2019年6月8日土曜日

竹中平蔵氏主導で進む「未来投資会議」

 日刊ゲンダイが「『死ぬまで働け』『自分で稼げ未来投資会議の正体」と題する記事を出しました。
 その内容は東洋大教授の肩書で「未来投資会議」のメンバーになっているパソナ会長の竹中平蔵氏が、安倍晋三議長の下で「会議」を牛耳っているというものです。
 
 竹中氏は就職後にハーバード大学に留学しましたが、その時代に築いた米国人との人脈を誇示することで小泉首相に取り入り、郵政民営化をはじめとする法案の作成を行い「小泉・竹中内閣」と呼ばれました。
 しかし郵政民営化の実態は、郵便局が有する300兆円近くの貯金高の運用利権を狙う米国に徹底的に便宜を図るもので、米国通商部の幹部と18回の秘密会談を行い、さらに駐日米国大使館員とも毎週会談を行っていたことが国会で明らかにされました。幸いにその後民主党政権に変わったので、郵政事業の民営化にあたり、米国がゆうちょ銀行株式の過半を取得する計画は実行されませんでした。
 
 小泉内閣で官房長官を務めた安倍氏は現在も竹中氏を重要会議のメンバーに重用しています。竹中氏は政府委員の立場を利用して、転職支援のための高額な予算措置を行わせ、パソナの子会社である転職支援会社「日本雇用創出機構」に大儲けをさせるなど、あからさまに自社の利益を図ることも行い、「政商」とも揶揄されています。
 
 今回の日刊ゲンダイの記事の中で、水道事業の管理を外国企業に開放する政策は竹中氏の主導で行われたと記されています。なぜ、失敗が明らかになっているそうした「外資宛開放政策」を政府が採ったのか納得ができます。
 
 最近国会で成立した「改正国有林法」は、全国の森林の3割を占める国有林野で最長50年間、伐採や販売ができる権利を民間業者に与えるというもので、伐採後の造林を義務付けていないため、「後は野となれ山となれ」の法律と酷評されています。それも竹中氏の主導ですが、彼が社外取締役を努めているオリックスが、木材などを燃やして発電するバイオマス発電事業を始めたことも関係あるのではないかといわれているということです。
 
 こんなことでいいのかと考えさせる読み応えのある記事です。
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「死ぬまで働け」「自分で稼げ」未来投資会議の正体
日刊ゲンダイ 2019/06/07
(阿修羅文字起こしより転載)
 5日の未来投資会議で今年の成長戦略の原案が示されたが、そこに見えるのは相変わらずの「雇用制度改悪」と「規制緩和原理主義」だった。
“目玉”は70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする法改正。背景には、年金制度の破綻や人手不足、企業の生産性向上がある。高齢者は安い労働力に落とし込められ、「死ぬまで働け」「自分で稼げ」と尻を叩かれる
 
 地方銀行やバス事業者の経営統合を促す10年限定の特例法の制定も盛り込まれた。地銀や地方のバス事業は、長引く超低金利や人口減少で体力が乏しいため再編を促すのだというが、無意味な異次元緩和で地銀を稼げなくしたのはアベノミクスにほかならない。地方切り捨てで地方を住みにくくさせたのだって、政府の失政の結果だ。それを今になって制度緩和で再編することが成長戦略だとは、いかにも大企業・富裕層優遇の安倍政権がやりそうなペテンだが、忘れちゃならないのは、こうした“エセ成長戦略”作りの司令塔が、竹中平蔵東洋大教授だということだ。
 
 小泉政権で規制緩和の旗振り役だった竹中は、2012年に第2次安倍政権が発足するとすぐに「産業競争力会議」のメンバーに起用された。安倍は当初、竹中を経済財政諮問会議の議員にしようとしたが、麻生財務相らが難色を示したため、格下の産業競争力会議となった経緯がある。
 その産業競争力会議は16年に改組され「未来投資会議」に衣替え。もちろん竹中はそのまま中心人物で、事務局は政権主流の経産省の出向者が大半を占め、安倍が議長、主要閣僚の他、経団連会長や経済同友会代表幹事が名を連ねる。
 いまや、未来投資会議の方が、経済財政諮問会議よりも安倍政権内で重要視され、例えば働き方改革の名の下の「残業代ゼロ」や「クビ切り自由化」も未来投資会議の提案をもとに具体化されているのである。
 
 竹中が未来投資会議の中核にいることは明らかに利益相反だ。有識者枠で入っているが、「パソナグループ会長」でもある。国民全体のための政策という形を装いながら、ホンネは誰のためなのか。非正規が増える雇用改革により人材派遣会社の仕事が増えるわけで、我田引水との誹りを免れない。
竹中氏が今やっていることは、小泉政権時代の新自由主義・規制緩和路線の一環。当時やりきれなかった残されたテーマを実現させているのです。中でも労働の自由化はずっと推進してきた政策。パソナ会長として、自社にビジネスチャンスが広がるわけですしね。加えて竹中氏には、オリックスの社外取締役という肩書もある。竹中氏が水道や空港などインフラの民営化を主張し、その通りになっていますが、2016年に民営化された関西空港の運営はオリックスが担っています。竹中氏は有識者というより業者に近い人。アドバイザーならまだしも、そういう人を政府の中枢に置いておくのはいかがなものかと思います」(ノンフィクション作家・森功氏)
 
