2019年6月14日金曜日

F35A墜落は「飛行士の操縦ミス」と防衛省

 4月9日に青森県沖で墜落したF35A戦闘機の事故について防衛省は「空間識失調」に陥ったパイロットの操縦ミスの可能性が高いと発表しました。要するに機の姿勢がどうであるかを認識できなくなって海面に激突したというのです。
 有視界飛行をしている小型の自家用機などではありうることですが、夜間の飛行や空戦を想定して作られた戦闘機では必要な計器類(高度や機の姿勢などが認識できる)は揃っているので、大ベテランがそんな単純ミスを犯すことはありません。。
 むしろ米政府監査院(GAO)F35についての報告書指摘している呼吸調節装置が故障操縦士に酸素欠乏など身体に問題が起きた事例が35件あったことや、「コックピットの画面フリーズ(固着)」明かりの少ない夜間飛行でヘルメット装着型のディスプレーが不鮮明になるなど“深刻な構造的欠陥”との関係を疑うべきでしょう。
 
 防衛省はパイロットの教育・訓練、機体の点検を徹底し、見合わせていた同型12機の飛行を近く再開させるということです。
 そうするためには「操縦ミスによる事故」という結論は確かに好都合ですが、そんな政治的判断をしてみてもパイロットの安全は保障されません。
 飛行を再開するのは、米国がそうしたF35の欠陥を根本的に解決するまで待つべきです。
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評論家が指摘 F35A墜落原因「飛行士操縦ミス」の怪しさ
日刊ゲンダイ 2019/06/13
 4月に青森県沖で墜落した空自三沢基地の米国製最新鋭ステルス戦闘機F35A。パイロットは死亡し、原因特定に不可欠な飛行データの記録は見つかっていない。それなのに防衛省は10日、機体異常ではなく「空間識失調」に陥ったパイロットの操縦ミスの可能性が高いと発表した。
 パイロットの教育・訓練、機体の点検を徹底し、見合わせていた同型12機の飛行を近く再開させる。
 
「水平線が見えない夜間や雲の中を飛行する時にパイロットがよく陥るのが空間識失調です。平衡感覚を失い、機体の向きや高度を正しく認識できなくなる。夜空の星だと思ったら、海上の船の光だったみたいな感じです」(軍事ジャーナリスト・世良光弘氏)
 岩屋毅防衛相は「月明かりがない夜間で、空間識失調に陥りやすい状況だった可能性が高い」と説明したが、F35Aは米国が誇る最先端の戦闘機だ。月明かりがないと墜落するような、ショボいステルス機なのか
 
 軍事評論家の前田哲男氏が言う。
「最新鋭のF35Aは、機体の位置や高度などのデータがパイロットのヘルメットの中に表示されるのが特徴。パイロットはデータを確認しながら操縦する。仮にパイロットが空間識失調に陥ったとしても、データで正しい位置を確認することで、墜落は避けられた可能性があります。しかも、パイロットはベテランで、夜間飛行での空間識失調の危険については、十分に注意していたはずです。位置のデータが間違っていたなど機体側に何らかの異常があった可能性も捨てきれない」
 機体原因も十分考えられるのに、死亡したパイロットに責任を押し付けたようにみえる。
米国に配慮して、原因を機体ではなく、急いで人為ミスにした感があります」(前田哲男氏)
 
 F35は、トランプ大統領が世界中にトップセールスをかけている。中でも、日本は大のお得意さん。今後10年間で総額6兆円を投入し、F35Aを105機、F35Bを42機の計147機も配備する計画だ。戦闘の絶えないイスラエルの50機を大きく上回る。先月の来日時、トランプは「日本は、同盟国の中で最大規模のF35保有国になる」と安倍首相にハッパをかけた。
 
 空自のF35Aは実戦配備されていない。飛行再開を急ぐ必要はないはずだ。しかし、今月末にトランプがG20で来日する。安倍政権はその前にF35Aの飛行再開にメドをつけたかったのだろう。パイロットの「空間識失調」にしてしまえば、“死人に口なし”。とことん、冷酷な政権だ。