金融庁が5月22日、「年金給付はこれから下がる、2000万円貯めておけ」との報告書をまとめたことにネットが総反発したのは極めて当然のことです。
金融庁は慌てて改訂版?をつくり3日に公表しましたが、それはいくつかの表現を変えたに過ぎないものでした。
これについては、LITERAが5月30日以降これまで3回に渡って取り上げています。
それにしても麻生大臣の開き直りのお粗末さは目に余りますが、その辺が実は安倍内閣の真骨頂なのかも知れません。
そんな中、政府は毎回(5年に1回)6月中には公表されてきた「財政検証」を、今年は公表の時期さえ出ない状況になっています。
「財政検証」は公的年金の健全性を点検し「財政の現況および見通し」を作成するもので、前回は14年6月3日に公表されました。厚労省はその際“100年先までの見通しを検証し、若い世代が将来受け取る年金は将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込み”としていました。
今回公表の時期も明らかにできないのは、今回は将来的に年金給付額が下がることを示す厳しい内容になると見られているからですが、選挙に不利だからということでそれまでは伏せるというのでは余りにも姑息です。
安倍首相は、トランプ氏に言われるまま湯水のごとくにイージスアショアに8000億円、F35戦闘機に2兆円近くを使い、防衛費を10兆円に倍増させることを高言していますが、まずはその態度を改めるべきでしょう。
LITERAと日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金先細り」の“不都合な事実”を隠蔽!
年金の「財政検証」結果公表を参院選後に先延ばし
LITERA 2019.06.06
またも安倍政権が選挙のために「不都合な事実」を隠蔽しようとしている。金融庁が「今後、年金の給付水準は下がる」「年金が減るから老後のために2000万円を資産運用して貯めておけ」と突如言い出したことに反発が高まっているが、そんななか、今年6月前半におこなわれるとみられていた「財政検証」の結果公表が参院選後にもちこまれようとしているのだ。
「財政検証」とは、2004年の年金制度改正によって導入された、公的年金の「定期検診」とも呼ばれるもので、少なくとも5年に1度、公的年金の健全性を点検し「財政の現況および見通し」を作成するもの。前回は2014年6月3日に公表され、厚労省はこの結果について“100年先までの見通しを検証し、若い世代が将来受け取る年金は将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込み”とHPでも説明している。それが、今年の「財政検証」の結果は、厚労省が「作業中」だとして公表時期の見通しを示していないのだ。
これはあきらかにおかしい。というのも、「財政検証」の公表にいたるプロセスは、前回とほぼ同じスケジュールで進んできたからだ。
前回の2014年は3月10日に「経済前提に関する専門委員会」でとりまとめがおこなわれ、その後、検証作業を経て6月3日に結果が公表されている。一方、今年は3月7日に専門委員会がおこなわれ、今年3月12日の衆院厚労委員会では厚労省の木下賢志年金局長も「財政検証は、前回は6月3日に公表いたしましたけれども、今回も3月に、先般、経済前提を踏まえて財政検証を開始いたしましたので、それが終わり次第公表する」と述べていた。
ところが、今年はいまだに「財政検証」公表の時期さえ出ない──。なぜ、こんなことになっているのかといえば、今回の「財政検証」の結果でも、将来的に年金給付額が下がることを示す厳しい内容になるとみられているからだ。
事実、4日付けの日本経済新聞は、〈検証は将来の年金額が少子化で先細りする結果になる公算が大き〉いとし、こう伝えている。
〈財務省の幹部は検証結果を見据え、「選挙前に公表しても(政権にとって)いいことはない。マイナスの影響の方が大きい」と話す。年金部会の別の委員は「公表は参院選後になるかもしれない」と明かす〉
つまり、厚労省は前回と同じスケジュール感で作業を進め、今年6月前半での「財政検証」結果公表を考えていたが、安倍政権にダメージを与える内容になることから、参院選後まで公表を遅らせようとしようとしている──ということらしい。
一体、安倍政権はどこまで国民を欺くつもりなのか。というのも、安倍政権は過去にも国民の年金を溶かしてしまったことを選挙後まで隠すという姑息な手に出た前例があるからだ。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2015年度、公的年金積立金の資産運用成績で約5兆3000億円もの運用損を出したが、これを国民に知らせまいと画策。例年、GPIFの前年度の運用成績公表は7月上旬に実施されていたが、2016年は7月10日に参院選の投開票があったため、巨額損失問題が投票に影響を及ぼすことを恐れた安倍政権は、公表を選挙後の7月29日まで遅らせたのだ。
