2021年5月25日火曜日

高須院長のリコール不正をめぐる矛盾に満ちた言動を改めて検証

 19日、大村愛知県知事に対するリコール運動をめぐる不正署名事件でリコール運動団体の事務局長田中孝博氏ら4人が逮捕されました。今後全容が解明されることが期待されます。

 リコール団体の会長を務めた高須・クリニック院長は、署名の不正が明らかになった時点で、「自分は単に河村名古屋市長に担がれただけなので、詳しいことは何も知らない」と語っていました。それで多くの人たちはその様に受け止めたのでした。
 LITERAはそれでは説明がつかないことだらけで、逆に全てを知っていた筈であるとする記事を出しました。
 毎日新聞は21日、田中事務局長が20年10月下旬ごろ、周囲に「佐賀でのこと(アルバイトに署名簿の偽造作業をさせたこと)は高須さんも知っている」と話していたと報じました。もしもそうであれば話は全く違ってきます。
 LITERAが高須氏のこれまでの諸々の不可解な言動を明らかにし、彼が当初からほぼ全てを知っていたとすれば説明がつくと解明しました。
 そうすると河村・名古屋市長が何も知らなかったということにも疑念が生じます(さらには維新の会代表の松井・大阪市長や副代表の吉村・大阪府知事の関与も)。
 LITERAの記事を紹介します。
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秘書の指印まで発覚…高須院長のリコール不正をめぐる矛盾に満ちた言動を改めて検証する!「責任は僕に」と言いながら…
                             LITERA 2021.05.23
 愛知県の大村秀章知事に対するリコール運動をめぐる不正署名事件。19日、「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」の田中孝博事務局長らが逮捕されるという大きな動きがあったが、ここにきて、団体代表としてリコール運動を主導してきた高須クリニック・高須克弥院長の関与を示唆する新事実が次々出ている
 20日には、高須氏の秘書が昨年10〜11月、署名に押印のない署名簿に指印したことを中日新聞が報道。さらに21日、田中事務局長が、佐賀県佐賀市で署名簿の偽造作業が始まったとされる2020年10月下旬ごろ、「佐賀でのことは高須さんも知っている」と周囲に話していたとことがわかったと、毎日新聞が報じたのだ。
 田中事務局長の話については、高須氏は「まったくの嘘」と反論しており、どちらが真実か現段階で結論づけることはできないが、秘書の指印については紛れもない事実であり、高須院長の責任は非常に重大と言っていいだろう。
 高須氏は秘書の不正関与について、「数百人のなかの一人」とまるで何も知らず動員されただけのアルバイトか何かくらいに話しているが、少なくとも高須氏の秘書の1人はこの運動でもっと中心的な役割を果たしていた
 高須氏は、S氏という秘書について、昨年12月19日に、こんなツイートをしている
〈僕の秘書です。代表請求者です。自由に動けない僕に代わって情報収集をさせています〉
〈彼女は僕のスケジュール管理と情報収集が主たる業務です。愛知県医師会公認のメディカルセクレタリーでもあります。僕の必要とする情報を集めてくれています。大村秀章愛知県知事リコール代表請求者のNo.4です。有能です。〉(原文ママ)
 そう、高須氏はまさに自分の秘書を「情報収集担当」「請求代表者」として署名運動に送り込んでいたのである。不正に関与していた秘書がS氏かどうかはいまのところわかっていないが、S氏とは別の秘書だとしても、S氏に情報が上がる仕組みにはなっていたはずだ。
 しかも、高須氏の秘書なら、代筆と説明された佐賀のアルバイトとは違って、他人の署名に別人である自分の指印をするのが問題であることくらいわかるはず。高須氏に一切報告せず単独行動で署名作業に加わるなんてことがあり得るだろうか。
 それどころか高須氏は4月になって報告を受けたと言っているが、不正が明るみになって数カ月も経つ4月まで、一切情報を上げないなど、普通は考えられない。

