2019年6月17日月曜日

タンカー攻撃で 日本が米国に証拠提示を要求

 日本政府は珍しく、ポンペオ米国務長官が「イランに責任がある」と断じた13日以降、複数の外交ルートを通じて「裏付けとなる根拠を示してもらわないと、日本として断定できない」と伝達し、日本や国際社会が納得できる証拠を提示するよう強く求めたということです
 日本は、安倍首相とイランハメネイ師の会談とほぼ同じ時間帯に攻撃されたことを重視し「米国とイランの仲介に乗り出した首相のメンツは著しく傷つけられた。重大事案であり、事実認定の誤りは許されない」との立場を伝えました
 きわめて当然の主張です。
 
 今回、米国はいち早くイラン革命防衛隊が不発弾を撤去する動画というものを公表し、タンカー攻撃はイランによるものだと断定しました。英国はいち早くそれに賛同しました。一方、イランは関与していないとして米国にも英国にも強く抗議しています。
 英国のこうした姿勢は、かつて米国のパウエル国務長官が、イラクを攻撃するに当たり「イラクの大量破壊兵器保有に関する報告書」に基づく説明を行ったとき、いち早く開戦に同意したことを思い出させます。
 しかし後にその報告書は、米国が、ある大学院生の論文を無断引用しそれをイラクの脅威を正当化するために改竄したものであることが暴露されました(パウエル氏はそれを知らなかったようです)。
 全てが終わったときに英国はそれを含めた誤りを認める膨大な調書を公表しました。
 
 米国はベトナム侵略を開始したときにも「トンキン湾事件」をデッチ上げました。
 またかつてウクライナの上空で旅客機が撃墜されたとき、米国はいち早くロシアが絡んでいることを示す音声録音を証拠として発表しましたが、後に、それは実際の事件よりも先に作成された捏造版であることが判明しました。
 
 謀略国家・戦争国家の米国の主張をそのまま鵜呑みにすることは極めて危険です。
 関係する記事を紹介します。
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タンカー攻撃 米に証拠提示要求 日本「イラン関与」同調せず
東京新聞 2019年6月16日
 政府がホルムズ海峡付近で起きたタンカー攻撃を巡り、イランが関与したとする米国の説明に同調せず、裏付けとなる証拠を示すよう米側に求めていることが分かった。米側の主張は説得力に欠いているとの受け止めが背景にある。複数の日本政府筋が十五日、明らかにした。今月下旬の大阪での二十カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて行う日米首脳会談の際、タンカー攻撃を含むイラン対応が主要議題になるのは確実だ。
 日本の海運会社が運航するタンカーへの攻撃に関し、政府は攻撃主体の特定につながる有力情報を現時点でつかんでいない。イラン関与説の信ぴょう性については「米側の説明を聞く限り、推測の域を出ていない」(政府高官)との見方が根強い。イランへの態度を一段と硬化させたトランプ政権が、米イラン対立の仲裁に動いた日本の求めに応じるか否かが当面の焦点になる。
 
 関係者によると、日本政府はポンペオ米国務長官が「イランに責任がある」と断じた米国時間の十三日以降、複数の外交ルートを通じて「裏付けとなる根拠を示してもらわないと、日本として断定できない」と伝達。日本や国際社会が納得できる証拠を提示するよう強く求めた
 同時に、首相とイラン最高指導者ハメネイ師の会談とほぼ同じ時間帯に攻撃されたことを重視していると強調。「米国とイランの仲介に乗り出した首相のメンツは著しく傷つけられた。重大事案であり、事実認定の誤りは許されない」(官邸関係者)との立場を伝えたという。
 河野太郎外相も十四日の日米外相電話会談で、ポンペオ氏に「イラン関与」を裏付ける証拠の開示を促したとみられる。
 
 米政府は、イランが関与したと断じる理由について(1)今回の攻撃は高度な技術、精度に支えられている(2)周辺地域でそれだけの力量を持った勢力は、イラン以外に考えられない-と説明。
 これに対し、菅義偉(すがよしひで)官房長官は十四日の記者会見で「予断を持って発言することは控えたい」と述べ、米国の主張と一線を画す考えを示唆していた。
 
