ピースフィロソフィーセンターの乗松聡子氏が19日の琉球新報に、「偏向する北朝鮮報道、米日こそ自制を」と題する記事を載せました。そこでは
「国連安保理が“全面禁輸”採択しなかったことを不満げに伝えた日本のメディアは、冬季は平均気温が氷点下となる北朝鮮の人々が凍死しても平気なのだろうか。
“抑止”と称する超大国の威嚇に対する北朝鮮の主権を賭けた抵抗を“挑発”と呼び替え、米国と共に恐ろしい制裁や武力行使を平気で□にする日本政府には、朝鮮半島の人々の生活や命を気にかけている様子はない。
核戦争を防ぐにぱ米国による核先制不使用宣言がまず重要。日本はそれを促すべきなのに、昨年5月広島を訪問したオバマ前大統領が準備していた核の先制不使用宣言に大反対したのが安倍首相だった。それなのに北の核保有を『これまでにない深刻かつ重大な脅威』などと言うのは茶番である(要旨)」
云々 と、日本のメディアと安倍政権が手厳しく批判されています。
この記事に感銘を受けた長谷川澄氏がレイバーネットに転載したいと乗松聡子氏に問い合わせた結果、ピースフィロソフィーセンターのホームページに琉球新報記事の写真版が掲載されました。それを書き起こしたのが下記の記事です。
レイバーネットとピースフィロソフィーセンターHPの記事を併せて紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
偏向する北朝鮮報道 米日こそ自制を
乗松聡子の眼 琉球新報 2017年9月19日
ロシアのプーチン大統領は9月6日、韓国の文在寅大統領との会談で、北朝鮮への制裁として米日が推していた「石油全面禁輸」について「原独供給の中断が北朝鮮の病院など、民間に対する被害を与えると憂慮している」と語った。
「全面禁輸」を国連安保理が結局採択しなかったことを日本のメディアはこぞって残念そうに伝えた。日本人は、冬の間は平均気温が氷点下となる北朝鮮の人々が凍死しても平気なのだろうか。
世界一の核超大国と手に手を取り合い、軍票基地と戦争予行演習で日常的にこの国、そしてその先に見える中国とロシアを威嚇している。「抑止」と称する超大国の威嚇に対する、小国の主権を賭けた抵抗を「挑発」と呼び替え、米国と共に恐ろしい制裁や武力行使を平気で□にする。そこには南北にかかわらず朝鮮半島の人々の生活や命を気にかけている様子はない。
米国のバノン主席戦略官でさえ、8月16日発表のインタビューで、戦争が勃発すれば「30分以内にソウルで1千万人が殺される」懸念からも「軍事的解決はあり得ない」と言っていた(この直後に解任された)。
日本は国内でも朝鮮学校に無償化不適用という差別、関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史否定といった、敗戦後72年たっても変わらない植民地主義がある。この歴史的な偏見に、米国ヘの盲目的追従が加わったからか、日本では右から左まで、朝鮮半島開運の報道偏向は目に余るものだ。北朝鮮をはなから悪者と決めつけ、政治・外交的方法を探ろうとしているロシアや中国を迷惑者のように扱う。
ベトナム戦争時の内部告発文書「ペンタゴン・ペーパーズ」で知られるダニエル・エルズパーグ氏は、昨年、筆者とのインタビューで「核戦争を防ぐにぱ米国による核先制不使用宣言がまず重要で、日本がそれを促すべき」と強調していた。
オバマ前大統領は昨年5月に広島を訪問した後、核先制不使用を真剣に検討したが、それを思いとどまらせるのに役割を果たしたのが安倍政権だった。あのときオパマ政権が遂行できていれば、今年に入ってからの「核危機」は随分異なる様相になっていただろう。日本人は今の状況を招いた自国の責任を認識すべきだ。自分で危機を煽っておいて、「これまでにない深刻かつ重大な脅威」(安倍首相、8月29B)などと言う茶番を許してはいけない。
今月初頭、このエルズバーグ氏も含め主に北米の運動家・学者・ジヤーナリストたちで電話会議を開いた。ここでの話題の一つは、中国が提唱しロシアも支持した、米韓の軍事演習と北朝鮮の核・ミサイル開発を同時に中止する「ダブル・フリーズ」案である。同様の案は北朝鮮自身から繰り返し出されてきたが、米国ば全く耳を傾けないできた。
