東京新聞のシリーズ<ファクトチェック 安倍政治の6年半>の第4弾です。
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<ファクトチェック 安倍政治の6年半>
(4)沖縄 民意無視、建設続く
東京新聞 2019年6月24日
第二次安倍政権以降の六年半、米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設に伴う名護市辺野古(へのこ)での新基地建設を巡っては、選挙で示される新基地反対の民意を無視して、政府が建設を進める構図が続いてきた。
沖縄では二〇一四年十一月の知事選で、新基地阻止を掲げた翁長雄志(おながたけし)氏が当選。同年十二月の衆院選では、県内四小選挙区で新基地反対の候補が勝利した。一八年九月の知事選も、新基地に反対する玉城(たまき)デニー氏が当選。今年二月には二十三年ぶりの県民投票が行われ、投票者の72・15%が辺野古埋め立てに反対した。
安倍晋三首相はその都度、「選挙結果は真摯(しんし)に受け止めたい」と国会答弁したが、計画を見直すことなく、土砂の投入などを進めてきた。
首相が理由としたのは、普天間飛行場周辺の危険をなくすという意味での「基地負担軽減」。そのためには辺野古での新基地建設が「唯一の解決策」という理屈だ。二十三日の沖縄全戦没者追悼式でも、首相は「基地負担の軽減に向けて、確実に結果を出していく」と強調した。しかし、地元にとって新基地は負担以外の何物でもない。
首相は、普天間飛行場の空中給油機部隊が山口県岩国市に移駐し、北部訓練場(国頭村(くにがみそん)など)の約半分が返還されるなど、負担軽減の実績も強調してきた。二十三日の追悼式では、一五年に返還された西普天間住宅地区(宜野湾市)跡地に触れ「基地の跡地が生まれ変わる成功例」を目指して「取り組みを加速する」と話した。国際医療拠点の整備計画が進んでいる。
一方で、沖縄では新たな基地負担も生じている。東村(ひがしそん)高江ではヘリコプター離着陸帯が集落を囲むように新設され、輸送機オスプレイが頻繁に訓練を実施。一七年十二月には普天間飛行場周辺の小学校や保育園に米軍機の部品が落下した。
米軍機による騒音問題も改善の兆しはない。今年五月、普天間飛行場近くの住宅街で県の観測史上最大となる一二四・五デシベルを記録。近くに落雷したのと同程度の騒音とされる。原因は、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの飛来。夜間や早朝の飛行を制限する日米の騒音防止協定も形骸化している。
一方、沖縄振興予算については、一三年末に当時の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が辺野古埋め立てを承認したことを受け、首相は一四年一月の参院本会議で「二一年度まで毎年三千億円台の予算を確保する」と約束した。一四年度は直近十年で最多となる三千五百億円超が配分され、現在まで三千億円台は保たれている。
ただ、一四年知事選で新基地に反対する県政に代わった後は減額されることが多く、一八、一九両年度は三千十億円にまで減った。
政府は、新基地予定地の周辺地区「久辺(くべ)三区」に対し、名護市の頭越しで直接補助金を交付したことも。新基地推進のために予算措置も駆使する姿勢が鮮明だ。 (山口哲人)