内閣府が17日に発表した2015年4~6月期のGDPは、物価の影響を除いた実質でマイナス0・4%、年率換算ではマイナス1・6%となり、14年7月以降3四半期連続でプラス成長が続いていたのが頓挫しました。
最大の理由はGDPの約6割を占める個人消費が0・8%減となったことで、中国の成長の頭打ちなどで輸出が4・4%マイナスになったことも影響しています。
円安と消費税アップで物価が上昇したのに、一般国民の賃金は伸びずでは消費が伸びる筈がありません。この基本的な状況は今後も持続する筈です。
安倍内閣の作戦で断行された昨年師走の総選挙では、自民党は安保法案などはおくびにも出さず “アベノミクス-この道しかない”を連呼して勝利しました。しかしその後はひたすら安保法案の成立に邁進するのみで、大企業の優遇策以外には経済の建て直しなどは何もしませんでした。
さすがにこの頃は「アベノミクス」や「トリクルダウン」などの欺瞞の言辞はもう口にしなくなりましたが、その代わりになるものは何もありません。政府はこのまま「無為」の政治を続ける積りなのでしょうか。
来年の参院選に向けていずれ補正予算が組まれるといわれますが、それで消費を煽るというのはもはや政策のうちに入りません。
植草一秀氏が言うように諸悪の根源は消費税の無謀なアップにありました。
財務省はもともと消費税アップ至上主義なので消費税アップを何よりも優先させますが、逆に放漫経営を改めて財政を健全化しようというような気持ちは全くありません。累進課税を強化し、大企業には正当な法人税を課して税収をアップさせるという意図もありません。
彼らにあるのは、消費税率が30%くらいになれば収支が改善されるという計算だけです。逆進性で知られる消費税を何の工夫もなく30%に上げるなどということはあってはならないことです。
植草一秀氏によれば、それでも企業収益の見通しは2016年3月期も増益基調が続き、要するに大企業は安泰ということです。
そして、もしも2017年4月の消費税再増税を強行するというのであれば、2016年7月の参院選では再増税問題が大きくクローズアップされると述べています。
そうなればそれを機会に「消費税のアップでは何も解決しないどころか、大企業や公務員を除く一般国民は破綻への道をたどるだけ」という認識が国民に定着することでしょう。
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4~6月期GDPマイナスでも「対策なし」
何が起きているの? その原因は?
THE PAGE 2015年8月17日
4~6月期のGDP(国内総生産)は予想通りマイナス成長となりました。比較的堅調と思われていた個人消費が低迷したことが主な要因です。この先、景気はどうなるのでしょうか。
内閣府が17日に発表した2015年4~6月期のGDPは、物価の影響を除いた実質でマイナス0.4%、年率換算ではマイナス1.6%となりました。
GDPがマイナス成長となった最大の理由は個人消費の落ち込みです。個人消費はGDPの約6割を占めており、経済全体への影響が極めて大きい項目です。個人消費は0.8%減となり、これが全体の足を引っ張りました。昨年後半から3四半期連続でプラス成長が続いていたのですが、とうとう消費にブレーキがかかってしまったようです。
消費者が財布の紐を締めているのは、春以降、生活必需品の値上げが相次いだことと関係がありそうです。昨年の11月頃から円安が加速しましたが、事業者の多くは最終製品への価格転嫁を避けていました。しかし、円安がさらに進行する状況となり、値上げに踏み切る事業者が増えています。
物価が上がっても賃金が上昇すれば購買力は落ちませんが、残念なことに賃金の上昇は物価に追い付いていません。厚生労働省が4日に発表した6月の実質賃金指数は前年同月比2.9%のマイナスですから、消費者の懐は寂しくなっています。同じ月の家計消費支出が前年同月比2.0%減になるのはある意味で当然の結果と考えてよいでしょう。
生活必需品が値上がりして家計を圧迫するため、それ以外の商品があまり売れず、一部の商品は値下げを余儀なくされています。値上がりする商品と値下がりする商品が混在しているため、物価全体はあまり上がっていません。日銀が掲げた2%の物価目標は事実上達成不可能な状況です。
この状態に追い打ちをかけたのが輸出の低迷です。中国の景気失速などから、4~6月期は思った程輸出が伸びませんでした。このため企業は国内の設備投資に対して慎重なスタンスを崩していません。
