2021年5月31日月曜日

組織委の「五輪開催で大きな経済効果」はウソ 五輪特需はすでに終了

 野村総研が、過去の緊急事態宣言の経済損失について、1回目は約6兆4000億円、2回目は約6兆3000億円、現在の3回目は約1兆9000円で、延長によって約3兆円などさらに増加すると弾いた一方で、東京五輪を中止した場合の損失は1兆8000億円と遥かに小さいとする試算を出したことは衆知の通りです。
 ところで五輪誘致の際には、その経済効果は10兆円から数十兆円と言われていました。それが1兆8000億円と見做されたのは、五輪特需」とも呼ばれる経済効果の中心がインフラ整備とインバウンドによってもたらされるものであり、既にその効果が終わっているからです。
 第一生命経済研究所の永濱利廣氏は〈19年までに13.8兆円程度の経済効果が出ており、株価もすでにそれを織り込み済みである可能性が高い〉と指摘し、「開催直前の方がGDPの押し上げ額が高く、19年までに8割近くの経済効果は出ていると言える」と述べています。
 要するに五輪特需は大企業や投資家に莫大な利益をもたらす形で既に大半が終了し、対して一般庶民は目下 対コロナ無策の菅政権のお蔭で生死の瀬戸際に立たされているという訳です。
 もしも今後“対コロナ無策のままで五輪を強行するか、あるいは国民の医療を犠牲にして無理やり五輪を強行するならば、その後に予想される未知の新型コロナの爆発により国民(や関係国の人民)が受ける災厄は計り知れず、更に巨大な損失を生むことになります。
 LITERAが取り上げました。
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組織委「五輪開催で大きな経済効果」はやはり嘘! 五輪特需はすでに終了、強行して感染拡大したら逆に損失6兆円
                             LITERA 2021.05.30
 28日におこなわれた記者会見で、緊急事態宣言下での東京五輪開催について否定しなかった菅義偉首相。そればかりか、「緊急事態宣言下で野球やサッカーをおこなっていることも事実」などと述べ、観客を入れての開催にまで意欲を見せた。
 まさに狂っているとしか言いようがない。東京に3 回目の緊急事態宣言が発出されて1カ月を過ぎたが、新規感染者数はいまだに高止まりの状態。しかも、オリンピックは野球やサッカーとまったく規模が違って、世界中からものすごい数の選手や関係者が集まってくるのだ。
 インド型変異株が拡大傾向に入っていることも踏まえれば、東京五輪の開催が火に油を注ぐことになるのは明々白々だ。にもかかわらず、まさかの観客を入れての開催に突き進もうとは……。
 しかも、菅政権と軌を一にして開催を強行したい東京五輪組織委員会の最高幹部である武藤敏郎事務総長からは、こんな発言まで飛び出した。
「日本経済全体のことを考えたら、五輪を開催することのほうがはるかに経済効果があると思う」
 この国に暮らす人びとの命と健康を守ることよりも「経済効果」を持ち出すこと自体、下劣にもほどがあるが、それ以前に、武藤事務総長は事実を捻じ曲げている
 武藤事務総長の発言の2日前である25日に野村総合研究所が「東京大会を中止した場合の経済的な損失は1兆8000億円規模」という試算を公表した。武藤事務総長の発言はこの数字を意識してのものだろうが、じつは、試算をまとめた当の野村総研はまったく逆の分析をしている。
 試算を発表した同レポートには、約1兆8000億円という経済損失の額が〈2020年度名目GDPと比べると0.33%の規模であり、景気の方向性を左右する程の規模ではない〉と書かれているのだ。
 たしかにそのとおりだ。経済損失1兆8000億円規模とだけ言われると、大きな金額のようにも感じるが、この数字はむしろ、予想以上に影響は小さいというべきものだ。
 そもそも、オリンピック誘致の際には、その経済効果は10兆円から数十兆円と言われていた。それが10 分の1以下になっている。
 これは、「オリンピック特需」とも呼ばれる五輪の経済効果の中心がインフラ整備とインバウンドによってもたらされるものであり、とっくにその効果が終わっているからだ。

