2015年、詩織さんが安倍首相と懇意な元TBS記者・山口敬之氏にレイプされたとされる事件で、検察が不起訴処分としたことに承服できない彼女は今年5月、検察審査会に処分見直しの申し立てをしました。
それに対して検察審査会が最近「不起訴相当」の議決をしたことに、詩織さんは「結果を知り驚きました。『不起訴処分を覆すに足る事由がない』と判断されたことについて、なぜそうなったのか、しっかり説明していただきたかったです」とコメントしました。
この事件は、所轄の警察署が山口氏の逮捕状を取り警察官を配置したところに警視庁の中村格刑事部長(当時)の指示が入り中止になりました。中村氏は官邸入りしていた時期があり菅官房長官の片腕と言われています。
詩織さんは5月に検察審査会に申し立てをするにあたり記者会見し、検察に対する不信の念を訴えましたが、なぜかメディアは東京新聞などを除き、官邸の介入が疑われるこの事件を取り上げようとしませんでした※。
※ 6月1日 元TBS支局長の「レイプ事件」を闇に葬るメディア
野党は当然政府の介入について国会で追及するかと思われたのですが、全くその動きはなく、それには逮捕の中止を指示した警視庁の中村格氏と昵懇の仲である民進党の安住淳議員が抑えにかかったからだと噂されました。
詩織さんが入手した「議決の理由(書)」はA4判1枚で、〈慎重に審査したが、検察官がした不起訴処分の裁定を覆すに足りる事由がない〉と記されているだけで、議決を援助し議決書の作成を補助する筈の弁護士名の記載もなかったということです。
日刊ゲンダイと田中龍作ジャーナルの記事を紹介します。
追記 検察審査会は最高裁事務総局が管轄します。かつて小沢一郎議員に対する検察審査会において、審議の時期が当初の予定から極端に短縮されて、小沢氏が立候補した民主党の代表選の当日に「起訴相当」の議決が行われたことがありました。
その時「ブログ:一市民が斬る」氏が、検察審査会が実際に開かれたのかについて、極めて疑わしいとする膨大な検証を行っています。彼は事務総局にも何度も足を運び検証を進めています。興味のある方は下記記事(これは数か月にわたる検証のごく一部です)を参照ください。10月一か月分を降順に配置してあります。その他も同)
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詩織さん準強姦容疑事件 検察審「不起訴相当」の不可解
日刊ゲンダイ 2017年9月26日
一体、何が話し合われたのか。審査内容の詳細をぜひ、知りたいものである。フリージャーナリストの詩織さん(28)が、元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏(51)から性的暴行を受けた――と訴えていた準強姦容疑事件で、東京地検の不起訴処分に対し、東京第6検察審査会(検察審)が「不起訴相当」と議決した。
詩織さんは5月に会見を開き、2015年4月に山口氏と食事をした後にホテルで乱暴されたと告白した上で、検察審に審査を申し立てたことを明らかにしていた。
「(議決)結果を知り驚きました。『不起訴処分を覆すに足る事由がない』と判断されたことについて、なぜそうなったのか、しっかり説明していただきたかったです」
詩織さんがこうコメントを出したのもムリはない。A4判の紙っぺら1枚に記された〈議決の理由〉には、〈慎重に審査したが、検察官がした不起訴処分の裁定を覆すに足りる事由がない〉と記されているだけ。〈慎重審査〉の中身がサッパリ分からないからだ。
■なぜ審査補助員はいなかったのか?
注目すべきは、議決書の作成を補助した審査補助員の弁護士名がないことだ。一般市民から選ばれる検察審の審査員はほとんどが法律のシロウトだ。そのため、多くの検察審査会では、中立的な立場から法令の解釈や説明、問題点を整理する弁護士を審査補助員に選任(委嘱)している。
自由党の小沢一郎代表が「強制起訴」された小沢事件では、特捜検事がウソの報告書を作って審査員を誘導していたことが問題になった。検察から「不起訴裁定書」を示されたシロウト市民が、審査補助員の説明もなく、どんな法的根拠に基づいて当否を判断し、〈裁定を覆すに足りる事由がない〉と結論づけたのか。検察審制度に詳しい山下幸夫弁護士はこう言う。
「慎重審査が必要であるからこそ、審査補助員の弁護士を選任するべきだったでしょう。(準強姦容疑という)事件を考えれば、男女比の構成も重要です。いずれにしても、(審査に至った)審議時間などの客観的データを示すべきだと思います」
「本当に審査したのか」「検察の誘導ではないか」――との疑問を払拭するためにも制度改正が必要だ。
「レイプ犯」不起訴相当 第2、第3の詩織さんが出る
田中龍作ジャーナル 2017年9月25日
レイプ犯の不起訴相当に抗議した市民がきょう、検察審査会の入る東京地裁前でプラカードを手にスタンディングした。
「性暴力許さない」「もみ消し許さない」・・・この国が法治国家でなくなりつつあることを憤る言葉が検察審査会に突き付けられた。
2015年、詩織さんがアベ友の元TBS記者・山口敬之氏にレイプされたとされる事件で、検察は早々と不起訴処分とした。不起訴に承服できない詩織さんは今年5月、検察審査会に処分見直しの申し立てをした。
おぞましい性暴力は予想通り「不起訴相当」となった。今月22日である。
レイプ犯の逮捕状が出ていたにもかかわらず、警察官僚が所轄に圧力をかけて潰した。ここに事件の本質が凝縮されている。この時点で検察審査会の結論は決まったようなものだった。
逮捕→身柄送検が当たり前の事案であるのにもかかわらず、山口氏は書類送検となっただけだ。そもそも検察庁に まともな 捜査資料が存在しないのである。
検察審査会には独自の捜査権限も能力もない。検察から頂戴した資料が審査のよりどころだ。検察の不起訴処分を くつがえせる はずもない。
しかも事案が事案だ。アベ友の犯罪が問われていた事案で、クロをシロとした検察の決定が見直されるはずはなかった。
司法キャップを長らく務めていた某社OBは「安倍支配が5年も続いて、検察法務の隅々まで安倍の人事が行き届いている。官邸の機嫌を損ねるようなことなんて できっこ ない」と話す。
日野市からスタンディング抗議のために訪れた男性(30代)は「社会の底が抜けた」と溜息をついた。
横浜市から足を運んだ女性(60代)は「『人を殺してはいけない』だとか まともに 考えたら、許されないことが許されている」と眉をしかめた。
「詩織さん事件」はお身内の記者クラブメディアがあまり報道しなかったことから、検察審査会もあっさりと結論を出した。
このまま安倍政権が続けば第2、第3の詩織さんが出る。
〜終わり~