ボランティアが不正の可能性を指摘した直後に、健康問題を理由に運動の終結宣言
 高須氏はほんとうに4月まで、秘書の指印を知らなかったのか。いや、仮に秘書の指印の報告を受けたのが、ほんとうに4月だったとしても、なぜ5月20日、中日新聞に報じられるまで、一切公表せず黙ってきたのか。団体代表として、調査や説明の責任を果たすどころか、1カ月近くも隠蔽してきたことになる。
 このことからもわかるように、高須氏は「代表として責任は僕にある」などと口ではカッコつけているが、安倍晋三・前首相のよく言う「任命責任」と同じで、疑惑解明の責任も説明責任も果たしていないのだ。
 実際、高須氏の不審な言動はこれだけではない。とくに不正の疑いが指摘されるようになって以降、高須氏は、疑惑を払拭するどころか、まるで不正の解明を阻むような不可解な言動を取ってきた。
 今回の不正署名の可能性がはじめて指摘されたのは、愛知県内の大部分の地域で署名の提出期限であった昨年11月5日の前日、11月4日のことだった。
 リコールの会は、11月4日に署名簿を選管に提出するのだが、署名簿にナンバリングをしていないという事務的ミスがあり受け取ってもらえず、急遽ボランティアを集めナンバリング作業をすることになる。その作業のなかで、明らかに無効や不正の可能性のある署名を発見した一部ボランティアが、提出されないように抜き取り、その事実をネットで公表した。
 すると、高須氏は11月7日、突如として、自身の健康問題を理由にリコール運動の終結を宣言したのである。たしかに、署名は大部分の地域で期限を迎えていたものの、豊橋市や岡崎市など5市町では地方選挙のために署名活動期間が後ろ倒しになっており、まだ活動を続け、署名を上積みさせることは可能だった。
 仮に、高須氏の健康状態が悪化したとしても、他の人たちが署名活動を続けることは可能だったはずだ。にもかかわらず、高須氏は慌てて、署名活動を閉じてしまったのである。

不正を指摘したボランティアを窃盗で告訴 不正告発会見に対して〈こいつか 泥棒!〉と攻撃
 それだけではない。高須氏はさらに信じがたい行動に出る。不正を指摘したボランティアを、署名簿を勝手に抜き取ったとして、窃盗で告訴したのである。
 ボランティアが抜き取ったのは不正や無効を防ぐためだ。この時点で、不正署名の詳細や経緯、他に不正や無効がなかったか調査するのが、運動責任者である高須氏が当然とるべき対応だ。ところが、高須氏はそれをやらず、筋違いの「窃盗」告訴で、不正告発のほうを封じ込めにかかったのだ。
 その後、複数のボランティアから不正署名を見たという告発や、調査のために総会の開催を求める声が上がっても、高須氏の対応は同様だった。
 12月4日、ボランティア数人が愛知県庁で会見し、「筆跡が全部同じである。誰かが住民データを側に置いて、それをずっと丸写ししていったんだろうな」「同じ人が複数の署名を書き、偽造した疑いがある」と告発したのだが、高須氏はそれでも調査しようという姿勢を見せず、ボランティアの会見に対して、ツイッターでこう罵倒した。
〈この人は選挙管理委員会に提出する署名簿を抜きとっていたことが発覚して愛知県警に窃盗犯罪として告発受理された犯人です。
罪を軽くするために悪あがきしているのだと思います。〉
〈こいつか 泥棒!〉
〈逃げ切れないとわかって開き直りか。僕が命懸けで有志の人たちと集めた署名簿を勝手に抜気取った犯罪者を僕は許せない。〉
〈なんて卑しい奴だ〉
 高須氏のこうした攻撃は、不正を報じたマスコミに対しても繰り広げられた。東海テレビが署名簿に書かれた住所を訪れ、「書いていない」という証言やその住所には住んでいないという証言を報じると、高須氏は〈盗んだ署名簿に記載されている署名を勝手に筆跡鑑定したりの本人の住所に押し掛けて署名したか否か確認をメディアが勝手にやるのは罪ではないのか?〉などと非難。
 そして〈僕は不正が大嫌いです。正々堂々と王道を歩いています。僕に対する出鱈目な攻撃には命懸けで立ち向かいます。償わせます〉などと抽象的な反論をしたうえ、〈素人でもわかる見え見えの無効署名を沢山作って公開する意図は?僕は43万人の署名に驚き、再リコール運動の芽を摘む行動だと推察します〉と、リコール潰しの策謀であるかのような陰謀論をまくし立てた