野村総研のレポートも〈大会中止の経済損失は、緊急事態宣言1回分よりも小さい〉
 実際、第一生命経済研究所の首席エコノミストである永濱利廣氏は〈2019年までに13.8兆円程度の経済効果が出ており、株価もすでにそれを織り込み済みである可能性が高い〉と指摘し、「開催直前の方がGDPの押し上げ額が高く、2019年までに8割近くの経済効果は出ていると言える」と述べている(「Forbes JAPAN」3月13日付)。
 ようするに、武藤事務総長の発言はたいしたことのない効果の残りカスにしがみついて、開催強行のための口実にしているに過ぎないのである。
 しかも、もっと問題なのは、野村総研のレポートが、強行して感染拡大した場合の経済損失のほうがはるかに大きいと指摘していることだ。
 同レポートでは過去の緊急事態宣言の経済損失についても推計し、1回目は約6兆4000億円、2回目は約6兆3000億円、現在の3回目は約1兆9000円で、延長によって約3兆円などさらに増加すると計算。こう言及している。
〈大会を中止する場合の経済損失は、緊急事態宣言1回分によるものよりも小さい〉
〈緊急事態宣言による経済損失などと比べると、国内観客を制限して大会を開催、あるいは大会を中止する場合の経済損失は必ずしも大きくはない。大会開催をきっかけに、仮に感染が拡大して緊急事態宣言の再発令を余儀なくされる場合には、その経済損失の方が大きくなるのである〉
 つまり、東京五輪開催によって感染が再拡大して緊急事態宣言が発令されれば、1.8兆円の3倍以上になる6兆円もの経済損失が出る可能性があるのだ。それでどうして「五輪を開催するほうがはるかに経済効果がある」などと言えるだろう。
 だが、この国は「Go To」をはじめとして目先の「経済効果」を持ち出して、むしろ経済を悪化させてきたという“前科”がある。この間、安倍晋三・前首相と菅首相が感染防止対策よりも経済を優先させ、何から何まで後手後手に回ってきたが、その結果、ありえない程の経済損失を叩き出してきたからだ。

菅政権のGo Toによって多大な経済損失、過ちが再び繰り返される
 実際、内閣府が18日に発表した2020年度の国内総生産(GDP)は前年度比4.6%のマイナスとなり、リーマン・ショックがあった2008年度のマイナス3.6%を上回る戦後最大の落ち込み幅を記録。2021年1〜3月のGDP速報値も前期比マイナス1.3%、年率換算でマイナス5.1%となった。
 この末期的な数字に対し、「コロナの影響を考えれば仕方がない」と見る向きもあるが、しかし、同じようにコロナの影響を受けた他国と比較すれば日本の失策は明らかだ。事実、あれほどの感染者・死亡者を出してきたアメリカでも、2020年度GDPは前年比マイナス3.5%だったが、今年1〜3月期(速報値)ではワクチン接種が進んだ効果で前期比プラス1.6%、年率換算でプラス6.4%にも達している。また、日本と同様にロックダウンをおこなわなかった韓国の場合、2020年度GDPはマイナス1.0%、今年1〜3月期(速報値)は前期比プラス1.6%で3期連続プラスとなっている。
 こうした数字を考えれば、日本の感染防止対策の失敗が経済損失を膨らませているのは明白。そして、東京五輪開催によってさらに感染を拡大させれば、開催による経済効果などはるかに上回る、さらなる打撃を受けることになるのである。
 それでなくてもワクチン接種が遅れに遅れて経済の立て直しに暗雲が立ち込めているというのに、東京五輪の開催は人びとの命と安全を脅かすだけではなく、経済的にも大きな損失を生む。経済面だけを考えても、五輪開催は中止すべきという結論しかないのだ。
 だが、菅政権はそれでもなお、「百害あって一利なし」の東京五輪を開催するという。この暴走政権を止めなければ、わたしたちの生活はかつてない危険に晒されることになるだろう。 (編集部)