2008年以来、国連人権理事会では「平和への権利」を国際法典化する決議が毎年採択されてきました。法典化に最も積極的だったキューバ政府らが、今年6月、人権理事会に提出した宣言案が、7月1日に賛成34、反対9、棄権4で採択されました。
今までアメリカやヨーロッパ諸国、日本、韓国は何故か「権利」という言葉を明記することに反対してきたのですが、今回、史上初めて平和が権利として宣言されたことになり、その意義は極めて大きいといえます。
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2016年7月1日 国連人権理事会で平和への権利宣言採択される
平和への権利 資料室 2016 年 8 月 5 日
平和への権利 国連宣言 人権理事会で初めて草案が採択される!
平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会
事務局長 笹本 潤
2008年以来、国連人権理事会では平和への権利を国際法典化する決議が約3分の2の多数の政府により毎年採択されてきました。それ以来、人権理事会の諮問委員会の草案や、各国代表による作業部会が毎年開かれて、国連宣言案の内容が審議されてきました。
2016年6月、これまで法典化に最も積極的だったキューバ政府らが、2016年6月の人権理事会に宣言案を提出しました。今までの人権理事会の決議は、諮問委員会や作業部会で審議を進めるべき、といった手続きに関するもので、宣言案の内容自体の決議は初めてでした。
第32会期人権理事会の最終日の2016年7月1日の午後6時、平和への権利国連宣言案が賛成34、反対9、棄権4で採択されました。採択された宣言案は、第1条に、right to enjoy peace(平和を享受する権利)が入るもので、今までアメリカやヨーロッパ諸国、日本、韓国が反対してきた「right(権利)」という言葉を明記して、平和を権利として認めたものです。
本来、平和への権利の国連宣言案を審議しているのだから、「right(権利)」という言葉が入るのは、当然と思われるかもしれません。しかし、欧米の反対国は、この権利という言葉を否定することに力を注いできたことを考えると、「権利」という言葉が今回の宣言案に入ったのは、3分の2を占める賛成国やNGOの活動の成果と言えます。
願わくばすべての国が賛成するコンセンサスでこのような採択がされるのが理想的だったのですが、それでも国連人権理事会で史上初めて平和が権利として宣言された意義は大きいのです。冷戦終結後、国連では、国家の安全保障から人間の安全保障への安全保障観の移行を提起し始め、この平和への権利もそのような人間中心の国際政治を達成するするための一つの手段なのです。
今後、国連総会で審議、採択されると、平和への権利・国連宣言が正式に成立することになります。その後、人権理事会において、特別報告者、作業部会などの特別手続があり、そこで平和への権利の内容が具体的に審議され、最終的には国際人権規約として成立する、というのが理想的な進行です。このような形で宣言の活動が進むように、私たちNGOはさらに質の高い、大きい運動を作っていかなければなりません。
(採択された宣言案の内容 下記)
平和への権利宣言
(前文省略。 平和の諸原則が述べられている)
第1条 すべての人は、すべての人権が促進及び保護され、発展が十分に実現されるような、平和を享受する権利を有する。
第2条 国家は、平等、非差別、正義と法の支配を尊重し、実施し、促進すべきであり、また社会内でも対外的にも平和を構築する手段として、恐怖と欠乏からの自由を保障すべきである。
第3条 国家、国連、特別機関は、この宣言を実施するため、特にユネスコにおいて、適切な持続性のある手段を取るべきである。国際、地域、国内、地方における諸組織、市民社会は、この宣言の実施にあたって、それを支持し援助するようにすべきである。
第4条 すべての人々が、寛容、対話、協力、連帯の精神を養うために、国際的、国内的な平和教育の機関が促進されるべきである。このために平和大学は、教育、研究、研究生の教育、知識の普及を進めることにより平和教育という普遍的な事業に貢献すべきである。
第5条 この宣言は、国連の目的と原則に反するように解釈されてはならない。この宣言の各条項は、国連憲章、世界人権宣言、及び国家により批准された関連する国際的、地域的な文書に沿って理解されるべきである。