2019年6月15日土曜日

ハメネイ師は「怒りのツイート」をしてるのに…

 米国は安倍首相とハメネイ師の会談直前に、イラン関連企業などへの追加制裁を発表しました。そして会談した13日には、日本のタンカーがオマーン沖で爆薬による火災を起こしました。何とも奇妙なタイミングなのですが、米国は間髪を入れずイランが仕掛けた可能性が高いと発表しました。
 どちらも「安倍首相のイラン訪問は、米国の更なる対イラン強硬政策の格好の口実になる」という天木直人氏の指摘を想起させるものでした。かつて強引な口実で戦争を仕掛けイラクを「石器時代」に戻した米国が、今度は米国に「まつろわぬ」中東の大国イランを標的にしていることは公然の事実です。
 
 これまでであれば日本は一も二もなく米国の口車に乗ってイランへの口撃を行った筈ですが、今回はさすがに菅官房長官も「イランが行った証拠は確認されていない(要旨)」と冷静な姿勢を崩さず、NHKも同様な報道の仕方をしています。
 何よりもイランにはタンカーに爆薬を仕掛ける動機がありません。逆に火災を消火し、タンカーの乗組員44人全員を救出し、更にタンカーに取り付けられていた爆発装置を取り外し(米国の情報)ています。イランが仕掛けたのであればそんなことをする筈はありません。
 むしろオイルが流出しないレベルの爆薬をタンカーに仕掛けて火災を起こさせる技術を持つ、謀略行為に長けた人々の仕業と考えるのが普通です。
 
 今回のイラン訪問は、安倍首相2016年大統領就任前にトランプ氏と会談した際、「自分ならハメネイ師に会うことができる」と持ちかけたのがそもそもの始まりだったということです(朝日新聞)。
 しかしその大口とは別に実際には何の戦略もないので、手ぶらでイランに向うしかありませんでした。イランは安倍首相を丁重に扱いましたが、用件に関してはハメネイ師から
安倍氏の善意と真剣さは疑わないが、米大統領からの伝言に対して、トランプをメッセージのやり取りをするにふさわしい相手とは思っていない返答はない」
「安倍氏は、トランプが米国との交渉がイランの進歩につながるだろうと言っていたと話したが、我々の進歩は、交渉や制裁解除がなくとも、神の恵みによってなされゆくのである」と、ツイートで一蹴されました。
 
 それが安倍首相のイラン訪問の全てですが、安倍応援団は「有意義だった」ことを宣伝するのに余念がありません。
 LITERAが、NHKの岩田明子記者や、田崎史郎氏の空騒ぎを報じました。浅はかなことです。
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安倍イラン訪問でNHK岩田明子記者がフェイク解説! 
ハメネイ師は「怒りのツイート」してるのに「安倍首相の助言を重視」
LITERA 2019.06.14 12:48.
「アメリカとイランの橋渡しができるのは世界で安倍首相だけ」という掛け声は、一体なんだったのか──。関係が悪化しているトランプ大統領とイランを仲立ちすべく、昨日、イランの最高指導者・ハメネイ師と会談をおこなった安倍首相だが、またしても「外交の安倍」なる看板が羊頭狗肉にすぎないことを世界中に知らしめてしまった。
 
何しろ、何の成果も示せなかったばかりか、会談とタイミングを合わせたかのように、日本の海運会社が運航するタンカーがホルムズ海峡で砲撃を受けるという事件が起こったのだ。この事件についてアメリカのポンペオ国務長官は、「米政府はイランが攻撃の背後にいたと判断している」として、「日本に対する侮辱だ」と語った。
 
 一方、イランのザリフ外相は〈米国が一切の物的証拠も状況証拠もなく即座にイランを非難したことは、安倍晋三首相によるものも含め、Bチームが妨害外交というプランBに動き、イランに対する経済テロを隠蔽しようとしていることを明確に示している〉とTwitterに投稿。「Bチーム」とは、ジョン・ボルトン米大統領補佐官やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、アブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド皇太子を指すもので、5月にもザリフ外相は「『Bチーム』が米国に戦争をさせようとしている。自殺行為だ」として非難していた。今回の安倍首相の「伝書鳩」外交を、ザリフ外相は「Bチーム」の妨害外交のひとつと見なしているようなのだ。
 
 現段階ではタンカー攻撃に本当にイランが関与していたかどうかは断定できないし、ポンペオのコメントはイラン攻撃の口実に利用しただけかもしれないが、少なくとも、安倍首相のイラン訪問がアメリカとイランの関係修復に何の役にも立たなかったことは間違いない。それは安倍首相との会談後、ハメネイ師がTwitterにこんな投稿を連投したことからも明らかだ。
 
〈我々は、安倍晋三の善意と真剣さは疑いません。しかし、あなたが米大統領から伝えられたことについていえば、私はトランプをメッセージのやり取りをするにふさわしい相手とは思っていない。トランプへの返答はありませんし、彼に答えるつもりもありません〉
安倍晋三氏よ、アメリカ大統領は数日前にあなたと会って、イランについても話した。しかし、日本から帰国した後、彼はすぐにイランの石油化学産業に制裁を科しました。これが誠実なメッセージですか? これで彼が嘘偽りのない交渉をする気があるということが示されると?
〈安倍晋三氏よ、あなたは、トランプは米国との交渉がイランの進歩につながるだろうと話していたと、そう言いましたね。我々の進歩は、交渉や制裁解除がなくとも、神の恵みによってなされゆくのです〉
 
