2019年6月17日月曜日

17- 自民党政権を変えないと年金問題は解決しない

 95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要とする金融庁試算について安倍首相10日の参院決算委で「不正確であり、誤解を与えるものだった」と述べました。
 なるほど、2000万円が不足するのは現時点で夫婦で月額約21万円の年金収入のある人の話で、いま41歳未満の人たちは3600万円が不足するのですから、2000万円が独り歩きするのは不正確と言えます(勿論首相はそんな意味で言ったのではありませんが)。
 また最初のところしか読んでいない麻生財務相は、「国民に不安を与えるから」として報告書の受け取りを拒否しましたが、そんなことで済む話ではありません。(^○^)
 
 隠蔽と捏造を旨とする安倍内閣にとって参院選前に不都合な報告書が上がってきたことで大慌てをしたことは分かりますが、それを解決しようという姿勢を全く見せないのは一体どういうことなのでしょうか。
 
 いずれにしても安倍政権のようにひたすら逃げ回るのではなく、これを機会に真剣に対策を練る必要があります。
 しかし国会で共産党の小池晃氏が「大企業内部留保425兆円に中小企業並みの法人税の負担を求めれば4兆円、平等に所得税を上げれば3兆円出てくる」と提言したのに対して、「富裕層の税金を上げるだなんてバカげた政策だ」と答えたという安倍首相ではどうにもなりません。それこそ100年掛けても解決することは出来ません。
 そもそも歴代の首相や政府首脳は、仮に本心ではそう思っていたとしても、それを口にしないだけの教養は持っていたのですが、彼にはそれもなかったのでした。
 
 弁護士の猪野亨氏がこの問題を「新自由主義」という尺度で一刀両断にしました。恐るべき内容が語られていますが、そのままストンと腑に落ちる内容です。
 いずれにしても自民党政権のままでは  特に安倍政権のままでは、この問題は何も解決しないどころか一層悪化するだけです。一刻も早く退場させるしかありません。
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老後の2000万円貯蓄は新自由主義の発想
麻生大臣の報告書受け取り拒否は議論の拒否
自民党政権の転換しか年金問題は解決しない
弁護士 猪野 亨のブログ 2019/06/14
 人生100年時代を迎え、そのための老後のための自己資金は2000万円。これが我が国の年金制度の現状です。
 今の年金制度では現在の生活水準を維持できない、そのためには国民が2000万円の老後資金を蓄えておく必要があるということです。
 家一軒が買えてしまうだけの額ですが、こんなに蓄えることはできません。
 ありとキリギリスのごとく、成人して働き始めたら、老後のためにとにかく貯蓄のために蓄えておく、そのためには倹約に倹約を実行していくしか、無理な額です。
 
自分の分は自分で働け!
 
 資本主義社会ですから、むしろ当たり前なのかもしれません。一昔前は、それこそ食べるために働いていわけです。それが国全体の生産性もあがり、電化製品やら車が当たり前のように保有できるようになり、一部の層は余暇も増えて旅行を満喫できるようにまでなりました。
 しかし、構造改革が叫ばれ始めた頃から国民の中に格差が広がり、低所得層が増加していったわけです。そうなるとまた一昔前に逆戻りです。食べるためだけに働くという時代です。
 しかも、最悪なことにこれまでの生産性の高さが生かされない時代となるので、今後はますます低所得層は増加していきますし、働いても食うに困る時代です。
 今の高齢者が日本で年金で生活ができた最後の世代ということになりそうです
 
 そのために安倍自民党政権が強調したいのが自己責任。特に新自由主義社会が行き着くところまでいけば、国に頼るなんてとんでもない、すべて自己責任だということになります。
 多額の年金を受け取ることができるのは大企業か公務員に限られます。
 これだって今後、どうなるのかは不透明なのですが、そうでない層の人たちは老後は生活保護で生きていけということに行き着きます
 
 その生活保護だって、今の水準を考えたらダメですよ。
 新自由主義の建前からいえば、国に頼るなんてとんでもないこと、ただ最低限のセーフティーネットは仕方ないから作ってやるが、そこでの最低限というのは食っていけるだけだからな、ということになります。
 新自由主義者からは、競争社会に負けた人(必然的に生じます)のためのセーフティーネットは不可欠のものというように言われることもありますが、新自由主義が人に優しい社会であろうはずがありません。あくまで恩恵です。生かしてくれるための最低限のものです。そこでいうセーフティーネットとはそのような意味です。
 今後の私たちの老後の社会は、2000万円貯められないような圧倒的多数の国民は、老後は生活保護に頼ることになるのですから、なおさら生活保護の水準は生きていける程度のものに引き下げられていくことになりますし、縮小再生産の下で、誰もが老後を生きているだけの社会になります。
 
 新自由主義社会のもとでは低賃金を追い求めて国外に生産がシフトされていくので生産性の向上が全く生かされない社会になりますが、労働が私たちの生活を支えるというものではなくなってしまっています。
 
 そういえば国は「副業」を推奨していました。ここでいう「副業」とは投資系ばかりのことで、こんなものはギャンブルと一緒で生産性とは全く無縁のカネ転がしです。
 「副業」というから朝はまず新聞配達でもやってとか、あるいは夜間はコンビニでとかということではなく、カネ転がしというのでは、どこぞの公務員が競馬で大儲けしていたという構図と全く変わりません。
 年金が破綻した発想と全く同じです。
 
 他方で、高齢であるというだけで働かなくていいなんていう時代でもありません。70歳まで働けと言われると一体、いつまで働かせるんだという声も聞こえてくるのですが、70歳に至ってもお元気な方は多数です(でも免許の保有を継続するかどうは考えてください)。社会の中で生きていくということはそういうことでもあります。
 働くというのは生産性を支えるためにこそ生かされなければなりません。2000万円が65歳までに貯まっていなくたって労働によって生きていける社会を作らなければなりません。
 
 麻生大臣が金融庁の報告書の受け取りを拒否したということですが、あまりに子供じみています。
 この問題を真剣に議論すべきだという声がありながら、しかも誰もがこのままでは破綻するとは思っているのに自民党がこの議論ができないのは、国民の「自己責任」を貫徹させたいからです。
 企業応分の負担を求めることは新自由主義の貫徹からはNG。
 賃金引き上げも同じくNG。
 それで外国人労働者を搾取せよということに行き着いてしまっているわけですが、これはまさに悪循環も甚だしいものです。
 新自由主義をめざす自民党政権には絶対に改革などできません。だから安倍自民党はこの議論を拒否しているということです。
 自民党政権では私たちの老後は最悪です