2017年9月30日土曜日

希望者全員公認は嘘 前原氏が小池氏とリベラル排除の密約(日刊ゲンダイ)

 28日の英タイムズ電子版は、小池都知事率いる「希望の党」との合流を打ち出した前原代表の判断を「政治的ハラキリ」と表現し、「政治の展望を一変させ、確信をもって結果を予測するのが不可能になった」と報じました。正にその通りの展開になっています。

 前原代表は28日の民進党両院議員総会で「①民進党の公認内定は取り消す ②立候補予定者は希望の党に公認を申請し、同党との交渉は代表に一任する ③民進党は候補者を擁立せず希望の党を全力で応援する」ことを提案し了承されました。

 そして小池氏が“憲法改正に対するスタンスとリアルな安全保障政策”を入党の条件としていることに対しては、「安保法制の見直しについては少なくとも細野さんとのあいだでは合意できるんではないか」とし、希望の党の公認についても、「誰かを排除することじゃない」と説明しました。
 ところがそれは何の根拠もない単なる彼の願望であって、その後行った記者会見で「これまで一緒にやってきた仲間の公認を目指すということで、これから交渉していく」と述べました。

 小池代表は、かねてから「全員を受け入れる気持ちはサラサラない」と明言し「“憲法改正に対するスタンスとリアルな安全保障政策”が入党の条件」だと“踏み絵”まで提示しているので、それを説得して受け入れさせるのは容易なことではありません。事実、10回にも及んだとされた小池氏との事前打ち合わせの中でも何も確認されていません。
 29日朝に行われた小池・前原会談でも、その点の進展はありませんでした。
 民進党は図体も資金も支援団体も、希望の党とは比較にならないほど大きいのに、100%小池氏の言うがままで、個々の党議員の身分に関することでも何一つ要求を通せないとはまことに無能な代表です。
 それに自分と同じ極右の連中は救済されるけれども、リベラル派は自費で無所属から出るしかないというような無法な決定を、リーダーが勝手に行うというのも本来あり得ないことです。そもそも政党助成金の趣旨との関係はどうなのでしょうか。そして民進党のリベラル派にはそれを批判する気骨のある人はいないのでしょうか。

 29日に行われた定例会見で小池氏は、「希望の党の主要政策と考え方が一致しない民進党の立候補予定者らは『排除する。取捨選択というか、絞らせていただく、改めて述べています
 夕刊フジは「民進党『左派』グループの20~30人が「粛清」されそうだ」と述べています。
 前原氏は議員総会ではそんなことはおくびにも出さず、その場しのぎの調子のいいことを口にしていましたが、これが実態であり、解党と呼ぶよりも壊滅と呼ぶべきものです。

 LITERAは
“希望者は全員を公認する”というのは嘘で、前原氏はリベラル派の排除と民進党からから希望への上納金を小池氏に密約した」、「小池代表が民進党と合流しようとしたのは、単に民進党の約100億円の政党交付金、地方組織や支援団体が目当てで、間に合わない候補者選びをカバーするためでしかない。民進党の各候補者に公認に当たって分配した政党交付金を出させ、リベラル派の議員を排除することが最初から合流の条件だった
としています。
 いやしくも「選良」と呼ばれる議員の処遇と政党助成金の使い方を、代表同士の密談でそんな風に決めてしまうとは恐ろしい話です。そんな人間を代表に祭り上げた愚かさの報い  ではとても済まされません。

 現状では小池新党に合流しない民進党議員は無所属での出馬となります。しかし民進党からの人的・金銭的支援は一切受けられないので、このままでは殆どが討ち死にすることになります。リベラル派は、遅きに失したとはいえこの愚かな決定をした前原代表の独断を糾弾し、政党助成金の分割を得て新しい党を結成するべきです。

 日刊ゲンダイとLITERAの記事を紹介します。
 LITERAは、希望の党の台頭はいずれ自民党との連立=「大政翼賛会」に向かうだろうと予想しています。これもまた実に恐ろしい話です。
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希望の党“合流者選別”で民進分裂…リベラル派新党結成か
日刊ゲンダイ 2017年9月29日
 リベラル派は軒並みはじかれるのか。

