NHKの岩田明子氏は安倍首相のお気に入りとして知られ、首相が絡む外交的なイベントや国内問題でも特に力を入れた会見があった際には、決まって解説役を担当するなどして来ました。
そんな彼女が突然月刊「文芸春秋」10月号(8日発行)に「安倍総理『驕りの証明』」~NHK解説委員の直言~ 失速への転機は2015年秋だった──という12ページの記事を載せたのですから、物議を醸したのは当然です。
日刊ゲンダイは早速「安倍首相を痛烈批判 15年寵愛のNHK美人記者“反旗”の衝撃」とする記事を載せましので、当ブログでも10日付けで紹介しました※。
※ 9月10日 NHK岩田明子記者が安倍首相を痛烈批判
しかし文春の記事を読んだ人たちから、あれは安倍首相の礼賛記事そのものだという声が上がるようになり、LITERAも12日、「安倍首相べったりのNHK岩田明子記者が “安倍に反旗を翻した” は本当か? 話題の政権批判記事の実態は安倍礼賛の嵐」とする記事を載せました。
要するに批判的な言辞は無くはないものの、それは言わば菓子の甘さを強調するために添加する微量の塩のようなもので、記事はまさしく安倍礼賛のオンパレードであるようです。
そうであれば「15年間親密だったのになぜ批判者に回ったのか」などという見方は全くの間違いで、記事を執筆した8月は内閣支持率が暴落した時期なので、岩田氏なりに政権浮揚のために筆を執ったのであろうと 疑問は氷解します。当然官邸の了解を取った上でのことでしょう。むしろ官邸側から応援依頼があってもおかしくない場面でした。
LITERAの記事を読むと、岩田氏が抱いている安倍至上観はとても正常なジャーナリストのものには思えませんが、NHKは現にそれを重宝して厚遇しているし、世間からの批判も別に集中してはいないようです。
要するに記事の掲載後も岩田氏のNHK政治部内の地位は不動のわけで、ウンザリですが、今後も安倍政権寄りの報道姿勢は続くことになります。
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安倍首相べったりのNHK岩田明子記者が“安倍に反旗を翻した”は本当か?
話題の政権批判記事の実態は安倍礼賛の嵐
LITERA 2017.09.12
今月10日に発売された「文藝春秋」10月号のある記事が、ひそかに話題を集めている。というのも、あの「安倍首相にもっとも近い記者」と呼ばれてきたNHKの岩田明子記者が、こんなタイトルの記事を寄稿しているからだ。
「安倍総理〈驕りの証明〉」
これを受けてネット上では「ついに岩田記者までもが安倍首相を批判!」「岩田記者に逃げられては安倍首相も終わりか」という声が出ている。実際、問題の記事を読むと、岩田記者はこう書いている。
〈安倍政権はいま“落城”の危機に直面している〉
〈安倍政権はなぜここまで凋落してしまったのか。十五年間にわたり安倍を取材し続けてきた私には、その原因が安倍の「驕り」にあると思えてならない〉
これだけを読むと、たしかに岩田記者が安倍首相に「三行半」を突きつけたようにも見えるが、しかし、中身はさにあらず。相も変わらぬ安倍礼賛が繰り返されるシロモノなのだ。
まず、岩田記者は、安倍首相の転機は2015年秋だったとし、そこにいたるまでの歩みを振り返る。それは“分析”などと呼べるものではなく、ただただ褒め称えるものだ。たとえば、こんな具合である。
〈NY証券取引所での安倍の演説はアメリカ風のウィットに富んでおり、聴衆を沸かせた。限られた官邸スタッフによって書き下ろされた原稿は、一貫性があると高く評価された。安倍自身、原稿の作成段階で何度も注文をつけ、公邸や自宅で英語のスピーチの練習を繰り返した。こうした地道な努力は、発信力によって国際的ステータスを高めるという、これまでにない外交手法を確立した〉
発信力で国際的ステータスを高めた……? 安倍首相といえば、五輪招致演説で「アンダーコントロール」などと大嘘をついたり、カイロで「ISILと戦う周辺各国に総額2億ドル程度、支援を約束します」と宣言して海外メディアからも「挑発行為では」と疑問視されてきた。それを岩田記者は〈これまでにない外交手法〉〈外交面でも安倍は着実に成果を出しつつあった〉と絶賛するのである。
安倍政権の外交・安保を絶賛、支持率低下は足を引っ張った大臣のせい
さらに、民主主義を徹底して無視して成立させた、あの安保法制についても、岩田記者はこんなふうに振り返るのだ。
〈安倍は熟議を目指す姿勢を見せた〉
〈怒号やデモ、シュプレヒコールの最中であっても、丁寧な国会審議を国民にアピールしようと努めた〉
〈少しでも多くの野党の理解を得ようと法案の修正も続け、最終的には与野党あわせて五党の賛成を得て、法案を通過させた〉