対話の一歩が踏み出せると、専門家も希望を見いだす「ダブル・フリーズ」案を、米国のニッキー・ヘイリー国連大使は「侮辱だ」と一蹴している。日本でもこの案をしっかり論じているようには見えない。
今、戦争を防ぐためのメデイアの役割と責任は大きい。
(「アジア太平洋ジャーナル・ジャパンフォーカス」エディター)(随時掲載)
北朝鮮報道、日本政府や大新聞に欠けている視点
~コラム「乗松聡子の眼」
長谷川 澄 レイバーネット 2017年9月21日
バンクーバーのピースフィロソフィーセンターの乗松聡子さんが、『琉球新報』に連載している「乗松聡子の眼」というコラムの9月19日に「偏向する北朝鮮報道、米日こそ自制を」と題する文が出ている。これを読んで、私はこれこそ、今の日本政府、日本の大新聞の朝鮮関係報道に最も欠けている視点だと感じた。つまり、朝鮮、韓国に住む、何千万の、政治に関係のない一般市民を思いやる視点、その人たちの生活を脅かしたくないという視点だ。ロシアやアメリカの政治家にさえある、その視点が、安倍首相やその周りから、一度でも表明されたことがあるだろうか。新聞も 制裁を間違いなく遂行するために抜け道だらけの中国を監視すべきなどと、日本にどんな権限があって、どこで監視するのかと聞きたいようなことを書いている。
日本だって、大部分の人が何はともあれ、外交交渉によって、現状を解決してもらいたい、武力衝突など真っ平と思っているはずなのに、日本が率先して、米朝を話し合いのテーブルにつかせるべきなどという意見はタブーのように新聞は書かない。それと正反対の米国の武力行使を煽るような意見さえ出ている。
(中 略)
『琉球新報』が乗松さんの意見を掲載したことに敬意を表したい。そして、レイバーネットに何とか記事を転載したいという私の願いを聞き入れて、自分で許可をとり、ブログに転載して、アクセスを可能にしてくれた、乗松さんに心から感謝します。
「偏向する北朝鮮報道ー米日こそ自制を」(琉球新報から転載)
乗松聡子 ピースフィロソフィーセンター 2017年9月19日
9月19日『琉球新報』3面に掲載されたコラムを、許可を取って転載します。読んだ人から、「今、日本のメディアにも、日本の人たち自身にも、一番必要とされている視点だと思います」といったような声をもらい、拡散したいがどうすればいいかという問い合わせがあったので転載許可を取りました。琉球新報に感謝します。
「自制」、ほんとうに私もそれを訴えたい。その世論が表に出てほしいです。政党や団体のレベルで、「自制」を訴えてほしい。対話、交渉による解決のために働くべき日本は、「自制」どころか、大親分を、やれ、やれ、もっと、もっとと、煽っている始末。
日本の地理的、歴史的位置から言えば、日本列島の住民たちは、客観的に見れば、今「北」に人質にされているようなものです。身から出た錆ではありますが。
私は、「北」に核武装で国家を守るしかないと思わせるに至った経過については、まず日本、そしてアメリカに責任があるという立場です。
でも、正当な立場がどうこうと言っていられる時期ではないと思います。もし、アメリカが軍事介入したら、日本列島の住民は、同じ運命です。
自分の家族が人質になって、武器をつきつけられているとき、救おうとするならば、人質をとらえている人間を、まずは宥めて交渉して、人質を解放させるのに努力するのが筋でしょう?けしからん、あいつをぶっ飛ばしてしまえと言いますか?言いなりになったらつけあがる、つけあがらせてなるものか、なんて言いますか?
今の日本政府のやっていることは、家族が人質になっているのに、人質が解放されるまえに、人質をとらえている奴を、やっつけてくれと、懸命に、軍とか警察に頼んでいるようなもの。怖ろしく滑稽で愚か。
およそ、国民の命と安全を守る「お上」だったこことなど一度もないのに、「お上」がよきにはからってくださると信じていられる国民性です。でも、もういい加減、日本政府の「国民の命と安全を守る」が嘘っぱちであることに気づかなければ。