安倍首相は勇んでイランに出かけましが、トランプ氏からはものの見事に梯子を外され、ハメネイ師からは「トランプは話し合うべき相手ではない」と一蹴されたため、さすがに帰国後は大人しくしています。
現代イスラム研究センター理事長の宮田律氏は、首相のイラン訪問に関連して
「ペルシャ文化を誇るイランはロジックの国である半面、詩作大国でもある。事務的なやりとりではビクともしない。知識を披歴しつつ、ハートに訴える交渉が求められる国柄なのです」と語っています。
ここでいう知識とは文学的な教養に加えて、イランの近世史や地政学の知識を指していると思われますが、そのいずれについても安倍首相が持ち合わせていたとはとても思えません。
「くろねこの短語」氏は19日の党首討論を見て、安倍首相を次のように酷評しました。
「党首討論と言えば、初老の小学生・ペテン総理は『言いたいことを言い合って、相手をやり込めるのが討論』と勘違いしているもんだから、どんなに具体的な問いかけがあっても正面から答えようとしない。ていうか、答えられないんだね。
おそらく、相手の言葉を理解できていないのだ思う。だから、自分の言いたいことしか言わないというか言えないわけで、これを『かわし方が上手い』とおだてるコメンテーターがいるんだから呆れちまう」
党首討論の実態はまさにそれに尽きています。
LITERAは、安倍首相の発言のいくつかを速記録風に紹介しながら、「何を話しているのか意味がわかる人がいたら教えてほしい」と記しています。首相になってから6年半、毎回よくもまあ恥知らずにあんな党首討論や国会答弁を続けられるものです。
LITERAの労作を紹介します。
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安倍首相が党首討論で年金問題から卑劣な逃亡!
意味不明答弁で時間稼ぎ、「野党は年金枯渇に拍手した」とデマ攻撃まで
LITERA 2019.06.20
やっぱり、この男は年金なんてどうなったっていいと思っているのだろう。昨日19日、約1年振りとなる党首討論がおこなわれたが、安倍首相は野党党首の金融庁報告書をめぐる追及や年金制度の改革提案に対して、何ひとつまともな答弁をせず、ひたすらごまかし続けた。
たとえば、立憲民主党の枝野幸男代表が報告書問題の本質は国民の年金制度に対する不安であり、政府はその不安にきちんと向き合って根本的な解決策を講じるべきだという質問をしたのだが、安倍首相の答弁はこんな調子だった。
「先般の金融庁のワーキンググループの報告の問題点は何か、ということでありまして、枝野議員もすでに指摘をされましたように、平均値で見るのがいいのか、ということでございまして、ここに大きな問題があったわけでありまして、この報告書によるとですね、月々、年金生活者の方々が5万円不足する、いわば、5万円赤字であって、そしてそれは95(歳)まで生きれば、2000万円になるということからですね、大きな誤解が生じたわけでございますが、これには前提条件があり、前提条件としては、2500万円平均で預金があると。その預金のなかから5万円ずつを活用して生活をしていくということでありますが、平均値でございますので、2500万円預金があるということに、『そんなにないよ』と違和感を感じる方々もたくさんおられるのではないか、ということでありまして。大切なことは何か、と言えば、年金生活者の生活実態は多様でありまして…… (延々続く)」
何を話しているのか、意味がわかる人がいたら教えてほしい。いや、安倍首相自身も自分が何を言っているかわかってなかったはずだ。明らかに、わざと論点をずらし、意味のない説明を延々話し続けて、時間稼ぎをしていたのだ。党首討論は全体で45分しかないため、これを繰り返してやり過ごす作戦だったのだろう。
実際、他の質問に対しても同様だった。枝野代表は続いて低所得者の負担に配慮する「総合合算制度」の導入を政府に提案したのだが、安倍首相はそれには一切答えず、
「まず、高齢期において、生活を支えるものは、もちろん年金が大きな柱でございますが、基礎年金と厚生年金、あるいは企業年金等があります」といまさらすぎる年金制度の説明や、例の「正社員がこの6年間で150万人増えた」
などという自慢話を延々しゃべり続けた。
また、国民民主党・玉木雄一郎代表から「新しい財政検証をなぜ出さないのか」と追及を受けると、「まぁちょっと短くしますが、これは大切なことなんで」などと言いながら、今度は、マクロ経済スライドと財政検証について説明をはじめた。
「まさにマクロ経済スライドというのはですね、将来の、これは平均寿命の延伸、あるいはこれ被保険者の増減等を入れてですね、これ、あの、物価の上昇、あるいは賃金の上昇にはついていけないけれども、これはあの、マイナスに残念ながらなっていくわけでありますが〜」
「財政再検証につきましては、これ、5年に1度、おこないます。5年に1度、おこなう。で、この5年に1度おこなう、え〜、財政の再検証についてはですね、これは平均寿命とか出生率、そして支え手の増減も〜」
いまさら何を用語説明してるのか、と言いたくなるが、なんとこれが2分以上続く。そして、ようやく今回、財政検証を発表しない問題について触れたと思ったら、
「政治の状況等かかわらずですね、しっかりと専門家が出てきて、数値計算をしていく上での大切な検証でございますから、それを政治とはかかわらずですね、政治とはかかわらず、政局とはかかわらず、しっかりとですね、これは検証をしていただき、報告をしてもらいたい、このように考えております」