<タンカー攻撃> イラン沖のホルムズ海峡付近で13日、日本の海運会社などが運航するタンカー2隻が何者かによって攻撃された。乗組員に日本人はおらず、死者も出なかった。米国はイラン革命防衛隊が船体に吸着された不発の爆発物を取り除く様子だとする白黒の粗い映像を公開。イランを名指しで非難し、英国も同調した。イラン側は関与を否定した。中東情勢を巡る緊張が一段と高まっている。日本政府は攻撃主体についての言及を避け、関係国に自制を呼び掛けている。
 
 
タンカー攻撃 独仏も慎重、英は米追随
東京新聞 2019年6月16日
 【ベルリン=近藤晶】ホルムズ海峡付近で起きたタンカー攻撃を巡り、欧州のイラン核合意当事国の間で対応が割れている。英国はイランの関与を名指しで非難する米国に追随。一方、ドイツとフランスは緊張が高まる米国とイラン双方に自制を呼び掛けている。
 英外務省は十四日の声明で、イランの革命防衛隊に関係する組織がタンカーを攻撃したのは「ほぼ確実」と結論づけた。ハント英外相は声明で「民間の船舶を標的にすることは国際規範に反する」と非難。イランに対し、地域を不安定化させるあらゆる行為をただちにやめるよう求めた。
 これに対し、ドイツのマース外相は「状況がエスカレートすることは危険だ」とし、さらなる緊張を回避するよう関係国に自制を要求。独政府報道官は「重要なのは事件の背景を徹底的に調査し続けることだ」と強調した。
 フランス外務省報道官も「全ての当事者に自制と緊張緩和を改めて求める」と述べた。
 米国の核合意離脱を受け、合意当事国の英独仏は今年一月、対イラン貿易で米制裁を回避するため、金融決済を担う「貿易取引支援機関(INSTEX)」を設立するなど核合意の維持に腐心してきた。
 しかしイランは先月八日、核合意の履行義務の一部を停止すると表明。欧州に対し、石油輸出などの取引継続につながる具体的な支援策を求め、六十日間の猶予期間内にまとまらなければ、ウラン濃縮を再開すると示唆している。
 
 
イランが英に抗議 タンカー攻撃関与断定で
共同通信 2019年6月16日
【テヘラン共同】イラン外務省は15日、イラン駐在の英国大使を呼び出し、イラン沖のホルムズ海峡付近で13日に起きたタンカー攻撃をイランの犯行と事実上断定した英政府の判断について「根拠がなく、真実からほど遠い」と抗議し、説明を要求した。イラン外務省が発表した。
 イラン学生通信によると、外務省幹部は英国大使との会談で、英国の対応について「許されない反イランの立場」を取っていると強く批判した。「英国以外に米国の(イランへの)非難を支持している国はない」と強調した。
 
 
米「イランの攻撃」 イラン「根拠ない」 タンカー「革命防衛隊が機雷回収」映像
東京新聞 2019年6月15日
 【ワシントン=金杉貴雄、カイロ=奥田哲平】イラン沖のホルムズ海峡近くで起きた日本などのタンカー二隻への攻撃について、トランプ米大統領は十四日、米メディアのインタビューに「イランがやった」と明言した。米中央軍は十三日、イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」のボートがタンカーに接近し、証拠隠滅のため不発の機雷を取り外しているとする録画映像を公開。イランは「根拠がない」と関与を否定した。
 トランプ氏は十四日のFOXニュースの番組で「映像がさらされている。彼らは証拠を残したくなかったのだ」と指摘した。また「ホルムズ海峡は封鎖されないだろうが、もしそうなったら、長く続かないだろう」と語り、事態が悪化すれば実力行使も辞さない考えを示唆した。
 ポンペオ米国務長官も「イランに責任があるというのが米政府の判断だ」と明言。イランの最高指導者ハメネイ師は安倍晋三首相に対米交渉を拒否する意向を示しており、緊張が高まるのは必至だ。