひとりが違った価値観を持つようになる一方、日本文化独自の伝統が失われつつあります。逆に人々は家族と過ごす時間を大切にし – これは伝統的な面を持っていますが、趣味に時間を費やし、充分に休息して健康を大切にするべきだと考えるようになっていることを意味しています。」
 
現行法の下では明仁天皇は死ぬまで公務を続けなければなりませんが、憲法上天皇自身がこの法律の改正を求めることはできません。意向についてほのめかすことしか許されていません。
国民に対する献身的活動を長期にわたり続けてきた結果、持病の進行と老化との戦いを強いられることになった明仁天皇は、国民に対し少しばかりの思いやりと天皇家の人々に対するいたわりを望んでいるのです。
こうした人間として当然過ぎるほどの願いを踏みにじることが出来るのは、絶対的な権力を握る血も涙も無い人物だけです。現在の日本の首相ならそれをやりかねません
 
現在の天皇制の変更を行う手続きとそのために必要な議論は、安倍首相が宿願としてした来た基本的人権に制限を加え、国家神道を再び市民生活の中心に据えるための憲法改定への邪魔になるからです。
 
これは私自身の考えになりますが、良き天皇であるための明仁天皇の言葉の一つ一つは、日本の政治指導者はそうあるべきだという事を思い出させるために、天皇ご自身が考え出された手法なのです。
最も大切なのは一人一人の人間を大切にすることだということを。それは日本の首相が最も学ばなければならない事です。
 
 「私が天皇の位についてからほぼ28年、この間私は、我が国における多くの喜びの時、また悲しみの時を、人々と共に過ごして来ました。私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。」
 
安倍首相が日本国民の平和と幸せを願っているという事が本当であれば、国民一人一人の願いに耳を傾け、彼自身神として崇拝するひとりの男性の願いを実現するために行動するかもしれません。