と、なんの答えにもなっていない官僚答弁を繰り返すだけ。今回の財政検証では、賃金低下で年金削減が避けられないことから、発表を参院選後に先延ばしにしているのは明らかなのに、完全にゴマカしてしまったのだ。
安倍「野党は年金積立金枯渇で拍手した」、実際は拍手していないのにデマ攻撃
さらにひどかったのが、共産党の志位和夫委員長の質問のときだった。志位委員長は、年収約1000万円を超えると保険料が増えない仕組みが問題だと指摘。マクロ経済スライドをやめて富裕層の保険料増額で「減らない年金」にすることを提案した。
ところが、安倍首相は、いきなりこう切り出したのだ。
「この議論でですね、たいへん残念なのは、先程の党首の議論でですね、年金の、いわば積立金が枯渇すると言ったとき、拍手が起こったことであります。私は、そういう議論はですね、そういう議論は、すべき、ではないですし」
志位委員長が質問しているのに、それには答えず、その前の玉木代表の質問のことを語り始めた安倍首相。しかも、その中身は完全なデマだった。
安倍首相の言う「積立金が枯渇すると言ったとき」とは、玉木代表が2017年の全要素生産性では、政府のシミュレーションでも「36年後に積立金が枯渇する」と指摘したことを指すと思われる。つまり、安倍首相はそのときに野党席から「拍手」が起きたとして、「年金積立金が枯渇することを喜ぶなんて、政府を批判したいだけという証明だ、なんと卑しい」と印象付けようとしたらしい。
本当に拍手が起きたとしても、枯渇を喜ぶような意味でないことは明らかだが、もっと唖然としたのは、そもそも野党席から拍手なんて起きていなかったことだ。
国会中継を見直すと、玉木代表が「いま総理がやるべきなのは、国民に、どういう年金の姿になっているのかを、正直に語る政治を実現することじゃないですか」などと語ったときに拍手が起きていたが、「積立金の枯渇」について言及したときは、何回中継を見返しても、小さなどよめきが起きただけで、拍手の音は聞こえてこなかった。
ようするに、安倍首相は、起きてもない拍手をでっちあげて、野党に対して印象操作をおこない、年金制度追及をごまかそうとしたのだ。
卑劣というか、これではデマで野党を攻撃しているネトウヨサイト以下と言ってもいいだろう。もし安倍首相が「嘘」という自覚がないとしたら、自分の都合のいいように事実をねじ曲げるサイコパスと言うしかない。
安倍首相の激怒で菅が金融庁と財務省に指示、「報告書を受け取らない」ことに
しかし、今回の党首討論で、こうした卑劣さ以上に問題なのは、安倍首相が年金問題とまともに向き合わず、じつは政府の共通認識だった「ほとんどの国民が老後、年金が不足する」という事実をなかったことにし、年金問題の解決を放棄していることだろう。
言っておくが、今回、野党は安倍政権の責任を糾弾しただけではない。安倍応援団の「対案がない」という攻撃を意識してか、年金制度の危機と向き合うことが重要だとして、解決策もきちんと提案していた。
ところが、安倍首相はまったくとりあわず、いつもの「民主党政権では〜」と民主党ディスをまじえながら、年金給付をどんどん減らせる「マクロ経済スライド」を続行する方針を強弁したのだ。
だが、それも当然だ。金融庁「老後2000万円」報告書への批判が高まって以降の「報告書をなかったことにする」政府のゴマカシ姿勢じたい、安倍首相がつくり出したものだったからだ。
19日の朝日新聞によると、年金問題の追及を受けた10日の参院決算委員会がおこなわれたその日、安倍首相は激怒。周辺に対してこんな言葉を吐いていたという。
「金融庁は大バカ者だな。こんなことを書いて」
そして、安倍首相の激怒によって首相官邸が動き、菅義偉官房長官が司令塔となって11日午前に金融庁と財務省に連絡。「報告書を受け取らない」という指示をしたというのだ。
官邸が「初期消火に失敗したら建物ごと燃やせ」、不都合な事実をなかったことに
しかも、この記事では、安倍官邸の異常さを物語る、こんな舞台裏まで明かされていた。
〈金融庁は当初、報告書の書き換えを申し出ていた。政権内には「『受け取らない』ではなく、『受け入れられない』でいいのでは」との意見もあった。
だが、官邸側は「初期消火に失敗したら建物ごと燃やすしかない」とし、問題に「ふた」をする判断をした。受け取り拒否を受け、自民党の森山裕国会対策委員長は「報告書そのものがなくなった」と強調。国会論戦を避け、参院選の争点外しを図った。〉
「建物ごと燃やせ」──。これは森友問題における「都合の悪い記述は改ざんすればいい」という態度とまったく同じ、不都合な事実はなかったことにするという、立派な隠蔽指示ではないか。
そして、この号令の結果、安倍政権は「報告書を受け取らない」「報告書はもうない」という姿勢に転換。18日には、野党からの質問主意書に「報告書を前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えたい」とする答弁書を閣議決定したのである。国民に不安が広がり、大きな問題となっているのに、「その話には答えない」などと堂々と閣議決定するような政権が、かつてあっただろうか。
まさに安倍政権は首相の号令のもと「建物ごと燃やす」という作戦に出た。しかし、都合の悪いことを「建物ごと」燃やされつづけて、そのあと私たち国民に残るのは一面の焼け野原だ。
「年金だけでは暮らせていけないことはわかっていたし」などと諦観するのではなく、いま真剣に制度自体を見直さなければ、国民は焼け野原に裸同然で放り出されることになってしまう。昨日、安倍首相が晒した安倍首相の無責任な姿を確認して、いま一度、それでいいのかと考えてみてほしい。 (編集部)