2021年5月13日木曜日

13- 「みんな五輪が大嫌いになった」 菅とバッハの大罪(日刊ゲンダイ)

 菅首相は10日の衆参両院の予算委員会集中審議で、東京五輪・パラの開催に改めて意欲を示しました。

 野党側が開催中止を求めたのに対して、首相は「主催者はIOC・IPC(国際五輪・パラ委員会)、東京都、JOC」であり、政府は水際対策を中心に、感染対策に万全を期すべく主催者と連携する立場だと強調しました。その割には何の努力の跡も見えませんが。
 立の山井和則氏は「ステージ3感染急増、ステージ4感染爆発の状況でも開催するのか」と繰り返し質問し、参院予算委では立の蓮舫氏が「中止、延期について首相がIOCのバッハ会長に提案、相談できないのか」などと重ねて尋ねましたが、首相は「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく」などまともに答えず、結局両氏に計12回、同じ答弁を繰り返しました。
 いい大人がよくもそんな非常識な言動が出来るものですが、丸川五輪担当相も以前に社民の福島瑞穂議員に対して同じ対応をしていたので、これは菅政権のお家芸なのかも知れません。しかしこれは東京五輪・パラを開催したいという思いを国民に対して訴える態度ではなく、国民の思いとは無関係に「開催を断行する」という態度を示したものです。

 出版社の「宝島社」は5月11日の朝日、読売、日経の朝刊3紙に意見広告「このままじゃ、政治に殺される。」を見開きで掲載しました。
 この広告は、女子生徒が竹やりなどの訓練をする写真の片隅に、「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される」とキャッチコピーが書かれていました。それはかつて無能な陸軍参謀が立案して実行した旧日本軍の『インパール作戦』の、無謀な発想と当然もたらされた余りにも悲惨な敗北を想起させるものです。
 菅首相のように、ただ「東京五輪」をやりたいというだけで、そのためにどういう条件を整えるかには全く触れず、逆に、どういう場合には撤退するという選択肢を全く持たないリーダーでは、到底国民の支持は得られません。
 日刊ゲンダイが、「嘆きに変わった期待と興奮 剥き出しにされた卑しさ 『みんな五輪が大嫌いになった』~ 」とする記事を出しました。
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嘆きに変わった期待と興奮 剥き出しにされた卑しさ
      「みんな五輪が大嫌いになった」 菅とバッハの大罪
                        日刊ゲンダイ 2021年5月12日
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
人々の命と暮らしを守るために 東京五輪の開催中止を求めます」――。署名サイト「Change. org(チェンジ・ドット・オーグ)」を通じた元日弁連会長の宇都宮健児弁護士の呼びかけへの賛同は、33万筆(12日午前9時現在)を突破した。5日正午の開始以降、署名はどんどん集まり、2012年の日本語版開始以来、最速ペースで伸びているという。署名の宛先は、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長や菅首相、東京都の小池知事、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長ら五輪関係者6人だ。国内メディアにとどまらず、英ロイター通信をはじめとする海外メディアもこの動きを次々に報道。新型コロナウイルス第4波の猛威になす術もなく、緊急事態宣言は6都府県に拡大・延長された。過去最多の死者数を更新する状況では、五輪中止を求める勢いは加速する一方である。

 宣言下の大阪府は感染爆発に打つ手なしで、医療提供体制は崩壊してしまった。現場では事実上のトリアージ(治療優先順位の選択)が始まり、自宅で療養を続けるなど「医療管理下にない状態」で亡くなった患者が18人いたと府が公表。このうち17人が直近約1カ月間に死亡が確認されていた。府は「医療管理下にない状態」の定義を限定的に解釈しているため、必要な治療を受けられずに亡くなった患者数はさらに多いとの指摘もある。
 11日は過去最多の55人が死亡。第4波の犠牲者は一体どこまで増え続けるのか。

 感染力の強い変異株が新規感染者のおよそ8割を占めるようになった開催都市の東京も、明日は我が身だ。凄惨を極める中、なぜ五輪強行に突き進むのか。菅の口から明確な理由が語られたことは、ただの一度もない。