一体、岩田記者は何を見ていたのだろう。実際は、ほとんどの憲法学者から違憲であるという指摘がなされ、国民からも丁寧な説明・議論が求められていたにもかかわらず、「我々が提出する法律についての説明はまったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」などと思い上がりも甚だしい態度でゴリ押したのではないか。それを、「安倍首相〈驕りの証明〉」などと題した記事を書きながら、岩田記者はこのときの安倍首相の姿勢をまったく驕りとは感じていないのである。
もはや熱狂的信者としか思えない岩田記者だが、では、安倍首相の何を「驕り」と言っているのか。最初に指摘するのは、安倍首相が自身の出身派閥である細田派から4名を入閣させた2015年10月の内閣改造。そして〈はっきりと驕りが表れた〉と岩田記者が言及するのは、2016年。ここから安倍首相の国会答弁に粗雑さが目立つようになったと岩田記者は述べ、さらに同年8月の内閣改造を問題にする。
しかしそれも、金田勝年法相が共謀罪法案の審議で〈国会答弁に苦し〉んだとか、〈今村雅弘復興相は失言で交代せざるを得なくなった〉などを挙げ、安倍首相の任命責任を問うでもなくむしろ“足を引っ張った大臣のせい”にすり替え。なかでも、岩田記者が問題視するのは稲田朋美防衛相の抜擢なのだが、その点も〈森友学園問題をめぐる答弁撤回や防衛省の日報問題、都議選期間中の失言などで政権の足を引っ張り、任期を全うできずに退場することになる〉と、完全に安倍政権目線。その筆致は、まるで安倍首相のお気に入りポジションをめぐり岩田記者が稲田氏を敵視しているようで、読んでいるだけで気持ちが悪くなるほどだ。
他方、内閣支持率急落の最大の原因となった森友・加計問題については、〈安倍の焦りが目立った〉〈昭恵への批判が続いた〉だのと矮小化。こうしたなかで安倍首相が〈憲法改正で勝負に出よう〉としたとして、5月3日に掲載された読売新聞独占インタビューについて取り上げるのだが、岩田記者はこんなふうにつづけるのだ。
安倍官邸、岩田記者の“反省しているフリ”作戦に騙されるな!
〈しかし皮肉なことに、五月二十二日に読売が前文科次官・前川喜平の出会い系バー通い疑惑を報道。これに反発した前川が加計学園問題に関する官邸関与の証言を始めたことで、今度は加計問題が火を噴いた。
安倍の目算は狂った。こうして憲法改正の機運はあえなく萎んだのだった〉
国会における安倍首相の「読売新聞を熟読しろ」発言は無視。前川氏の醜聞を読売にリークして証言潰しを画策したことも無視。こうした安倍首相の「驕り」には目を向けず、「改憲の気運が萎んだ」って……。岩田記者は安倍首相と同じで、都合の悪い現実は何も見えていないらしい。
どうだろうか。威勢がいいのはタイトルだけ。そのじつ、何ひとつ安倍首相の驕りを諫める内容ではない。いつもどおりの、安倍首相をもちあげつづける岩田節が貫かれているのである。
無論、この寄稿文が岩田記者と安倍首相の訣別を意味しているわけではまったくない。
現に、内閣支持率が低下して以降の安倍首相は「反省しているフリ」に余念がない。「驕り」というフレーズにしても、8月5日に安倍応援団の一員である辛坊治郎が司会を務める『ウェークアップ!ぷらす』(読売テレビ)に出演し、「自分の気持ちのなかに驕りが生じたのかもしれない」と語っていた。そして、「驕っていたかも」と言いつつ、加計問題では疑惑の真相究明に乗り出す姿勢を微塵もみせていない。
結局、安倍首相および官邸としては、とりあえず殊勝な演技をすることが「作戦」で、岩田記者もそうした作戦の一環として「驕り」をただすポーズをした、しかし中身は礼賛という記事を書いたのだろう。
事実、岩田記者の寄稿文は、〈安倍がこれまで築き上げてきた地球儀俯瞰外交が、国内問題に足元をすくわれることで機能不全に陥っている現状に、安倍自身は気付いているのだろうか〉などと安倍応援団の妄想でしかない「外交実績」を振りかざし、最後は〈安倍は、政権を奪還したころの初心を取り戻すことができるのか。党内政治ではなく、民意を優先する政治の原点に立ち返ることができるのか〉と締めている。安倍首相の「民意を優先する政治」など見たことも聞いたこともないのだが。
しかし、現実は残念ながら、安倍首相および官邸が思い描いているかたちになりつつあると言えるだろう。殊勝な「反省」ポーズと、北朝鮮に対する「強いリーダー」ポーズ。このふたつによって、内閣支持率が回復しつつあるからだ。だが、それらは実態のないまやかしであり、現実をさらに悪化させるものである。安倍首相、そして岩田記者の妄言は、落とし穴でしかない。(編集部)