2017年9月26日火曜日

安倍首相 選挙のときだけ社会保障を騙る

 昨日の安倍首相の記者会見はまさに国民をたばかる(謀る)ものでした。
 2019消費税率10%引き上げ、その税収を「我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換する」ことに充てるので、国民に信を問いたいというものです。
 選挙になるたびに社会保障の充実を謳うのは安倍政権が毎回繰り返してきたことですが、その公約は毎回破られて来ました。政権在位は5年余りに及びますが、その間少しも社会保障は充実していません。

 全世代型の社会保障制度というと聞こえはいいのですが、その実態は高齢者の切り捨てです。何か高齢者が優遇されているかのように言いますが、度重なる給付金の削減や介護負担金の増大で、いま高齢者の貧困は、一人暮らしの女性や母子家庭の貧困とともにもっとも深刻な問題のひとつになっています。
 唐鎌直義立命館大教授によれば65歳以上の高齢者がいる世帯の貧困率は2016年時点で27.0%」であり、さらに1人暮らしの女性は、2人に1人が生活保護の水準を下回る収入で生活」という状況です。

 消費税の税収を社会保障費に回すというのも欺瞞に他ならず、日本では税収の再分配後でも貧困率は変わりません。要するに経済弱者は自分たちが収めた税金を社会保障給付分として受け取っているに過ぎないということです。アメリカを除き先進国でこんな例はありません。その最大の要因として、逆進性の高い消費税で生活必需品=特に食料品について、日本は税率上の配慮を全くしていないということがあります。

 財務省の国際比較によると、食料品にかかる消費税率は
6%オランダ、ベルギー、ポルトガル5% フランス5% ポーランドクロアチア、キプロス3% ルクセンブルグ4% スイス|
0% 英国オーストラリア、カナダ、メキシコ、イスラエル、韓国、台湾、アイルランド
という状況です(ブログ「半歩前へ」より)。
 日本の現状の8%は断トツですが、それをさらに10%上げようとしているわけです。いくら批判されても政府がそれを是正しようとしないのは、そうすれば他の税率をさらに上げないと税収が減るからで、それだけ生活必需品にかけられている税金(=大衆課税)の総額が大きいということです。

 安倍政権は今回「所得の低い家庭の高等教育無償化」、「3〜5歳児の幼児教育無償化および0〜2歳児も低所得世帯に限って無償化」、「待機児童のために2020年度までに32万人の受け皿整備」などを打ち出しましたが、民主党政権時に高校授業料の無償化を実施したとき、それに猛反発したのが自民党でした。子ども手当に対して「財政を破綻させるだけではなく、子育てを家族から奪い取り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化だ」と、激越な口調で大反対したのも自民党でした。
 実際、安倍首相は政権に就くと子ども手当と高校授業料無償制度を廃止し、「保育園落ちた日本死ね」問題でも、安倍首相ははじめは「実際起こっているか確認しようがない」と国会で突き放しました。それを今度はどうしても票が欲しいからとばかりに、恥も外聞もなくてのひらを返したわけです。

 こうして聞こえのいい事柄だけを並べた反面、別掲の記事で明らかなように、安倍政権は来年の国会に改憲案を提出すべく万全の体制を整え、準備も万端なのに、会見ではそんなことにはおくびにも出しませんでした。憲法は勿論国家の根幹をなすものです。欺瞞の社会保障の「充実」だけを強調し、改憲の意図は隠す  これも欺瞞の最たるものです。

 会見で首相は、「民主主義の原点でもある選挙が北朝鮮の脅かしによって左右されるようなことがあってはならない」、「国難突破解散」だとも述べました。
 前者については「意味不明」と言うしかありません。「国難突破」云々については「晴天とら日和」氏が「アベを総理にしているのが一番の『国難』だ」と断じています。(^○^)

 LITERAが首相会見のあった夜に、渾身の会見批判の記事を載せました。
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安倍首相の大嘘解散会見にだまされるな!
選挙のときだけ社会保障を騙る公約破りの常習犯、一方改憲は隠したまま
LITERA 2017年9月25日
「この解散は『国難突破解散』です」