誰も説明できない「安心・安全」
 10日に開かれた衆参両院の予算委員会集中審議で野党議員から「ステージ3の感染急増、ステージ4の感染爆発の状況でも開催するのか」「中止、延期について首相がIOCのバッハ会長に提案、相談できないのか」などと繰り返し質問を浴びせられたが、菅は「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく」と決まり文句で返すだけ。しかも、同じ答弁を12回も繰り返す始末だ。国民を、国権の最高機関である国会をとことんバカにしているのか。あるいは、菅そのものが機能不全に陥っているのか。それでいて、「各国選手へのワクチンの無償提供を実現した」と胸を張る感覚のオカシサである。
 コロナ禍の最前線で戦う医療従事者のうちワクチン接種を完了したのは10日時点で25%に過ぎず、“やってる感”の演出で割り込みさせた65歳以上の高齢者にいたっては0・04%。予約の殺到で自治体の電話もサイトもパンクし、外出自粛をうっちゃって役所に押しかける大混乱だ。いまだ人口の1%も接種を終えていない。高齢者接種の7月末完了に向けた「1日100万回」も、都内に新設する大規模接種センターでの「1日1万人」も菅の思い付きでブチ上げただけで、何の裏付けもない。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。
「国民は五輪をめぐる利権臭を嗅ぎつけている。それはそうでしょう。『安心・安全な大会』の定義を誰も説明できない、科学的根拠に基づく合理的な説明もない。それでも菅首相が突き進むのは、強行開催しても中止を決断しても批判にさらされるからです。どうせ叩かれるのであればやった方がマシ、日本人選手のメダルラッシュが実現すれば国民は大喜びで政権に対する風向きは変わるかもしれない。無謀な作戦で多くの犠牲を出した旧日本軍の『インパール作戦』そのもので、精神論と玉砕思考に取りつかれてしまっている。この国が壊れていく過程をまざまざと見せつけられているかのようです」

「五輪好きの国民」が一転、6割拒否
 国民の「五輪拒否」は世論調査でも如実に表れている。政権寄りの読売新聞の調査(7~9日実施)では「中止する」が59%に達し、「観客を入れずに開催する」23%、「観客数を制限して開催する」16%を大きく上回った。NHKの調査(7~9日実施)でも「中止する」は49%に上り、「これまでと同様に行う」2%、「観客の数を制限して行う」19%、「無観客で行う」23%。五輪ありきで国民の暮らしも命もないがしろにされ続けて1年あまり、嫌悪感が広がらないわけがない。

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏はこう言う。
「五輪好きの国民といわれてきた日本で、中止を求める声が6割に迫るのはよほどのこと。しかし、安倍・菅政権による政治利用、国民蔑視が可視化された以上、当然でしょう。IOC総会で福島第1原発を『アンダーコントロール』と大嘘をついた安倍前首相が『復興五輪』を振りかざした結果、福島をはじめとする被災地の復興は遅れ、置き去りにされた。そして、足元ではコロナ禍に苦しむ国民がなおざりにされている。安倍前首相は五輪を国威発揚につなげ、悲願の憲法改正を成し遂げ、米国とともに戦争のできる国に突き進もうとした。衆院選を控える菅首相は政権浮揚の材料にし、延命に利用しようとしている。オリンピック精神とはかけ離れた政治的思惑のみで強行されようとしている五輪に、拒否反応を示さないほうがおかしい」

カルガリー住民はNO
 それでも菅は「決定権者はIOCだ」と逃げを打ち、輪をかけて無責任な“ぼったくり男爵”ことバッハは「これまで逆境を乗り越えてきた日本人なら、厳しい状況も乗り越えられる」と精神論を振りかざす。11日もIOCの公式サイトで「引き続き世界中の科学的、医学的知見に導かれ、全ての人にとって安全な東京五輪・パラリンピックを開催していく」と耳を疑うようなコメントを出し、開催をこれでもかと押し付ける。その一方で、医療従事者は現場から引きはがされ、新型コロナ、ワクチン接種、五輪の三正面作戦を強いられようとしている。

 多くの日本人に根付いていた五輪への特別な思い入れと憧憬を打ち砕き、そこに少なからず偽善と欺瞞はあるにせよ、皆が興奮し、アスリートの憧れだった「祭典」の歴史を徹底的に破壊したのは誰か。菅とバッハにほかならない。
 剥き出しにされた卑しさに直面し、五輪への期待と興奮は嘆きに変わった。「みんな五輪が大嫌いになった」――。菅・バッハによる大罪と言っていい
「巨大な国際的スポーツイベントに堕落してしまった五輪そのものが、本来の意義を失っている。東京五輪の問題がなくても、開催都市への立候補は年々減り続け、2026年の冬季五輪招致を計画したカナダ・カルガリーでは住民投票でNOを突きつけた。経済的負担に見合う価値もなければ、理念も形骸化しているからです。東京五輪が大混乱の最中で強行されれば、世界的な五輪拒否に拍車がかかるのは必至。28年ロス五輪まで決定しているものの、開催都市の住民はどう動くか。先行きは不透明です」(谷口源太郎氏=前出)

 まさしく「コロナに打ち勝った証しとしての完全な五輪を目指す」べきで、商業主義と政治的思惑の狂乱で強行される菅・バッハ五輪のあと、こんなバカげたイベントはなくなるんじゃないか。