東京新聞のシリーズ<ファクトチェック 安倍政治の6年半>の第3弾です。
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<ファクトチェック 安倍政治の6年半>
(3)森友・加計問題 ゆがむ「政」と「官」 忖度の疑念 消えないまま
東京新聞 2019年6月23日
公平公正であるべき行政がねじ曲げられ、安倍晋三首相に近い人に特別な便宜が図られたのではないか-。第二次安倍政権発足後の六年半を振り返り、見過ごせない特徴は、「忖度(そんたく)」という言葉に象徴される政と官のゆがんだ関係だ。
「私や妻が認可あるいは国有地払い下げに、事務所も含めて一切かかわっていないことは明確にさせていただきたい」。二〇一七年二月の衆院予算委員会で首相は、学校法人「森友学園」に国有地が大幅に値引きされて売却された問題について、自身や妻昭恵氏の関与を強く否定した。
この問題では、学園が開校予定だった小学校の名誉校長に昭恵氏が就いていたことなどを官僚が忖度したという疑念がくすぶる。
学園理事長だった籠池泰典被告が一五年十一月、国有地賃貸で優遇を受けられないか昭恵氏に相談し、昭恵氏付き政府職員だった谷査恵子氏が財務省理財局に照会していたことが、同省が公開した文書などで判明。首相は「(理財局は)ゼロ回答。忖度してないのは明らかだ」と国会答弁したが、昭恵氏の存在が国有地を巡る交渉に影響した可能性は低くない。
籠池被告は当初、国有地を八年間借りた後に買い取ることを目指した。財務省近畿財務局との交渉は難航したが、昭恵氏が学園の幼稚園を視察し、籠池被告と一緒に写った写真が示されると、売却を前提とした交渉が進んだ。一六年六月、地中のごみ撤去費として約八億円を値引きして国有地が売却された。
籠池被告は「神風が吹いた」と表現したが、「安倍一強」と言われる長期政権下で、官僚が権力者に近いと思われる人を優遇した疑いは消えない。公文書改ざんに関わった職員が命まで絶っている。
また、首相が「腹心の友」と呼ぶ加計(かけ)孝太郎氏が理事長を務める加計学園の獣医学部新設を巡っても、「加計ありき」で国家戦略特区の選定が進んだ疑いが解消されていない。業者による供応などを禁じた大臣規範があるにもかかわらず、首相と加計氏はゴルフや会食を繰り返してきた。一五年六月に愛媛県と同県今治市が国家戦略特区での獣医学部新設を国に提案した後も続けている。首相が学園の獣医学部新設の意向をいつ知ったのかが焦点となった。
首相は一七年七月の衆院予算委で「(加計学園による特区への)申請を知ったのは一月二十日の特区諮問会議」と答弁。しかし、首相は同年六月の参院予算委などで「(国家戦略特区の前の)構造改革特区で申請されたことは承知していた」と答えていた。矛盾だと追及された首相は「整理が不十分で混乱していた」と陳謝し、答弁を修正した。
その後も、首相と麻生太郎副総理の地元を結ぶ道路整備を巡り、当時の国土交通副大臣が「忖度した」と発言して事実上更迭されるなど、政権の体質を疑わせる問題が続く。だが、その場しのぎにも映る首相の説明から危機意識は感じられない。(望月衣塑子)