 あまりに空疎で白々しい会見だった。本日、安倍首相は記者会見を開き、「生産性革命、人づくり革命はアベノミクス最大の勝負」「少子高齢化は最大の壁」とし、「消費税の使い道を、私は思いきって変えたい」と宣言。2019年の消費税率10%引き上げの財源を「我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換する」ために使うことを表明し、「消費税の使い道を見直すので、すみやかに国民の信を問わねばならないと決心した」と述べた上で、28日の臨時国会で衆議院を解散、衆院選を10月10日公示・22日投開票の日程でおこなうことを発表した。

 しかも、勝手に解散を決めたくせに「民主主義の原点でもある選挙が北朝鮮の脅かしによって左右されるようなことがあってはならない」などとあたかも北朝鮮によって選挙が阻害されているかのようなことを言い出し、森友・加計学園問題についても「私自身、閉会中審査に出席するなど丁寧に説明する努力を重ねてきた」と正当化してみせた。
 この解散が「森友・加計学園疑惑隠し」であることは明々白々だが、まったく何が「消費税の使い道を、私は思いきって変えたい」「国難突破解散」だ。予想されていたこととはいえ、あまりに盗人猛々しい。はっきり言って「お前が言うな」の一言である。

 会見で安倍首相は、消費税の増税分の使途を借金返済から子育て支援などの社会保障に変更することを公表するなかで、増収分を借金返済に充てることは「消費税引き上げの前提で、国民のみなさまに約束していたこと」であり、それを変更するのだから「国民の信を問うことが必要」などと述べた。
 しかし、安倍政権は2014年4月に消費税率が8%へ引き上げられた際、「引上げ分は全額、社会保障の充実と安定化に使う」と大々的に宣伝していたではないか。にもかかわらず、増収分8兆2000億円のうち社会保障の充実のために使われたのはたった1兆3500億円で、約8割を借金返済に充てていたのだ。 それをいまさら「社会保障に変更する」などと嘯き、挙げ句、解散の理由に仕立て上げたのだ。一体どこまで厚かましいのだろう。

選挙で公約したことは実行せず、選挙で隠した安保や共謀罪を強行
 しかも、すでに方々から指摘がなされているが、消費税の財源変更については民進党代表選で前原誠司代表が訴えていたこと。姑息にも安倍首相は争点を消そうとしているのである。
 だいたい、安倍政権はこれまで安保法制や共謀罪という国の根幹にかかわる重大法案を、選挙ではろくに説明もせず、騙し討ちのように強行採決で次々と成立させてきた。たしかに税金の使途変更は大きな問題だが、本気でやりたければ、国会を開いていつものように無理やりにでも議論すればいいではないか。それをこの聞こえのいい問題に限って「信を問う」などというのは、欺瞞以外の何ものでもない

 さらに、安倍首相は人づくり革命の一環として「所得の低い家庭の高等教育無償化」「3〜5歳児の幼児教育無償化および0〜2歳児も低所得世帯に限って無償化」「待機児童のために2020年度までに32万人の受け皿整備」などを打ち出したが、これも国民をバカにしているとしか思えない。
 そもそも、安倍首相は総理に返り咲いた2012年の衆院選でも、幼児教育の無償化を公約に掲げていた。また、13年には「2017年度までに待機児童ゼロを目指す」と断言。つまり、幼児教育の無償化も待機児童ゼロも“公約破り”案件なのだ。その上、今年5月に「熟読しろ」と国会で言い放った読売新聞のインタビューにおいては、教育無償化を憲法改正のテーマとしてもち出していた。教育無償化に憲法改正をおこなう必要などまったくないが、それを改憲のダシに使おうとさえしていたのである。
 そうやって教育無償化を改憲議論や選挙になるともち出すわりに、そうした場面以外では、教育無償化に消極的な態度、いや消極的どころか積極的に潰してきたのが当の安倍首相だ。
 たとえば、民主党政権時、政府は高校授業料の無償化を実施したが、この高校無償化に猛反発していたのは、いわずもがな自民党である。事実、いまでも自民党のHPには「高校授業料無償化の問題点!」「理念なき選挙目当てのバラマキ政策には反対です」と記載されている。

高校授業料無償化も子ども手当も廃止、教育への支出を潰してきた安倍政権
 そして、この「バラマキ」批判の急先鋒こそ、安倍首相その人だった。高校授業料無償化に対しては「金持ちへのバラ撒き」(「週刊ポスト」2014年10月31日号/小学館)と決め付け、無償化と同様に民主党がはじめた子ども手当については、こんなトンデモ理論で猛批判していた。
民主党が目指しているのは財政を破綻させることだけではなく、子育てを家族から奪い取り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化です。これは、実際にポル・ポトやスターリンが行おうとしたことです」(「WiLL」2010年7月号/ワック)