選管が調査を始めると必死で返還を要求、「署名簿を溶解します」と宣言
 その後、現職の愛知県議や市議、市長らが、無断で署名に名前を書かれていたと実名で証言(中日新聞12月22日付)。ほかにも同種の情報提供が相次ぎ、12月21日には愛知県選挙管理委員会も提出された署名に不正な署名が多数含まれている疑いがあるとして、全署名を調査することを決めた。しかし、高須氏はそれでも、疑惑解明に抵抗。選管に対しては、署名簿の返還を繰り返し要求した
〈今日(1月5日)は法定得票数に達しなかった大村知事リコールの署名簿の返還日〉
〈署名数が法定数になった段階で選挙管理委員会は署名数の「有効」「無効」を判定します。リコールが成立しなかった場合は署名は返還されます。今回は署名を返還せず、要請による「任意」の「審査」をやっています。犯罪捜査みたいな印象操作です。選挙管理委員会には署名鑑定の能力はありません。〉
〈選挙管理委員会が一時的に預かっているリコール署名簿の正式な所有者は提出した僕です。リコールが成立しなかったら速やかに返還されるのがルールです。〉
〈僕が全責任を負って返還された署名簿を溶解します。誰が署名したか明らかになれば二度とリコールができなくなります。僕は全力で僕を信じて署名して下さった方々の信託にこたえます。〉
 不正の証拠である署名簿の返還を要求し、しかも「溶解します」などと証拠隠滅にもなりかねないことを主張したのだ。
 ちなみに不正発覚当初から、高須氏らを擁護する者のなかには、「こんな杜撰ですぐバレる不正をするわけがない」として、リコール反対派や左派の陰謀などと主張する者が多数あったが、高須氏自身が言っているとおり、本来、不成立の場合は全数調査は行われない。ボランティアからの不正の告発がなければ、不正署名は高須氏らの手で「溶解」され、「大村知事リコールを求める署名は43万も集まった」という虚偽の数字が事実として残っていた可能性が高い

会見やツイッターでの明らかな矛盾を指摘せず、「高須さんは潔い」とヨイショするマスコミ
 いずれにしても、こうした態度を見て感じるのは、高須氏はほんとうに不正署名が行われたことを知らなかったのか、という疑問だろう。「不正が大嫌い」と言うなら、ボランティアから不正の告発があった時点で、不正を徹底調査するはずだ。
 ところが、高須氏は口では「全責任は僕にある」と言いつつ、田中事務局長の「知らない」「やってない」という釈明をなんの裏付けもなく「信じる」と同調するだけ。一方で告発したボランティアスタッフを攻撃したり、陰謀論で大村知事や津田大介氏、左派に責任転嫁してきた。不正の疑いがどれだけ濃厚になっても、まともに調査したり情報公開する責任を一切果たしてこなかったのだ。
 これは、不正を知っていながら、必死でごまかそうとしていたようにしか見えない。
 また、署名偽造を、高須氏が事前にまったく知らず関与していなかったとしても、ある時点から、疑惑があるのを把握しながら、調査・説明を拒否し、疑惑告発の動きを潰そうとしてきたという責任は大きい。
 言っておくが、これは高須氏が会見やツイッターなど公の場で発言してきたことだけを見ても、明らかな事実である。
 しかし、多くのテレビ局は、こうした高須氏の発言の矛盾や、調査・説明責任の放棄、不正の隠蔽などを厳しく追及していない。高須クリニックがスポンサーである『バイキングMORE』(フジテレビ)に至っては、田中事務局長の嘘や河村市長の責任転嫁を非難する一方で、高須氏の「責任は僕にある」という口先だけの発言を「潔い」「さすが」などと持ち上げる始末だ。
 高須氏の関与の有無や金の流れなど、どこまで明らかになるか捜査の行方に注視したいが、それとは別に、こうしたメディアの責任もきちんと追及すべきだろう。
 高須クリニックという大スポンサーへの忖度と、ネトウヨからの攻撃を恐れ歴史修正主義と差別思想をきちんと批判してこなかったことが、増長させ、大量のリコール署名偽造という民主主義を冒涜する前代未聞のスキャンダルまでを生んだ一因だからだ。 (編集部)