8月20日に、「TPPを批准させない!全国共同行動8・20キックオフ集会」が、明治大学リバティータワーで開かれました。
秋の臨時国会最大のテーマはTPPで、安倍政権は強引に批准を行おうとしています。米議会での批准が見通せない中で、一体何を考えているのでしょうか。
TPPこそ、米ハゲタカ資本が日本を収奪するための最終兵器です。TPPの威力を証明するものとして、2001年から「対日 年次改革要望書※」として毎年日本に突き付けられてきたものが、TPP作戦が浮上してから中止されたことが挙げられます。それはTPP条約が成立すればその種の要求はISD訴訟で簡単に達成できるからです。
※ 解説書としては「拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる」 関岡英之 2004などが有名
もしも協定が発効すれば日本の医療制度などは簡単に破壊されて、米国水準の高額薬価に変えられ、米国製の高額医療制度が時間とともに蔓延することになります。これはほんの一例に過ぎずその害悪は勿論これに留まるものではありません。
如何に米国から強要されたからといっても、これだけ大々的に収奪されると分かっていることを敢えて進めるというのは「売国奴」の所業に他なりません。
植草一秀氏は、臨時国会でのTPP批准を何としても阻止しなければならないとして、TPPの本質を再述するとともに、「TPPの詳細を分かりやすく伝える最良のブックレット」を紹介しました。詳細は、文中記載の参照先:URL http://notppaction.blogspot.jp/2016/08/tppq.html に載っていますが、1部100円で全ページをPDF版で閲覧することが可能です(約40ページ)。
TPPは米国の巨大資本にボロ儲けを約束するものですが、その分一般の米国民には害悪が及びます。米国民はFTA(北米自由貿易協定)などでそのことを十分に経験しているので、TPP反対の思いもとても強いものがあります。
巨大資本の利益が決して米国の利益ではなくて、米国民の利益と相反していることの好例です。それが大統領候補のトランプだけでなくヒラリーもTPP反対を表明せざるを得なかった理由です。
しかしオバマ大統領は来年1月の任期一杯を掛けて議会の批准を勝ち取ることを目指しています。彼が、国民が反対しているTPPの成立に一貫して熱心なのは、着任するにあたって財界奥の院からTPP成立を強要されたためといわれています。
またこれまでTPPの成立のために莫大な費用を負担してきた巨大資本も簡単に引き下がるとは思えません。米議会の批准の成否は予断を許さないと見るべきです。
米国民の立場からTPPについて書かれたスティーブン・レンドマンの記事も併せて紹介します。
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TPPの詳細を分かりやすく伝える最良ブックレット
植草一秀の「知られざる真実」 2016年8月24日
秋の臨時国会最大のテーマはTPPである。
安倍自民党は2012年12月の総選挙の際に「TPP断固反対!」、「TPP交渉への参加に反対!」と大書きしたポスターを貼り巡らせて選挙を戦った。これは事実である。
「わが党は、TPP交渉参加の判断基準を明確に示します」
TPP交渉参加の判断基準
1 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
2 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
3 国民皆保険制度を守る。
4 食の安全安心の基準を守る。
5 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
6 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
これはいまも事実として記録されている。
自民党が野党の時代であったからか、基本的な重要事項を押さえている。
問題は、いま安倍政権が強行突破しようとしているTPPが、これらの公約のすべてに反していることだ。
TPPは、ハゲタカ(=強欲外資)の日本攻略戦略の最終兵器である。
TPPはもともとシンガポール、チリ、ニュージーランド、ブルネイの4ヵ国で始めたものだが、2008年に米国が交渉に参加したところから基本的な性格、目的が大転換した。
2008年から2009年にかけて米国は対日経済戦略を転換した。年次改革要望書で日本の諸制度改変を直接要請、指示する方式を取りやめてTPPに基本戦略を転換したのである。TPPはハゲタカが日本を収奪するための手段であり、日本収奪の最終兵器である。
TPPの特徴は「強制力」にあり、日本をTPPに引き込んでしまえば、あとは強制力をもって日本市場を収奪できる。このことによって利益を得るのはハゲタカ=強欲巨大資本=多国籍企業である。ハゲタカは日本にも多くのエージェントを擁している。
政治を生業とする多くの「政治屋」はハゲタカの手先である。
政治家でTPPを推進している者は、基本的にハゲタカの手先であると見て間違いない。
TPPの最大の目的は日本をTPPに引き込むことであり、このために多くの手先を養っている。
日本でTPPを推進している者は、ハゲタカの手先であり、ハゲタカが世界に蔓延させている経済運営の方式が「新自由主義」である。
「脱原発」などを掲げていても、同時に「TPP推進」を掲げる者は「新自由主義」の信奉者であり、市民の利益ではなく、ハゲタカ強欲資本の利益を追求する者であるから、この点に十分気をつけなければならない。
8月20日に開催された「TPPを批准させない!全国共同行動キックオフ集会」には、会場に入りきれない市民が参集して、有意義な集会が挙行された。
私はどうしても外せない先約があり、参加することができなかったが、極めて意義深い集会になった。
秋の臨時国会でのTPP批准を何としても阻止しなければならない。そのために主権者が積極的に行動することが求められている。
TPPの最大の問題は、その内容が主権者に十分に知らされていないことにある。TPP交渉は秘密交渉で、仮に発効しても交渉内容は4年間も秘匿される。
国民の「知る権利」を侵害する憲法違反の条約なのである。
