菅首相は、4都府県の緊急事態宣言を延長し愛知、福岡両県の追加を決めた7日夜の会見で、負担が続く国民に「深くおわびする」と陳謝しました。何かをやったうえで上手く行かなかったというのであれば多少は考える余地もありますが、不徹底な人流の抑制を訴える以外には何一つやってこなかった人間に、いつものように言葉だけのお詫びされてもどうしようもありません。
今後のことに言及する際には「私自身が先頭に立って」「あらゆる手段を尽くし」「全力を尽くす」などと強調し、無為無策の結果が明らかになると今度は「深くおわびする」のワンパターンで、何とかの一つ覚えのようなセリフはもう聞き飽きました。
それにしても何とも言葉が軽い人間です。言葉が軽いだけでなく何も深く考えていないので、具体的な事柄になると「無内容」という表現が相応しくなります。
安倍前首相は国会で質問や指摘をされても、自分に都合の悪いことについては決してまともには答えず、無関係な事柄を滔々と述べ立てました。その際にメディアは何故かそれを「すれ違いの議論」などと呼んでカバーしました。さすがは「報道の(政権からの)自由度67位」のメディアです。
その安倍氏がようやく退場して代わりに現れたのが菅氏でしたが、事態は何一つ変わりませんでした。その場その場で、その都度適当なことを言い繕ってきた菅首相が、具体的な質問を突きつけられるとどうなるのか、レイバーネット日本と日刊ゲンダイが改めて取り上げました。
タイトルは「菅義偉首相の『無内容会見』は何を意味するか」(レイバーネット日本)と「質問と答え まるで噛み合わず 緊急事態宣言延長の菅首相会見」(日刊ゲンダイ)です。
日本の政治は首相2代にわたる「驚くべき不毛と愚劣の連続」に見舞われています。
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菅義偉首相の「無内容会見」は何を意味するか ー アリの一言:
レイバーネット日本 2021年05月08日
7日午後7時から行われた緊急事態宣言延長についての菅義偉首相の記者会見は、あきれるのを通り越して恐怖さえ感じさせるものでした。重大事態における首相の会見としてあまりにも無内容・無責任・無能であり、この首相の政権の下でコロナ禍を過ごさねばならなのかと背筋が寒くなる思いだったからです。
記者からの質問は、「短期集中」宣言の誤り、ワクチン接種の進行、変異株への対応、医療体制の危機、東京五輪開催などに集中していました。いずれも重要な問題です。しかし、菅氏の答弁は、「人流の減少という当初の目的は達せられた」という耳を疑う自己弁護を繰り返す一方、具体的な問題は「しっかり対応する」「すすめていく」「総合的に判断する」など抽象的で無内容な言辞を弄するだけで、何一つ答えませんでした。
例えば、フリーランスの女性記者から、現在非常に懸念されているインドの事態について、インドではPCR検査が十分行われておらず、帰国したくても帰国できない人が多くいるが、政府としてどう対応するのか、というきわめて重要な質問がなされました。
これに対する菅氏の答弁は、「飛行機は空いている」「PCR検査はいろいろなところで行われている」という空疎なもので、質問にまったく答えていませんでした。
東京五輪開催についての質問が多かった(16人中4人)のが今回の特徴です。それは反対・中止の世論の高まりを反映したものといえます。
その中で、外国メディアの女性記者が、五輪を開催した場合、選手以外にもメディア関係者はじめ数万人の外国人が日本に来ることになるが、そういう人々に対する感染対策はどうするのか、という重要な質問をしました。
ところがこれに対する菅氏の「答え」は、「選手には無料でワクチンを接種する」「選手と一般の人との接触は制限する」と当初の原稿を繰り返すだけで、記者の質問にはまったく答えていませんでした。
あまりにも無内容・無責任な答弁です。この状況は何を意味しているでしょうか。
菅氏はいい加減な答弁で市民には必要な情報を示さない(示せない)一方、官僚組織を締め付け支配する方面での“能力”は発揮しています。結果、官僚の忖度は深化し、行政組織も劣化しています。
その支配は官僚だけでなく、いわゆる「専門家」といわれる科学者に対しても行われています。それが表面化したのが日本科学者会議の任命拒否問題であり、現在のコロナ対策の「専門家会議」「分科会」の実態です。
こうした菅氏の官僚・「専門家・科学者」支配が、安倍晋三氏の模倣・教示であることは明らかです。
首相・政府が無能・強権的であるなら、「国権の最高機関」である国会がそれを追及し是正するのが本来ですが、日本の国会は、野党第1党の立憲民主党をはじめ翼賛国会化が深まっており、およそ野党、国会の役割を果たしていません。コロナ禍の中で、国民投票法、75歳以上の医療費2割負担(受診抑制をまねき、コロナ禍の教訓を何も学んでいない)という重要法案がスイスイ通っていることがそれを示しています。
政府、国会が腐敗していれば、メディアがそれを追及し、変革の世論を喚起するのが本来の姿ですが、永年の政権によるアメとムチによって、日本のメディアの劣化も深刻な状況です。7日の会見でも、的確な質問をしたのはフリーランスと外国メディア(いずれも女性記者だったことは偶然とは思いません)であったことは、日本のメディアの実態を表していたと言えるでしょう。
まさに絶望的な現実です。どうすればこれを打開することができるのか。考え続けます。
質問と答えまるで噛み合わず緊急事態宣言延長の菅首相会見
日刊ゲンダイ 2021/05/07
相変わらず中身のない会見だったと指摘せざるを得ない。東京や大阪など4都府県の緊急事態宣言延長と、新たに愛知、福岡の両県を対象地域に追加することを決め、7日夜、官邸で記者会見した菅首相のことだ。
「私自身が先頭に立って」「全力を尽くす」「あらゆる手段を尽くし」「感染拡大を何としても食い止める」……。緊急事態宣言を再発令した時と同様、次々と勇ましい言葉は出てくるものの、延長に至った反省もなく、結局、何が言いたいのかサッパリ要領を得なかった。
とりわけ、いつもの会見以上に酷かったのが質疑応答だ。記者が「(現在の)17日間の緊急事態宣言が短かったのでは」「短期集中は正しかったと思うのか」といった趣旨の質問をしても真正面から答えず、手元の資料に目を落としながら、のらりくらり持論を展開する場面が続いた。
東京五輪を開催できるのか、開催してよいのかと問われても、「選手や大会関係者が感染対策をしっかり行い、国民の命を守っていくことが大事」などと言い出す始末で、質問と答えがまるでかみ合っていなかった。
元日弁連会長の宇都宮健児弁護士が呼びかけている東京五輪の中止を求めるオンライン署名が3日で20万人を超える状況について問われた際には、「外国選手には一般の国民が交わらないようにし、毎日検査も行う。安心安全な大会にする」などとチグハグな説明を繰り返す。さらに海外メディアの記者が新型コロナ禍の五輪期間中に訪日する外国人に対する検査体制について、「非現実的なルールでは意味がない。数万人(のチェック)は物理的に可能か」と質問。すると菅首相は突然、ファイザー社からのワクチン提供の話を始め、「安全対策を徹底したい」などと答えていたからワケが分からない。
憲法に緊急事態条項を盛り込みたいという自民党の改憲主張がらみの質問で、コロナ対策で同条項が必要な具体例について問われると、「ワクチンの国内治験が必要」などとトンチンカンな説明をしていた菅首相。質問も答弁もグダグダな様子に呆れた国民は少なくなかっただろう。