 小池都知事が代表を務める「希望の党」の細野豪志元環境相は28日、民進党から合流する衆院選候補者の公認について「三権の長を経験された方は、ご遠慮いただいた方がいい」と発言。
 名指しこそしなかったが、菅直人、野田佳彦両元首相の合流を認めない方針を示した。「安全保障法制の白紙撤回を言い続ける人は考え方として厳しいと思う」とも語ったが、公認の最終的な権限については「小池代表の判断だ」と話した。

 さらに、希望の党関係者は、既に候補者の選別作業を開始。過去の発言などをもとに、「A」「B」「C」とランク付けまでしているという。30日にも1次公認が発表される見通しだ。
「民進前職の約1割が希望の党に受け入れられず、はじかれるとみられています。リベラル色の強い議員からは、『筋を曲げるくらいなら新党をつくった方がいい』という声が上がっています」(政界関係者)
 民進党は分裂し、別の新党が立ち上がる可能性がある。


「希望者は全員公認」は嘘!
小池と前原が密約したリベラル排除と民進から希望への上納金
LITERA 2017年9月29日
 本日、民進党・前原誠司代表が党両院議員総会で小池百合子都知事率いる新党「希望の党」との合流を提案、満場一致で合流を決定した。
 前原代表は「名を捨てて実を取る」と語り、「好き勝手な安倍政権を終わらせる」ことを強調。「安倍政権を打倒できるのであれば」と、この合流にはリベラル支持者のあいだからも歓迎の声があがっている。
 だが、はっきり言って、これはまさに「悪魔との取引」であり、小池新党に魂を売ったも同然ではないか。

 そもそも民進党は、安倍政権下での憲法改正に反対し、安保法制の白紙撤回、特定秘密保護法や共謀罪の廃止といった政策を掲げてきた。しかし、小池代表は“憲法改正に対するスタンスとリアルな安全保障政策”が入党の条件だと明言。同様に、細野豪志も「安全保障法制白紙撤回を言いつづける人(を受け入れること)は考え方として厳しいと思う」と述べている。
 だが、前原代表は、安保法制の見直しについて「少なくとも細野さんとのあいだでは合意できるんではないか」などと述べた。希望の党の公認についても、両院議院総会で「誰かを排除することじゃない」と発言し、会見では「これまで一緒にやってきた仲間の公認を目指すということでこれから交渉していく」と説明していた。

 しかし、これはあきらかにごまかしだ。実は、前原代表と小池代表の間では、とっくに、改憲や安保法制賛成に手のひらをかえした議員のみ公認され、リベラル派議員を排除することで話がついている
「小池代表が民進党と合流しようとしたのは、単に民進党の約100億円の政党交付金、地方組織や支援団体、間に合わない候補者選びをカバーするためでしかない。民進党の各候補者に公認に当たって分配した政党交付金を出させ、リベラル派の議員を排除することが最初から合流の条件だった。もちろん、壊滅危機に瀕していた前原代表はその条件をわかっていたはずです。もともと前原代表は改憲や安保法制推進派であり、抵抗はない。ただ、そこのところをはっきりさせてしまうと、話が壊れるので、あえて曖昧にして“公認をとれるよう努力する”などという表現でごまかしてるんです」(全国紙野党担当記者)

議会の8割を改憲勢力が占め、大連立の可能性も
 おそらく、この後、リベラル派議員が公認を申請するたびに、「目指すべき政治の方向性が違う」「現実的な安保政策を拒否する候補者は立てられない」ことを理由にはねつけられる、という光景が繰り広げられるだろう。
「ただ、その場合もマスコミや世論の批判は起きない。後になって公認をはねられた候補者が告発の声をあげても、むしろ、政策が違うのに、公認を求めた候補者のほうが“政治的信念がない”などと批判されるはず、と、小池代表も前原代表も踏んでいるんです」(前出・全国紙野党担当記者)

