イランが領空を侵犯したとして米国の大型の無人偵察機ドローンを撃墜(20日)したことへの報復として、米軍は20日夜に3か所への攻撃を予定していましたが、トランプ大統領は攻撃の10分前に中止を指示しました。
トランプ氏はその理由を「何人が死ぬかと聞いたら、軍の高官からは150人との回答があったので空爆が始まる10分前にやめさせた。無人偵察機の撃墜とは釣り合いがとれないからだ」とツイートしました。
釣り合わないのは空爆されるイランの方ですが、ロシアが参戦するまではシリア政府の意向を完全に無視して1万回以上も出撃したシリア空爆とは、今回は様相が異なっています。ロシア製のS-400防空ミサイルシステムなどが米軍にとって相当の脅威になっているようです。
櫻井ジャーナルの記事「米国のステルス無人偵察機をイランが自力で開発した防空システムで撃墜した衝撃」を紹介します。
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米国のステルス無人偵察機をイランが自力で開発した防空システムで撃墜した衝撃
櫻井ジャーナル 2019.06.21
アメリカ海軍の無人偵察機MQ-4C トライトン(RQ-4 グローバルホークのアメリカ海軍向けドローン)をイランの防空軍が6月20日に撃墜した。アメリカ側は公海上の空域で撃ち落とされたという表現でこの事実を認めている。
過去にはアメリカの無人機が捕獲されたこともあった。2011年12月のRQ-170をイラン領内に着陸させたのだ。この無人機もステルスだったのだが、電子的にイランが乗っ取り、着陸させたと言われている。
イラン側の説明によると、トライトンを撃墜したのは同国が独自に開発した防空システムのコルダド。トライトンはアラブ首長国連邦の基地を離陸、ホルムズ海峡の上空を飛行、イランに近づいていた。ステルス・モードだったという。イランがコルダドを公にしたのは6月9日。その能力をアメリカ海軍は確かめようとしたのかもしれない。
すでにアメリカはイランに対する戦争を始めている。経済戦争は兵糧攻めの一種だ。そうした中、アメリカは軍事的な圧力を強めてきたが、そのひとつの結果が今回の撃墜だと言えるだろう。アメリカが考えている以上にイラン軍の能力が高いことを証明したとも言える。
F-35戦闘機のステルス能力がアメリカが宣伝するほどではないのではないかという声を聞くが、トライトンがステルス・モードで飛行していたことが事実なら、アメリカのステルス技術そのものに対する疑問が高まる。
アメリカの統合参謀本部はイランへの軍事侵攻は無謀だと考えているのだが、マイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン国家安全保障補佐官を動かしているグループは戦争を望んでいる。その戦争でアメリカが崩壊することを気にしているとは思えない。
開戦を正当化するため、2003年にイラクを先制攻撃した時と同じことを今回もしているように見える。例えば、6月13日にオマーン沖で日本の国華産業が運行する「コクカ・カレイジャス」(パナマ船籍)とノルウェーのフロントラインが所有する「フロント・アルタイル」(マーシャル諸島船籍)が攻撃を受けたケース。
その直後にアメリカ中央軍は「コクカ・カレイジャス」から機雷を除去している「イランの船員」の様子を撮影したとする映像を公開しているのだが、国華産業の堅田豊社長は6月14に開かれた記者会見の席上、攻撃の際に乗組員が「飛来物」を目撃していたことを明らかにし、「間違いなく機雷や魚雷ではない」としている。アメリカ側の主張が「間違い」だということを明らかにしたわけだ。
アメリカの好戦派は世界を脅しているつもりなのかもしれないが、結果として、自らが「張り子の虎」であることを証明することになっている。