2017年9月16日土曜日

内閣支持率が再上昇 いずれ戦前回帰路線につながる危うい風潮

 早くも各種の世論調査内閣支持率が上昇していますが、この間何か政府が評価されるようなことをしたのでしょうか何もやっていません。
 内閣支持率が急降下して以降 この間に行われたことといえば、安倍首相が如何にも殊勝そうな表情と言葉づかいをしたことと、北朝鮮が核実験やミサイル試射を行うたびに激越な口調でそれを非難し、ミサイルが試射されるたびにJアラートを鳴らし、日本の上空を通り過ぎているのに新幹線を止めたり、NHKは特別番組を延々と組むなどのオーバーアクションの繰り返しでした。

 しかしそうした政府の演出が、安全保障上の危機の高まりという印象を国民に与え、安倍政権が強調する「全く無意味な」路線に何となく頼りがいを感じさせるという効果があって、支持率急回復したものと思われます

 北朝鮮の最近の一連の行動は本当に危機を招来するものなのか、冷静に考えて見る必要があるのではないでしょうか。安易に内閣支持率を回復させてしまえば、いまは隠しているものの 本当は安倍首相が熱望している戦前回帰路線が早晩復活することになります。

 高橋乗宣氏の連載記事、「日本経済一歩先の真相」:「内閣支持率は上昇…自民1強の弊害を呼び起こす危うい風潮」を紹介します。
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内閣支持率は上昇…自民1強の弊害を呼び起こす危うい風潮
高橋乗宣 日刊ゲンダイ  2017年9月15日
 一体どういうことか。どの世論調査も内閣支持率が上昇している。NHKが8~10日に実施した調査では、「支持する」が先月比5ポイントアップの44%、「支持しない」は7ポイントダウンの36%。同期間の読売調査も支持率は50%と先月から8ポイント上昇し、不支持率は39%と9ポイント下がった。いずれも支持が不支持を上回ったのは3カ月ぶり。朝日の最新調査でも支持率はアップ。先月比7ポイント減った38%の不支持率と並んだ。

 果たして安倍政権がこの1カ月間で何か国民に良いことをしたか。従来の政策もめぼしい実績は皆無だ。それでも支持率が上昇したのは、北朝鮮危機への国民の不安感のみである。
 核・ミサイル開発の強烈な挑発を繰り返す状況に、国民の多くは「ヤバイ」と感じている。NHK調査だと、実に87%が北朝鮮の行動に「不安を感じる」と答えた。
 安全保障上の危機の高まりが、安倍政権の軍事路線に頼りがいを感じさせる――。そんな調子で国民の気持ちがフッと動いたことにより、支持率は急回復したわけだ。

 安倍首相は率先して危機をあおり、政治利用しているフシもある。露骨だったのは6回目の核実験を実施した3日。日曜にもかかわらず、首相は1日3回も記者団の前に現れ、「差し迫った脅威だ」などと神妙に語り、緊迫ムードを際立たせていた。
 このような風潮が続くのは実に危うい。既に自民党内では北朝鮮危機に便乗して、「抑止力」という名目で日本の軍事力アップを進める動きが活発化しているからだ。

 次期首相のトップに名前が挙がる石破元幹事長は、非核三原則のうち「持ち込ませず」の見直しに言及。米軍の戦術核兵器の国内配備について、議論を始めるべきだと訴えている。菅官房長官も12日付の読売のインタビューに「北朝鮮を巡る現場の実態を見ると、政権交代してから、特定秘密保護法、平和安全法制(安保関連法)の二つを成立させて本当に良かったと思う」と答えた
 さらに菅長官は「日米同盟は一層強固になり、抑止力の強化につながった」と豪語していたから、たまらない。解釈改憲の荒業で平和憲法を踏みにじりながら、「抑止力が強まればいい」と言わんばかり。今の自民党は憲法以上に日米同盟が最優先。この調子だと、9条見直しの流れが強まるのも時間の問題である。

 こんな軍事一辺倒の政権が、教育無償化を打ち出しているのも心配だ。国の財源で無償化を賄うようになれば、教育の方向性に関する政権の関与は強まっていく。いずれ教科書の中身まで国が定める戦前型の教育に戻ってしまうのではないか。
 この先も野党が無力なら、自民1強時代の最大の弊害が起こってしまうのではないか。つまり軍国化の流れが止まらないという不安にさいなまれているのだ。

 高橋乗宣  エコノミスト
  1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。