先日も、来日したトランプ大統領が“参院選後には農業と牛肉で大きな数字が出る”と述べたように、安倍首相がアメリカから迫られている農産物の関税大幅引き下げを拒否するのではなく、選挙後には妥結すると“密約”を交わしていることが発覚。これも自らの選挙のためだけに国益を売り渡すという、国民を騙す背信行為だ。
その上、今度は、年金給付額が下がるという重大事を、選挙が終わってから公表しようとする──。完全に、党利党略のための権力の濫用ではないか。
安倍自民党は97日連続で審議拒否中!年金問題と消費増税の追及を恐れ
しかも、安倍政権の“国民騙し作戦”はこれだけではない。国会では衆参で3月から予算委員会が開かれておらず、野党が要求しつづけている集中審議を与党が拒否。立憲民主党・蓮舫議員のツイートによると、昨日おこなわれた参院予算委員会の理事懇談会では、〈「どんなに努力しても結果に至らない」と、自民筆頭から党執行部を説得できないため与野党の筆頭間協議が整いません、との発言〉があったという。その結果、衆院では6日現在でじつに97日も予算委員会が開かれない状況に陥っている。
無論、自民党が予算委員会の審議を拒否しつづけているのは、選挙を前に、安倍首相にとって「不都合な事実」が続々とあきらかになっているからだ。3月分の景気動向指数の基調判断が最悪の「悪化」まで引き下げられ、3月の「毎月勤労統計」調査の速報でも実質賃金が前年同月比マイナス2.5%と大幅下落した。このような状況でほんとうに秋に消費増税を実行するのかという問題は重大事であることは間違いない。
そして、ここにきて金融庁の報告書案が国民に突きつけた「年金の給付水準は下がる」「年金が減るから老後のために2000万円を資産運用して貯めておけ」という事実──。さらにここでそうした年金危機を裏付ける「財政検証」の結果が公表されて予算委員会で集中審議がおこなわれれば、消費増税と年金問題で、安倍首相は野党から徹底的に追及を受けることになるのは必至だ。
とりわけ年金問題は、安倍首相にとって第一次政権時に「消えた年金」問題で支持率を落としたトラウマがある。何が何でも国会追及から逃げたくて仕方がないのは想像に容易い。
身勝手な自己保身と党利党略のために、消費増税と年金という国民の生活に直結する問題が議論されず、有権者を欺いて「不都合な事実」を選挙後まで隠蔽しようとする。逆に言えば、すべてをあきらかにすれば選挙に大打撃を与えるということを、安倍首相はよく理解しているのだ。
安倍首相がいま、何から逃げ、何を隠そうとしているのか。そこにこそ、投票の判断材料として国民が知るべき事実がある。(編集部)
金融庁「資金形成報告書」ネガ文言削除で年金破綻ひた隠し
日刊ゲンダイ 2019/06/06
国民から不都合な真実を隠したつもりか――。金融庁が3日に公表した老後の資産形成に関する報告書「高齢社会における資産形成・管理」。先月22日に指針案が明らかになると、ネット上で<自助に期待するなら年金徴収するな>――と大炎上したシロモノだが、問題はそれだけじゃない。
ナント、報告書(新)と指針案(旧)を見比べると、年金に関する記述が大きく異なっているのだ。少なくとも4カ所でネガティブな文言が削られている。
①<公的年金の水準が当面低下することが見込まれていることや退職金給付額の減少により>(旧) ⇒ <公的年金とともに老後生活を支えてきた退職金給付額は近年減少してきている>(新)
②<公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク>(旧) ⇒ <公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動>(新)
③<年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい>(旧) ⇒ →<年金制度の持続可能性を担保するためにマクロ経済スライドによる給付水準の調整が進められることとなっている>(新)
④<公的年金の水準が、中調(原文ママ)的に低下していく見込み>(旧) ⇒ <公的年金の水準が、今後調整されていく見込み>(新)
文言を変えた理由について、金融庁は「審議会で個人の資産管理や金融サービスのあり方を主に話し合ってきたので、公的年金を正面から議論してきたわけではないから」と回答。要するに、国民の関心を年金の先細りという話ではなく、資産運用に向けるように“細工”したというワケだ。
年金や退職金だけでは老後を暮らせないという理由で国民に「自助」を求めておきながら、年金が“目減り”している現実をヒタ隠しにしようなんて虫がよすぎる。
「『年金がアテにならなくなる』と言ったのは、どこの誰だと言いたくなりますね。金融庁の調べによると、昨年3月時点で投資信託の顧客の約46%が損をしています。つまり、投資で損した人がどれだけいるか分かっているのに、民間の金融機関を指導する立場の『親方』が投資による資産形成を呼びかけているのです。こんなおかしな話はありません」(経済ジャーナリストの荻原博子氏)
年金はいずれ破綻する――。政府が隠そうとすればするほど、ごまかしたいホンネが浮かび上がってくる。