北海道の北海道大学、北海学園大学、札幌学院大学、北海道教育大釧路校の教員有志が、参院特別委員会で審議されている安全保障関連法案の廃案を求める声明を発表しました。
北星学園大学有志も声明を出す予定です。
北海道大学有志の声明を紹介します。
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安保法案:北海道の大学教員有志、廃案求める声明
毎日新聞 2015年08月18日
参院特別委員会で審議されている安全保障関連法案を巡り、北海道内の大学教員有志が、相次いで廃案を求める声明を発表している。北海道大の教員有志が発表した声明では「この法案は日本が他国の戦争に参加できるようにするためのものだ」と訴え、賛同者を募っている。
同声明は、集団的自衛権の行使を容認する2014年7月の閣議決定について、「憲法違反」と指摘した上で、「憲法学をはじめとする学問的蓄積を無視し、歴史的な成果である民主主義と立憲主義を軽んじている」と安倍政権を批判している。20人の教員が2日、呼び掛け人となり、インターネット上で声明を発表。18日までに約240人の教員が賛同している。
呼び掛け人の一人である北大大学院文学研究科の宮内泰介教授は「(戦争放棄を掲げる)憲法9条を踏まえると、安保法案は論理的に破綻している。事実を探求する研究者、教育者として声を上げる必要があると考えた」と説明する。
また、道内では北海学園大や札幌学院大、北海道教育大釧路校でも教員有志が廃案を求める声明を発表。北星学園大有志も声明を出す予定。
15日に公表された北海学園大の声明には、同大全教員の約3分の1に当たる84人が賛同。法案が衆院を通過した際、安倍政権が強行採決したことに触れ、「民主的な手続きにもとる」と批判した上で、「安保法案は武力行使に対する歯止めが不十分」と指摘している。【山下智恵】
安全保障関連法案の廃案を求めます
北海道大学で研究と教育に従事する私たちは、安全保障関連法案の廃案を求めます。
集団的自衛権の行使容認は、明らかな憲法違反です。安倍内閣が、憲法学をはじめとする数々の学問的蓄積を無視し、また、人類の歴史的な成果である民主主義と立憲主義を軽んじていることに、私たちは深刻な懸念を抱いています。
この法案は、日本が他国の戦争に参加できるようにするためのものであり、日本の若い世代の命を危険にさらすものです。同時に、米国等が「敵」とみなした国の無辜の人びとの命をも脅かす可能性をはらむものです。無数の住民を殺害したイラク戦争は、「大量破壊兵器の存在」を口実に、米国が一方的に仕掛けた不当な戦争でした。しかし、日本政府はこの戦争の不当性をいまだ公式に認めていません。この法案が成立すると、これまで米国に追従してきた日本は、米国主導の不当な戦争に本格的に参戦する恐れがあります。私たちはそれを認めるわけにはいきません。
この法案は、武力で平和が達成できるとの前提に立っています。対立する相手を「敵」と決めつけ、武器を構えると、相手はさらに強力な武器を構えるでしょう。20世紀の二つの世界大戦と冷戦期の軍拡競争はそのように起こりました。それがどれほどの惨禍を巻き起こしたのかは歴史をひもとけば明らかです。
本当の平和は対話によってこそ生まれると私たちは考えます。そこで必要になるのが知性です。歴史を知り、相手の立場を知り、自己批判をいとわず、しかし言うべきことは言い、時間をかけて共存できる関係を築くこと。軍事力の増強ではなく、「対話の場」の構築に資源を注ぎ込むべきです。いまこそ「軍事による安全保障」から「対話による安全保障」への転換が求められています。
大学は知性を磨き、高める場です。知性を敵視した戦前戦中の日本政府は、軍機保護法、治安維持法などにより、知識人・大学人の言論の自由を弾圧し、私たちの先達が不当に逮捕・監禁されました。その中に北海道大学の宮澤弘幸(工学部生)、ハロルドとポーリン・レーン夫妻(英語講師)がいたことを、私たちは痛みをもって思い起こします。
今日の安倍政権も知性を恐れ、抑圧する道を歩み始めています。まず特定秘密保護法を強引に成立させて、市民が知る権利を制約しました。国立大学に国旗掲揚・国歌斉唱を求めるばかりか、文系(人文社会科学系)学部の廃止や見直しを求める通知まで出しました。そうした流れのなかで安保法案が出てきました。
私たちは愚かな歴史を繰り返さないために、安保法案に反対します。そして、隣人たちと平和な関係を築き、未来世代に希望ある社会を手渡すために、戦争を止める知性を、平和をつくる知性を求めつづけます。
2015年8月
(呼びかけ人・賛同人の名簿は省略します)