甘利経財相は、今回のマイナス成長は一時的なものであり「(現時点では)補正予算などの経済対策は想定していない」と発言しています。しかし、来年には参院選が控えていることや、安倍政権の支持率が急降下している現状を考えると、大型の補正予算を求める声が与党内から出てくることはほぼ確実でしょう。市場は、こうした景気対策をすでに織り込んでいるのか、17日の東京株式市場は前週末から約0.5%値上がりして一日の取引を終えています。
補正予算が組まれれば、その分だけ景気の浮揚効果はありますが、継続性はありません。7~9月期以降も消費が伸び悩むようであれば、景気の足取りはかなり重たいものとなるかもしれません。 (The Capital Tribune Japan)
GDP成長率マイナス転落と消費税再増税の中止
植草一秀の「知られざる真実」 2015年8月17日
2015年4-6月期のGDP速報が発表された。年率-1.6%のマイナス成長になった。
昨年4月に消費税大増税が強行実施された。その影響で日本経済は撃墜された。消費税大増税不況に転落したのである。
この不況から日本経済が小幅浮上した。その結果として、2014年10-12月期、2015年1-3月期がプラス成長になった。
消費税再増税を先送りすることを決定したこと、原油価格急落で、日本経済に大きな所得増大要因が付与されたこと、株価上昇が個人や企業の支出活動を活発化させたこと、などの要因によって日本経済が消費税大増税不況から抜け出すことができたのである。
さらに、中国人民元が対日本円で大幅に上昇し、中国人の購買力を大幅に増大させたことも影響した。日本を訪問する中国人が急増し、日本国内での消費活動を活発化させた。いわゆる「爆買い」と呼ばれる現象である。中国人の日本での消費が、日本経済に大きな支援要因になったのである。
日銀は「トリクルダウン」と言って、企業部門が潤えば、その利潤が労働者の所得に流れ込み、経済全体が拡大すると主張してきたが、このような経済循環は生じていない。
安倍政権は、大資本に対しては、不必要な減税を強行する一方、庶民に対しては消費税大増税を押し付け、社会保障支出を切り刻んでいる。経済の弱肉強食化を推進し、大資本の利益増大、富裕層の所得拡大だけを追求する。
また、財政危機と叫びながら、必要もない国立競技場に2500億円の巨費を注ぎ込む決定を下し、天下りのシロアリJSCの本部ビル建設のために47億円が投入される。
国立競技場建設計画の白紙撤回で62億円のお金がドブに捨てられる。
国民を大切にせず、米国、官僚、大資本、ハゲタカ、シロアリ、ハイエナのためだけに政治が運営されている。その結果として、GDP成長率は再びマイナスに転落しているのである。
マイナス成長の主因は、個人消費の低迷と輸出の不振である。一般消費者の消費が伸び悩むのは、労働者の所得が増えていないからだ。
2014年度の経済成長率は-0.9%に落ち込んだ。他方で上場企業の経常利益は増大して、これが株価上昇に要因になった。
経済全体がマイナス成長のときに、企業利益が増大しているということは、労働者の所得が減少していることを意味する。庶民の懐は冷えて、そこに消費税大増税の拷問が加えられる。他方で、大資本は減税の恩恵を受けて企業収益を増大させる。
まさに、弱肉強食を絵に描いたような政策が実行されているのだ。
他方、中国では大暴騰した株価が反落に転じた。この結果、中国の経済情勢に変化が生じている。中国経済の減速は、日本の輸出を減少させる要因になる。このために、2015年4-6月期のGDP成長率はマイナスに転落してしまったのである。
それでも、企業収益の見通しは、2016年3月期も増益基調が続くと見込まれている。
だから、株式市場には強い影響も表れていない。
しかし、この局面で日本の主権者が考えなければならないことは、こうした弱肉強食推進政策=大企業を優遇して、一般労働者を虐げる経済政策を、今後も維持することが適切であるのかどうか、ということだ。
これから問題になるのは、2017年4月の消費税再増税だ。
安倍政権と財務省は、2017年4月の消費税再増税を強行しようとしている。
シロアリを一匹も駆除せず、大資本には減税に次ぐ減税で恩恵を与えながら、庶民に対しては情け容赦なく、消費税大増税の拷問を加える。この路線を、日本の主権者国民が容認するのかどうか。2016年7月の参院選では、この問題が大きくクローズアップされる。
シロアリを一匹も駆除せずに、消費税を10%にすることなど、到底認めるわけにはいかぬ。この問題に焦点を当てるべき時機が到来している。
(以下は有料ブログのため非公開)