2021年5月27日木曜日

インド株に日本なす術なし…感染スピードは英国株の3倍

 いま世界で行われているコロナのワクチンはインド株にも有効と言われる一方で、インド株の二重変異のうち「E484Q」は抗体をかわしワクチンの効果を低減させ再感染のリスクを高めるし、「L452R」は日本人の6割が持つ白血球「HLA-A24」の攻撃を逃れ感染力を高めるといわれます。 ⇒(5月1日)今ごろインドを変異株流行国に指定 … 政府は一体何を考えているのか

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広は、アジア諸国の感染者数が少ない要因とされてきた『ファクターX』がインド株に敗れた可能性があると述べています。
 かつて英国型変異株によりコロナ感染者数が最大1日6万人、死者数が最大1日1800人に上った英国は今や全成人の40%以上が2回目のワクチン接種を終え、直近1週間の新規感染者数は1日当たり平均2018人、死者数は6人に落ち着き、コロナ封じ込めに成功しつつあります
 その英国でも目下はインド株が英国株の3倍のスピードで拡大中で、インド株への危機感が強まっているということです英国でさえそうであれば、ワクチンの普及率がOECD中最下位で、体質的にインド株に弱いとみられる日本において今後インド株が急速に蔓延するのは時間の問題です。
 菅首相は海外でワクチンの普及でコロナが落ち着きつつあるのを見て、日本でもワクチンの普及を急げばこれまでのコロナ無策がカバーできると考えているようですが、ワクチン接種の実施が余りにも遅かったので、とてもインド型コロナの蔓延防止に間に合いそうもありません。
 そもそも菅政権は英国株の水際作戦で完全に失敗していながら、インド株でも全く同様に失敗しました。その無様さは政権の無能さを示しています。
 ワクチン接種を急ぐことで全ての失政が取り戻せるというのは甘い考えです。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
インド株に日本なす術なし…感染スピードは英国株の3倍
                          日刊ゲンダイ 2021/05/25
 ロックダウンの一部緩和を進める英国で、新型コロナウイルスのインド株への危機感が強まっている。日本は水際対策に失敗し、ワクチン接種はいまだに低空飛行中だ。インド株という新たな脅威を前に、手を打つのが遅すぎる。
                ◇  ◇  ◇
 英国は今や、コロナ封じ込めの「優等生」になりつつある。全成人の40%以上が2回目のワクチン接種を終え、23日までの直近1週間の新規感染者数は1日当たり平均2018人、死者数は6人。感染者数が最大1日6万人、死者数同1800人から一気に抑え込んだ。その英国が、いま直面しているのが、世界40カ国以上に広がったインド株の感染力だ
 英国保健省公衆衛生庁(PHE)が発表した「英国内で懸念される変異株と調査中の変異株」と題された報告書(22日公表)によると、2月1日から5月18日までの国内の検体データを調べたところ、5月10日にインド株が約50%を占めた。3月末時点では、ほぼ0%だったから、約1カ月でウイルス株の半分がインド株に置き換わったことになる。
 どれほど驚くべき速さか、英国株の広がり方と比べるとよく分かる。英国株は約半年で国内の感染事例の98%に達した。単純に考えれば、約3カ月で50%である。インド株は1カ月で50%だから、英国株よりも3倍速いスピードで取って代わっているのだ。

感染爆発にワクチン接種追いつかず
 実際、インド株の感染力はズバぬけて強い。英国株は従来株の1.3倍といわれるが、インド株は、その英国株の1.5倍との指摘もある。
 インド国内の死者が右肩上がりになり始めた4月1日から、隣接国のバングラデシュとネパールでも死者が急増。24日までに1.35倍(バングラデシュ)、2.09倍(ネパール)も増えた。アジアでも死者が続出しているのだ。
 すでにインド株の流入を許してしまった日本も、後を追いかねない。英国はインド株の流行前にワクチン接種が進んだが、日本はワクチン接種が感染爆発に追い付かない恐れがあるからだ。
 24日から高齢者向けの大規模接種が始まったものの、政府の完了見込みは7月末。一般市民が打ち終えるまで、「来年3月までかかる」(政府関係者)との見方も出ている。英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、日本の接種率は世界平均9.54%を大きく下回る4.37%(20日時点)で、OECD加盟37カ国中ワーストだ。
 ワクチンを2回打てば、インド株に対しても、かなり効果があるという。しかし、日本は、インド株に対していわば丸腰なのだ。
 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏がこう言う。
「アジアは欧州に比べて感染率が低かったにもかかわらず、インド株の登場により、インドは欧州並みの感染率になりました。アジア諸国の感染者数が少ない要因とされてきた『ファクターX』が、インド株に敗れた可能性があります。英国がインド株に置き換わりつつあることを踏まえると、ワクチン接種の遅い日本でも大流行する恐れがあります。人口の4~5割が接種していれば、感染爆発を防げるでしょうが、今の接種ペースではインド株の感染力に追い付きません
 ウイルスは、ワクチンを打ち終えるまで待ってはくれない。インド株が猛威を振るう“時間切れ”は、すぐやって来る。