 トランプ大統領の「伝書鳩」として赴いたのに、ゼロ回答どころか、ハメネイ師の怒りを可視化してしまった安倍首相。しかも、笑うに笑えないのは、この「伝書鳩」役はトランプに押し付けられたわけではなく、安倍首相から手を挙げて立候補したものであるということだ。なんと、2016年にトランプが大統領に就任する前にはじめて会談した際、安倍首相は「自分ならハメネイ師に会うことができる」と持ちかけ、トランプも「そうなのか、ハメネイ師に会えるのか」と返答したのだという(朝日新聞デジタル11日付)。つまり、原油の輸入国として長く友好を築いてきた日本とイランとの関係を、安倍首相はトランプに取り入るためのカードとして最初から用意していたのである。
 
 ところが、その結果はご覧の通り、ものの見事に玉砕。いや、それどころか、安倍首相がトランプの代弁者として振る舞った結果、築き上げた日本とイランの友好関係にもヒビが入った可能性さえあるだろう。
 さらに悲惨なのは、安倍首相とハメネイ師の会談直前に、米財務省がイラン関連企業などへの追加制裁を発表したこと。ようするに、安倍首相は当のトランプ大統領から梯子を外されてしまった、というわけだ。
 
安倍は「トランプへの返答はないし、答えるつもりもない」とあしらわれたのに岩田記者は
 そもそも、アメリカとイランの関係は、トランプ大統領が、イランが核開発を制限する見返りに経済制裁を一部解除した多国間合意から一方的に離脱したことで一気に緊迫化した。オバマ前大統領が取り付けた成果を御破算にするという幼児的なその行動はエスカレートし、米軍が中東地域に空母を派遣するなど、いつ軍事衝突が起きてもおかしくはないほどの危険な状況に陥っている。
 
 だが、安倍首相はトランプ大統領の核合意離脱を他国の首脳たちのように非難することもなければ諫めることもせず、それどころかトランプをノーベル平和賞に推薦する始末。そんな「トランプの犬」でしかない安倍首相の話にイランがおいそれと応じるわけがなく、ハメネイ師の「完全拒否」は当然過ぎる結果なのだ。
 
 しかし、驚くべきは、安倍首相の「外交やるやる詐欺」だけではない。こんな大失敗に終わったにもかかわらず、御用メディアと安倍応援団は「大成功」と安倍首相のイラン訪問を伝えているのだ。
 たとえばNHKの岩田明子記者は、昨晩放送の『ニュース7』で、こう解説した。
「ハメネイ氏が外国の首脳と会うことは多くなく、日本政府は伝統的な友好国のトップであり、なおかつトランプ大統領とも緊密な関係を維持する安倍総理大臣の助言を重視していることの表れだとみています」
「安倍総理大臣は一連の会談でイラン側の真意を引き出すことができたと受け止めている」
 どう考えても「安倍首相の助言を重視」している人物が、「トランプへの返答はないし、答えるつもりもない」とあしらうはずがない。しかし、岩田記者はそうした解説はせず、「(安倍首相は)トランプ大統領の真意を正確に伝えた」とアピールに励んだのだ。
 
 まったく頭がクラクラしてくるが、じつはこうした無理矢理な安倍イラン訪問礼賛は、NHK岩田記者だけではない。多くのマスコミがイランでの会談以前から今回の会談への期待感を煽り、「アメリカとイランの橋渡しができるのは世界で安倍首相だけ」と必死に喧伝していた。
 
田崎史郎は「安倍さんは米から何かカードを貰っている」と噴飯解説
 その典型が、12日放送の『ひるおび!』(TBS)。安倍首相のPRマン・田崎史郎氏が登場し、「トランプさんとイランの首脳部と双方から信頼されているのが、安倍総理しかいないんですよ」「イランから見てもアメリカから見ても、安心して任せられる人が、いまは安倍総理しかいない」と強調していた。
 イランが安倍首相のことを「安心して任せる」などとはまったく見ていないことが判明したいまとなっては、田崎氏の解説がいかに空っぽなのかよくわかるが、さらに田崎氏はこんなことも述べていた。
「(トランプ大統領が)来日したときの首脳会談では、安倍さんが(イランに)行くことについて、ボルトン(米大統領補佐官)さんは『グッドタイミング』と言っているわけですね。だから何かカードを貰っている可能性はある」
 
 カードを貰うどころか、安倍首相は手ぶらでトランプのメッセージをただ伝えるという外交の無能っぷりを見せつけただけなのだが、しかし、安倍応援団としては期待を煽りに煽り、当事者から事実が突きつけられても「安倍首相の助言を重視」などと言い張って押し通せば、それで成功なのだ。
 これは、安倍首相や官邸もまったく同じだ。とにかく外遊に行きまくって“やってる感”を演出し、安倍応援団に「大成功」とPRさせれば、国民なんて簡単に騙せると考えているのだろう。
 
 そして、実際には、ロシアのプーチン大統領にはコケにされ、北朝鮮との糸口もなく、トランプ大統領にはゴマをするだけすっても梯子を外されるという失態を繰り返しても、国民はまだ“外交の安倍”というイメージを信じ込んでいる。一体いつになったら目が醒めるのだろうか。 (編集部)