竹中の提案がそのまま「改正法」という異常さ 
 規制緩和による民営化は竹中の“十八番”と言っていい。
 竹中は14年5月の経済財政諮問会議・産業競争力合同会議の場で「コンセッション制度の利活用を通じた成長戦略の加速」という資料を配布している。「コンセッション方式」とは国や自治体に所有権を残したまま運営権を民間に売却する手法で、産業競争力会議が未来投資会議に変わった後も、竹中はこのコンセッション方式を提案し続けてきた。その結果、空港上下水道事業にと、次々民営化されてきたのだが、今月5日にも新たな“利権”が民間に開放されることが決まっている。
 
 国会で成立した「改正国有林法」のことで、全国の森林の3割を占める国有林野で最長50年間、伐採や販売ができる権利を民間業者に与えるというもの。政府は「意欲ある林業経営者に伐採の権利を集約し、製材工場など販売先との取引も確立させ、木材の安定供給を図る」などとしているが、問題は伐採後の造林を義務付けていないことだ。造林にかかる経費は国が支出することになっている。
 つまり民間業者はタダで木材を切りたい放題のうえ、儲けるだけ儲けてハゲ山をそのまま放置してトンズラできるオイシイ商売となるのだ。
 
 改正法は、昨年5月に竹中が未来投資会議で提案したものが、ほぼそのまま形になった。所管の林野庁の頭越しに官邸トップダウンで決定した異常さを、昨年11月の林政審議会施策部会で、土屋俊幸部会長(東京農工大教授)が次のように暴露している。
<私は首を切られても全く問題ないので言わせていただきますが、未来投資会議というのが官邸にあって、その委員の竹中平蔵氏が、何回にもわたって国有林の改革について主張されてきたというのは、ホームページ等を見ればわかることです>
<(林業や山村について)専門でない方が、こういう突っ込んだ戦略を出してきて、それを受けて我々が、もしくは林野庁、農林水産省が新たな政策を検討しなくてはならない状況というのは、やはり転倒していると私は思います。正しい政策のあり方ではない
 
 竹中が法改正に執着したウラに「社外取締役を務めるオリックスが、木材などを燃やして発電する、バイオマス発電事業を始めたことも関係あるのではないか」(農水省関係者)と囁かれている。それだけじゃない。水道事業の民営化でもそうだったが、ボロ儲けできるなら外国企業も参入するだろう。竹中は日本の富を奪い取りたい欧米企業の“代理人”でもあると言える。
 
世界の潮流から外れ、周回遅れ
 だが世界の潮流を見渡せば、竹中が安倍とともに推し進める新自由主義は、もはや亡霊のような経済政策だ。どんな結末をもたらすかは、とっくに結論が出ている
「人間にとって何よりも大事なことは自由である」と言った新自由主義の祖、米経済学者のフリードマンの主張通り、小さな政府を志向して規制緩和を進め、経済を自由な市場原理に任せてきた結果、富裕層はどんどん金持ちになり、一方で貧困層は増大。格差拡大社会の弊害があらわになった。
 その反動で、米国では1%VS99%に怒った「オキュパイ・ウォールストリート」(ウォール街を占拠せよ)の抗議デモが起き、格差是正を訴えた民主党のサンダースが予想外の支持を集め、保護主義のトランプが大統領になった。ノーベル賞学者のスティグリッツら著名な経済学者は「新自由主義経済思想を取り巻くコンセンサスは終わった」と断言しているのである。
 
 経済アナリストの菊池英博氏が言う。
新自由主義による格差拡大で社会が分断され、市場原理に従って安い労働力が求められた結果、国内雇用が激減、産業は弱体化しました。それで米国ではトランプ大統領が国内雇用を戻そうとしているのです。新自由主義と決別したのは米国だけではありません。英国がEU離脱を選択したのも、移民増大によって外国人に雇用を奪われた英国人の怒りでした。それなのに日本はどこ吹く風で、新自由主義にしがみついている。今になって移民を進めるなど世界から周回遅れかつ時代遅れの政策を行っているのですから、どうしようもありません」
 世界が、これからの経済はどうあるべきかを模索している時代に、安倍政権は、カビの生えた雇用改悪や規制緩和で大企業だけが儲かればいいというのだから許し難い。前出の森功氏もこう話す。
「新自由主義を最も優れた経済政策だとして研究してきた竹中氏は、自分の研究結果を国の政策に落とし込むことをライフワークにしている。迷惑な話です」
「今だけ、カネだけ、自分だけ」が政府のド真ん中を跋扈する国の国民が幸せになれるはずがない。