2015年8月18日火曜日

安倍談話が米政府筋に激賞された訳は・・・

 安倍談話については、中・韓は言うに及ばず、英・独・仏それに米紙もそれぞれの立場で批判していますが、ひとり米政府筋だけは、(安全保障会議⇒)「日本は平和、民主主義、法の支配に対する揺るぎない献身を行動で示しており、すべての国の模範」(ロイター)、(ホワイトハウス高官⇒)「極めて高く評価」(産経新聞)、(米戦略国際問題研・日本部長⇒)侵略や植民地化への言及や反省に関する表現は予想以上に力強かった」(産経新聞)などと、歯の浮くような誉めぶりです。
 アメリカの政府筋がこんなに手放しで日本政府を持ち上げるのは異例のことです。
 
 上智大学教授の中野晃一氏は安倍談話について、村山談話が主として中韓をはじめとしたアジア諸国に対して出されたものであったのに対して、安倍談話はアメリカに向けて出されたものだと述べています。
 そういわれてみると上述のアメリカの反応が良く理解できます。
 
 またそういえば安倍談話が出されたときに、それは事前にアメリカのチェックを受けたものだと指摘した人がいました。
 
 はじめに関係するロイターと産経新聞の記事を紹介し、その後に中野氏の連続ツィッターを紹介します。
 
「日本はすべての国の模範」、米が戦後70年談話歓迎
ロイター通信 2015年8月14日
[ワシントン 14日 ロイター] - 安倍晋三首相が発表した戦後70年談話について、米国家安全保障会議(NSC)は14日、歓迎する意向を表明した。
 
ネッド・プライス報道官は「戦後70年間、日本は平和や民主主義、法の支配に対する揺るぎない献身を行動で示しており、すべての国の模範だ」とした上で、世界の平和と繁栄への貢献を首相が約束したことを評価。「安倍首相が、大戦中に日本が引き起こした苦しみに対して痛惜の念を示したことや、歴代内閣の立場を踏襲したことを歓迎する」と述べた。
 
 
戦後70年談話 子や孫のため「謝罪外交に終止符」 安倍首相が肉筆に込めた思い
産経新聞 2015年8月16日
(一部抜粋)
米は高く評価 「表現、力強かった」
 談話発表が14日早朝だった米ワシントンの日本大使館では大使、佐々江賢一郎らが手分けして国務省やホワイトハウスの高官に談話の中身を説明した。米側は極めて高く評価した。
 米戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部長、マイケル・グリーンも「侵略や植民地化への言及や反省に関する表現は多くの人が予想した以上に力強かった」と語った。米国内には安倍について「国家主義者」か「現実的な戦略家」かの論争があったが、グリーンは今回の談話は安倍が後者であることを示すものだと強調した。
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村山談話と安倍談話の根本的な違いは、実はかなり簡単に説明できます
中野晃一上智大教授 ツィッター  2015年8月16日
安倍談話発表の直前に、外務省のウェブサイトから歴史問題に関するページが削除されていたことがわかった。 http://t.co/6yHru1VY2d #FNN
>Richard Smart Japan's foreign ministry deletes page explaining apologies for WWII actions. 
 
村山談話と安倍談話の根本的な違いは、実はかなり簡単に説明できます。
それは、村山談話が主として中韓をはじめとしたアジア諸国に対して出されたものであったのに対して、安倍談話がアメリカに向けて出されたものだということです。
安倍談話の構造は、米国議会演説で用いられたものと全く同じで「生まれ変わった(born-again)罪人」に日本をなぞらえるもの。
 
道を誤り、アメリカ主導の国際秩序の挑戦者となった日本が、敗北し許され、今やアメリカに従い「積極的平和主義」を掲げ国際秩序を支える、という「物語」。
ここでの「罪」が、植民地支配や侵略そのものではなく、アメリカに刃向かったことであることがキモとなっているわけです。
 
だから、中韓をはじめとしたアジア諸国に対する植民地支配や侵略戦争の責任や謝罪という観点から見ると、安倍談話は村山談話から大幅に後退した無残なものとなっていますが、アメリカの政策関係者が喜ぶような「物語」としてはなかなか完成度の高いものとなっています。
 
それもそのはず、村山談話の下書きをしたのは谷野作太郎ら外務省アジア畑の系譜でしたが、今回安倍談話の有識者懇談会はアメリカ通ばかりで中国研究者はただ一人、韓国研究者はゼロでした。
 
安倍談話の下書きもワシントン直結の人脈でした。
はっきり言えばこういうことです。
安倍談話は、安倍が安保法制整備強行、TPP推進、辺野古移設強行、AIIB見送りなど、アメリカに尽くしに尽くすことのバーターとして許された範囲内の歴史修正主義の産物であり、アジア諸国との和解は一切念頭にないということです。
ここ20年間で、日本の外交安保が完全に対米追随一本槍に先細ってしまったことを示しているわけです。