何よりも大事なことは、TPPの内実を広く主権者に伝えることだが、そのための最良の資料=ブックレットが登場した。
『このまま批准していいの? 続・そうだったのか!TPP 24のギモン』
元農林水産大臣の山田正彦氏、アジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子氏などをメンバーとするTPPテキスト分析チームが取りまとめた分析内容を、分かりやすいブックレットにしたものである。
ネットから無料でダウンロードすることができ、1部100円で取り寄せることもできる。
素晴らしいブックレット=小冊子であるので、このブックレットを日本全国に拡散することがまずは非常に大事である。
(後 略)
TPPを推進するオバマ : エセ情報とデマ宣伝が彼の戦略
マスコミに載らない海外記事 2016年8月24日 (水)
スティーブン・レンドマン Global Research 2016年8月18日
アメリカの貿易協定は、雇用絶滅の大量破壊兵器だ。貿易協定は、基本的な経済的、社会的構造破壊する。生態学的な健全さは、どうでも良いのだ。
TPPがアメリカの法律として発効するのを阻止することが、労働年齢の全てのアメリカ人と、その家族にとって極めて重要だ。
オバマは議会を引き入れて、成立させるべく、公に攻勢に出ようとしているのだ。昨年10月、毎週のラジオ演説で、彼は大げさに宣伝した、うんざりするほどのデマ宣伝を盛り込んで、任期中、終始、国民の信頼を裏切ってきた彼の手口の一例だ
(昔も今も) TPPは“アメリカ人労働者にとって望み得る最良の協定だ。”と彼は主張する。
事実: TPPは、忌まわしい、雇用、賃金と社会保障を破壊するものだ。オバマは、もちろん、それを知っているが、真実の逆を主張して、ウソをついている。
オバマ: TPPは“アメリカ企業に、より多くの彼らの製品を(外国で)売れるようにして、 国内の良い雇用を拡大し、維持できるようにする。”
事実: “アメリカ企業”は、既に移転したよりも多くの雇用を海外移転するために、TPPを立法化したがっているのであり、アメリカ国民の底辺への競争を加速する。
オバマ: “時代遅れの貿易ルールが、わが国の労働者を不利な状態に置いている。そして、TPPは、それを変えるのだ。”
事実: TPPは反労働者的、反消費者的で、失うには余りにも重要な、不可欠な自由に反する。
オバマ: TPPは“パートナー諸国を、高い標準に維持し、世界経済の約40%を占める地域全体の賃金を上げる。”
事実: TPPは、全ての調印国、特にアメリカで法律として発効すれば、公正さと公平さの基準を低下させる。
オバマ: TPPは、“公正なルールのもとで、アメリカ人労働者や企業に公平な機会を与えることを意図している…”
事実: TPPは、労働者の権利や、基本的自由を犠牲にして、大企業の利益を優先する。
オバマは、TPPは、過去の貿易協定の罪を取り消すと主張している。TPPは、そうした罪を、ステロイド入りで強化する。“TPPは、史上最強の労働者の権利を盛り込んでいる”と彼は言った。 ウソだ!!
“TPPは、史上最強の環境基準を盛り込んでいる。” ウソだ!!
“この協定がなければ、中国のような、我々の価値観を共有しない競争相手が、世界経済のルールを書くことになるだろう。” ウソだ!!
アメリカ企業が何百万ものアメリカの雇用を海外移転した罪を、彼は中国や他の低賃金国になすりつけた。
TPPは、アメリカを、何らかの雇用にありつける大半の労働者向けの他の低賃金サービス雇用とともに、メイドや、ウエイトレス、メッセンジャーボーイ、ファースト・フード労働者、清掃員、バスやタクシー運転手の国へと変えるプロセスを大きく加速する。
オバマ、破壊的なTPPを売り込む彼のメッセージを伝えに、様々なアメリカの都市を訪れるつもりだ。もし、これがアメリカの法律になれば、経済と財政的福祉が、既にオバマと彼の後継者が、TPPがあろうとなかろうと維持し続けるネオリベラルの過酷さで、苦しんでいる労働年齢のアメリカ人の権利、福祉と、彼らの家族の将来に反するものになる、史上最も破壊的な協定について、彼は欺瞞的にウソをついている。
8月2日、ホワイト・ハウス・イースト・ルームでの記者会見で、オバマはずうずうしくも“私は大統領で、私はTPP支持だ”と述べた。彼は、今年末、法案を正式に議会に提出するつもりだ。
TPPは猛反対に直面しており、できれば法案を潰すほど強力であることを願いたい。グローバル・トレード・ウォッチのような進歩的団体が、TPPに反対する戦いを率いている。
グローバル・トレード・ウォッチは、TPPの途方もない危険性を、TPPを発効させれば “我々の日々の生活や、我々の政府に対する、大企業権力を拡張する。” と強調している。
TPPは “大企業が雇用を海外に移転するのを、より容易にする。” TPPは “アメリカ市場を危険な食品で溢れさせる。”
TPPは “90%のアメリカ労働者の賃金引き下げをもたらす。” TPPは “極めて重要な環境政策や温暖化政策を弱体化させる”
TPPは “ 医薬品価格を(これまで以上に遥かに)押し上げ、巨大医薬品企業に、更に大きな権力を与える”
TPPは “アメリカを、既知の人権侵害者連中と、より密接に結びつける。” TPPは、圧倒的大多数の国民の利益に反する“ 政府と大企業間の連携協定” だ。
TPPは、許すには余りに破壊的な、法外に不当な貿易法規だ。
“TPPを止めろ” と、グローバル・トレード・ウォッチは強調している!
スティーブン・レンドマンはシカゴ在住。lendmanstephen@sbcglobal.netで彼に連絡できる。
編集者、寄稿者としての新刊書は“Flashpoint in Ukraine: US Drive for Hegemony Risks WW III.”
著名ゲスト達との最先端の議論を、Progressive Radio NetworkのProgressive Radio News Hourで聞くことができる。
本記事初出はGlobal Research Copyright スティーブン・レンドマン、Global Research、2016年
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