「映画人9条の会」の発足に触発された笑いのプロたちが「芸人9条の会」を立ち上げました。
落語家の古今亭菊千代さん(59)の呼びかけに約20人が賛同し、9月5日には浅草で旗揚げ公演が開かれます。
芸能界では、他にも4人組「SPEED」の今井絵理子さん、笑福亭鶴瓶さん、SMAPの中居正広さん、長渕剛さん、タレントのSHELLYさん、女優の渡辺えりさん、演出家の鴻上尚史さんなどが、それぞれ「安保法案反対」を表明しています。
普通、芸能人は人気の点で不利になるため、政権批判はもちろん政治的な話題はまず口にしませんが、前記の人たちは覚悟を持って安保法案に毅然と反対しました。
老若男女に幅広い人気があるタレントたちだけに、世間に与えるインパクトは大きいものと考えられます。
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今こそ「芸人9条の会」 安保法案「黙ってられぬ」
東京新聞 2015年8月22日
他国を武力で守る集団的自衛権を柱とする安全保障関連法案が参院で審議される中、落語家やコメディアンら笑いのプロが、憲法九条を守ろうと「芸人9条の会」を立ち上げた。政治的発言がタブー視されがちな芸能界だが、安保法案審議に「黙っていられない」と感じる芸人も少なくなく、落語家の古今亭菊千代さん(59)の呼びかけに約二十人が賛同した。九月五日には東京・浅草で旗揚げ公演を開く。(神野栄子)
女性真打ち第一号の菊千代さんは、約十年前から「9」と刺しゅうを入れた着物で高座に上がるほど、九条への思い入れが強い。映画監督らでつくる「映画人九条の会」などができたのを知り、「芸人の世界にないのはおかしい」と発奮。自身のフェイスブックなどで「芸人9条の会」の結成を呼びかけた。
第一次安倍政権で改憲への動きが強まったのに危機感を抱き、二〇〇六年、「九条落語」を発表。古典落語の中でも、安倍政治をチクリと一刺しするなど、笑いの中に平和のアピールも潜り込ませている。「黙っていたら何も言えなくなる」と危ぶむ。
いち早く同調したのが、政治風刺コントなどで知られる松元ヒロさん(62)。歴代首相の物まねパフォーマンスが人気だが、最近は擬人化した日本国憲法になりきる「憲法くん」が話題だ。憲法の来歴や九条の置かれている状況をせりふとギャグを交えて表現する。
上演のたび、こうしたパフォーマンスが不要な世が来ることを念じてきたが、「雲行きが怪しくなってきた」。最近は憲法を考えるイベントなどでの上演依頼が舞い込み、「国会審議が進んでも諦めず、最後までみんなの代弁者として芸で訴えたい」と語る。
九月五日の旗揚げ公演には二人のほか、弾き語りなどで風刺を利かせる趙博(チョウバク)さん、シンガー・ソングライターでもある芸人オオタスセリさんが出演。午後二時開演、東京・浅草の雷5656(ゴロゴロ)会館・ときわホールで。問い合わせはオフィスキクチヨ=電03(3642)9333。
◆芸人9条の会メンバー
オオタスセリ(お笑いタレント)、岡大介(たいすけ)(三味線・演歌師)、おしどりマコ&ケン(お笑いコンビ)、恩田えり(寄席囃子(はやし))、桂文福(落語家)、古今亭菊千代(落語家)、趙博(ミュージシャン)、露の新治(落語家)、林家彦いち(落語家)、松元ヒロ(コメディアン)、中山千夏(タレント)、河内亭九里丸(漫談)、亀田雪人(サーカス芸)、神田香織(講談師)、ジョニーH(歌手)、マジカル・パワー・マコ(音楽家)、幸野&鬼嫁(三線フォークデュオ) (敬称略、21日現在)
鶴瓶やSMAP中居も 芸能人「安保反対」大合唱のインパクト
日刊ゲンダイ 2015年8月22日
ひょっとしたら、これがトドメになるのではないか。芸能界から公然と安保法案反対の声が上がり始めている。
衝撃を与えているのは、4人組「SPEED」の今井絵理子(31)が終戦記念日にツイッターで発したこの発言だ。
「今の日本の流れを拝見すると、どこかプチ戦争なら賛成!みたいに見えるのはわたしだけでしょうか?」
SPEEDは90年代後半にミリオンセラーを連発した人気グループだ。今井の発言を受けて、30~40代のファンを中心に「安保法案NO」の声が急速に広まりつつある。
笑福亭鶴瓶(63)の発言も強烈だ。今月、フジテレビ系列の東海テレビの番組に出演した際、安保法案について「絶対あかん」と一刀両断。「だいぶアメリカに乗せられて、後方支援、後方支援と言っているけれど、せんでええねん。したらあかん」「今の政府がああいう方向に行ってしまうのを、止めなくてはダメ」と主張した。
さらに、SMAPの中居正広(43)である。今月2日に高校生ら5000人が渋谷で安保法案反対のデモを行ったことについて、フジの番組で「若い子が声を上げるのは、ぼくはいいことだと思う」と評価し、「この70年間、日本人って戦地で死んでいないんですよ。これってやっぱり、すごいことだと思う」と語った。
3人のほかにも、長渕剛、タレントのSHELLY、女優の渡辺えり、演出家の鴻上尚史らが「安保法案反対」を表明している。芸能評論家の肥留間正明氏が言う。
「人気商売である歌手やタレントにとって、ファンを失うリスクがある政治的発言は“タブー”とされています。だから、よほどの“大御所”かベテランでもない限り、芸能人は政権批判はもちろん、冗談でさえ政治的な話題を口にしません。ところが、鶴瓶やSPEEDの今井は、安保法案に毅然と反対しました。彼らなりに覚悟を決めて言葉を発したのでしょう。老若男女に幅広い人気があるタレントだけに与えるインパクトは計り知れません」
不利益を被ることを承知の上で発した“覚悟の発言”だけに重みがある。若者たちの反対デモはますます盛り上がり、「安保法案NO」の動きはどんどん強まりそうだ。