 なのに、民進党議員は「満場一致」でこの合流を支持し、丸乗りしたのである。
 その理由は実に安直なものだ。毎日新聞によれば、前原代表は枝野幸男代表代行に対し、「小池氏は長妻(昭選対委員長)さんや枝野さんのところに(対立候補を)立てるようなことはしない」と語って説得したという。つまり、小池新党への合流に消極的な議員には、選挙における譲歩をダシにしたのだ。
 だが、相手は手のひら返しの名手・小池百合子である。この“密約”も守られるかどうかもかなり怪しい。また、もし選挙区で対立候補が立たなかったとしても、小池新党に合流しない/できない議員は無所属での出馬となる。人的・金銭的な支援が得られず、ほとんどが討ち死にするのは必至だ。まったく民進党というのはどこまで世間知らずで覚悟のない議員だらけなのか、とため息をつきたくなるではないか。

 それでも、単に民進党がなくなってしまうというだけなら、まあ「自業自得」と笑ってすませることもできる。しかし、いま、起きていることはもっと深刻だ。
 この選挙の後に、日本を戦争に引きずり込む翼賛議会が誕生する可能性があるからだ。
 現在の目算では、自民の獲得議席は200議席以下に激減。一方、希望の党も200議席に迫る勢いだという。これがなにを意味するかというと、8割が改憲勢力になるということだ。
 しかも、どちらも過半数はとれないため、連立を組まざるをえない。自民党が公明党と組んでも過半数を超えない場合、あるいは希望の党と維新で過半数が獲れない場合は、自民=希望の大連立という事態が必ず起きるだろう。

「勝ち馬に乗り遅れるな」という発想が大政翼賛会を生み出した
 小池代表は「安倍政権の打倒」を口にしているじゃないか、と言う人もいるかもしれないが、そんなものは小池お得意のポーズにすぎない。事実、小池新党に合流した中山成彬はさっそく〈安倍首相の交代は許されない〉などとツイートしている。それ以前に、そもそも改憲や安全保障をはじめ安倍と小池は、政策も思想も大差ない。最終的には、自民党と小池新党は北朝鮮危機を口実にして連立を組み、9条や緊急事態条項を軸にした憲法改正を押し進めていく──。
そして、勝ち馬に乗りたいと考える国会議員たちがどんどん集結し、事実上の“独裁”状態になるだろう。

 これはまさに、先の戦争の泥沼化に大きな役割を果たした大政翼賛会の再現だ。1940年にできた大政翼賛会も、けっして軍部に強制されてできたわけではない。世界的な全体主義の台頭のなか、「バスに乗り遅れるな」というスローガンのもと、政界のなかで挙国一致体制を築くべきとする新体制運動が起き、大政翼賛会を結成。ファシズム運動が起き、近衛文麿を中心に、保守政党のみならず無産政党であった社会大衆党までもが積極的かつ自発的に解党して、ファシズム体制をつくりあげていったのだ。

 いまの民進党も全く同じことをしようとしている。憲法改正への反対や安保法制の白紙撤回という主張を捨て、新党に合流することは、いわば立憲主義を否定することを意味する。ところが、「勝ち馬に乗り遅れるな」とばかりに雪崩をうって、小池新党に丸乗りしていく様は、恥知らずとしか言いようがない

「中から右派を抑制」「主導権をとる」などと思っているのかもしれないが、民進党内部の話し合いですらなんの異議申し立ても抵抗もせず“なごやかに満場一致”し、カネも組織ももっているのは自分たちのほうなのに人気だけの小池百合子にひれ伏している首を差し出す人たちに、そんなことができるのか。
 良識ある政治家たちにいま、求められるのは、「第二自民党」たる小池新党に参加することではなく、リベラル勢力として結集することだ。メディアは小池一色に染まっているが、小池の欺瞞や詐術を見抜き、安倍と小池がまったく変わらない独裁者であると嗅ぎ取っている国民は、大勢いる。その受け皿がいまこそ必要なのだ。 (編集部)