 実際、安倍首相は総理に復帰すると、子ども手当と高校授業料無償制度を廃止。他方、「保育園落ちた日本死ね」問題でも、安倍首相は国会で「匿名である以上、実際起こっているか確認しようがない」と突き放したように、大きな話題に発展するまでは子育ての厳しい現実から目を背けてきた。
 もちろん、日本は先進国のなかでも圧倒的な「教育支援後進国」であり、教育への公的資金投入が急務であることは間違いない。幼児教育の無償化や事実、経済協力開発機構(OECD)は今月12日にGDPに占める教育の公的支出の割合を発表し、日本は比較可能な34カ国中、最低という最悪の結果を出した。だが、こうした状況はずっとつづいており、第二次安倍政権のこの5年間、教育の私費負担を減らして公的支出を増やすべきだと繰り返し指摘されてきたことだ。
 しかし、そうした教育の公的支出拡大などの抜本的政策を一切とらず、一方、軍事費は2018年度概算要求で過去最大の5兆2551億円となった。
 さらに、安倍首相はこの幼児教育無償化などの政策を「全世代型」社会保障制度などと呼んでいるが、その「全世代型」の内実は、高齢者の切り捨てだ。事実、今月12日に応じた日本経済新聞のインタビューでは、「社会保障の高齢者中心を是正」と語っている。
 だが、そうやって切り捨てられる高齢者の貧困は、いまもっとも深刻な問題のひとつである。

選挙が終われば改憲に踏み出すのはミエミエだが、改憲について一切語らず
 現に、先日、立命館大学の唐鎌直義教授が高齢世帯の貧困率を発表したが、「65歳以上の高齢者がいる世帯の貧困率は2016年時点で27.0%」「1人暮らしの女性は2人に1人が生活保護の水準を下回る収入で生活」という結果が出た(西日本新聞9月15日付)。
 唐鎌教授はこの要因について、「公的年金の給付額が低下したため」とし、「子どもだけでなく高齢者の貧困も深刻。生活保護受給者は今後さらに増えるだろう。これ以上の年金引き下げはやめるべきだ」と述べている。
 青天井の軍事費に対して、高齢者の貧困を増加させ、さらには実行されないままの公約破りである「幼児教育の無償化」を解散の理由にする──。森友・加計疑惑隠しの解散という本当の狙いだけでなく、こうした安倍首相が選挙のたびにもち出す「アメ」の中身も、国民をバカにしているとしか思えない。

 だからこそ、覚えておかなくてはならないことがある。会見で安倍首相は「いま日本経済は11年ぶりとなる6四半期連続のプラス成長、内需主導の力強い経済成長が実現」と好景気をアピールしたが、法人税を引き下げ、その税収は2015年度から16年度で約5000億円も減った。そして、16年度の企業の「内部留保」は過去最高となる406兆2348億円にものぼった。しかし、企業が儲ける一方、利益をどれだけ人件費に配分したのかを示す労働分配率は下がりつづけ、実質賃金の水準も低い。企業が蓄えを増やすだけで人件費には回ってこず、また、生活は苦しいままだ。このまま増税に踏み切れば消費が冷え込むだけでなく、さらに格差は広がり、貧困問題は深刻さに拍車をかけるだろう。

 安倍首相が選挙のたびに囁く社会保障政策は、いつまで経っても実行されない「理念なき選挙目当て」の甘言に過ぎない。そして、憲法改正を睨んだ選挙であるにもかかわらず、安倍首相はきょうの会見で改憲について一言も言及しなかった。選挙中は改憲を語らず、選挙が終わってから「国民の信任を得た」と言い出すのは安倍首相の常套手段となっているが、またも詐欺を働こうとしているのだ。しかも、今回の選挙に勝てば、安倍首相が改憲に大きく踏み出すことは間違いない。
 言うなれば、今回の解散選挙は「この男に国民は見下され、騙されつづけていいのか」を問う選挙である。いや、「安倍晋三という国難を突破するための選挙」だ。(編集部)