2021年5月12日水曜日

12- 高橋洋一・内閣参与が日本のコロナ感染者数を「この程度のさざ波」と

 内閣官房参与の高橋洋一氏は9日、ツイッターに、インド、カナダ、ドイツ、イタリア、アメリカ、イギリスそれに日本の各国の新型コロナウイルスの感染者数のグラフとともに、「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと 笑笑」と投稿しました。
 9日時点の日本人の死者の累積数は1万872人と膨大です。死者の数は、上記の各国と比べれば確かに少ないにしても、ニュージーランド、オーストラリア、中国、台湾などと比べれば人口あたりの死者数は日本のほうが断然多いという関係です。
 それにしても「笑笑」とは異様な表現で、自分の肉親や親しい知人が亡くなってそう書けるのでしょうか。
 加藤官房長官は10日午前の記者会見で。「政府として一つ一つコメントは差し控えさせていただく」と述べ、参議院予算委の集中審議で問われた菅首相は、「高橋氏個人の主張について、私から答弁することは控えるべきだと思う」として、いずれも見解の表明を避けました。
 しかし高橋氏は菅首相が内閣官房参与に任命した公人であり、何を発言しても構わないという立場ではなく、「公人に相応しいのか」と問われればそれに答える責任があります。
 立民党の蓮舫代表代行は、記者団に対し「私は全く『さざ波』のようだとは思わない。内閣官房参与の立場にある人がSNSでこうした発信をしたのは信じたくないことだ」と語り、共産党の小池書記局長は、同じく、「多くの命が奪われ、みんなが苦しんでいる中で、この発言は絶対に許されない。菅首相は『個人の主張だ』などとコメントを避けたが、高橋氏は自身が内閣官房参与に任命した公人であり極めて無責任。発言を撤回し、謝罪させるのが最低限の責務ではないか(要旨)」と述べました。

 の高橋氏のツイートは当然ながら大きな批判を受けており、〈#高橋洋一内閣官房参与の更迭を求めます〉というハッシュタグは5万以上リツイートされているということです(10日AM2現在)。
 LITERAは、高橋氏は財務省出身の経済評論家でバリバリの新自由主義者菅政権の新自由主義路線を象徴する一人で、あのツイートは菅首相にも共通する棄民思想と断じました。
 以下に紹介します。
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内閣官房参与の高橋洋一が日本のコロナ感染者数を「この程度のさざ波」「笑笑」と暴言ツイート…菅首相にも共通する棄民思想
                       野尻民夫 LITERA 2021.05.10
 国民の命と健康を軽視しているとしか思えないおざなりコロナ政策を連発している菅政権だが、その人命軽視ぶりを証明するようなとんでもないツイートを内閣官房参与がおこなっている。
 内閣官房参与を務める高橋洋一氏が、昨日5月9日ツイッターで、国別の100万人あたりのコロナ感染者数を示すグラフの画像とともに、こうツイートしたのだ。
日本はこの程度の「さざ波」。これで五輪中止とかいうと笑笑
 グラフは、インド、カナダ、ドイツ、イタリア、アメリカ、日本、イギリスを比較したもので、たしかにその比較では、日本は低水準で推移している。
 しかし、周知のとおり、日本でもすでにコロナによる死者は1万人を超えている。しかも、現在大阪では医療崩壊状態で、多くの人が適切な治療を受けられず、毎日のように数十人の死者が出ている。にもかかわらず「この程度のさざ波」などと評し、あげく「笑笑」と結び笑いネタのように扱うとは。言っておくが、高橋氏は菅政権の内閣官房参与だけでなく、大阪市の特別顧問も務めていた。
 人数の多寡にかかわらず、そもそも死者が出ている問題について「この程度のさざ波」とか「笑笑」とか平気で言えるのは、高橋氏が人命そのものを軽視しているからにほかならない。
 それに高橋氏のこのツイートは倫理的な問題だけでなく、現実認識としても誤っているだろう。このグラフにはない、ニュージーランド、オーストラリア、台湾などと比べれば、人口あたりの死者数は日本のほうが断然多い。また、このグラフの右端を見れば日本の感染者数はイギリスを上回っている。ワクチン接種が進む欧米各国が低下傾向に入っているのに対して、ワクチン接種が遅れ変異株が猛威をふるっている日本では、これからまだ感染者数も死者数も増加していく途上にある可能性が高いのだ。
 高橋氏は財務省出身の経済評論家で、あの竹中平蔵氏とも関係が深いバリバリの新自由主義者。安倍政権時代から応援団として様々なメディアで政権擁護発言を繰り広げていたが、菅政権発足直後の昨年9月から内閣官房参与を務めている。菅政権の新自由主義路線を象徴する一人だ。
 コロナをめぐっては、日本のコロナ対応を成功と主張し、今年2月にも「6000人死んでると言うけど、たいした話じゃない」と発言したり(BS朝日『激論!クロスファイア』)、4月14日にも自身のYouTubeチャンネルにアップした動画で、大阪で新規感染者が超えていることについて「世界レベルから見ればさざ波」「ほとんど数字の誤差の範囲、世界から見ると」などと半笑いで語るなど、現実を見ず人命軽視の発言を繰り返してきた。

高橋洋一は内閣官房参与として、5月4日にも菅首相と会談 こんな人物が公職に就く恐怖
 高橋氏はつい先日5月4日にも菅首相と公邸で会談、「経済とコロナについて質問された」と明かしている。
 こんな人物を内閣官房参与に抜擢しアドバイスを求めるとはどうかしているが、しかし、これこそ菅首相の本質とも言える。菅首相は今年1月、「コロナはインフルエンザと変わらない」「普通の病気と同じように扱え」などと語ってきた大木隆生・東京慈恵会医科大学教授と会談。大木教授の「医療崩壊ということばが盛んに言われているが、97%、96%のベッドがコロナに使われず、一般の医療に使われており、余力が日本にはある。民間病院が、商売として『コロナをやりたい』と思うぐらいのインセンティブをつければ、日本の医療体制は瞬く間に強化される」などという話に、「久しぶりに明るい話を聞いた」とのんきな感想を語ったことがある。
 現実を直視せず、「コロナはたいしたことない」とトンデモ主張したり、1万人死者が出ても「さざ波」と笑うような人間を周囲に置く。こうした菅首相の姿勢が、菅政権のおざなりコロナ政策・棄民政策を生み出しているのではないか。
 高橋氏は2012年から橋下徹氏の肝いりで大阪市特別顧問も務めていたが、大阪の医療体制を脆弱化させた維新の新自由主義政策にも影響を与えてきた。
 今回の高橋氏のツイートは、当然ながら大きな批判を受けており、内閣官房参与更迭を求める声も上がっている。〈#高橋洋一内閣官房参与の更迭を求めます〉というハッシュタグは5万以上リツイートされている(10日未明2時現在)。前川喜平・元文科事務次官は〈高橋洋一内環官房参与を参考人で呼んで国会で真意を質すべきだ〉とツイートしていたが、その通りだろう。

 高橋洋一・内閣官房参与を追及するのはもちろん、この発言に関する菅首相の認識も問うべきだろう。 (野尻民夫)