収容先の名古屋入管で3月に亡くなったスリランカ女性、ウィシュマ・サンダマリさんの葬儀が16日、名古屋市内で営まれました。葬儀はスリランカの仏式で執り行われ、妹2人ら遺族や関係者ら約100人が参列しました。
ウィシュマさんの妹である次女のワユミさん(28)と三女のポールニマさん(26)はこの日午前、ウィシュマさんの遺体に初めて対面し、変わり果てた姿に「姉でないようだ」と泣き崩れました。
2人は1日に来日した後、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため14日間の自主隔離生活に入っていました。
在留管理を厳格化する入管法改定案に反対するデモが16日午後、日比谷公園周辺で行われました。参加した約180人は、「難民の送還ではなく保護を」「ウィシュマさんを忘れるな)」などと書かれたプラカードを掲げて静かに行進しました。
立憲民主、共産、社民の3党は14日、義家弘介法務委員長の解任決議案を衆院に提出しましたが、与党は18日の衆院本会議で解任決議案を否決しました。多くの人々が反対を叫ぶなかで、政府与党は今週中にも法務委で入管法改正案を採決する方針です。
しんぶん赤旗の主張「入管法改定案 非人道性加速する改悪やめよ」と、ウィシュマさんの葬儀と入管法改定案に反対するデモを伝えた毎日新聞の記事を紹介します。
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主張 入管法改定案 非人道性加速する改悪やめよ
しんぶん赤旗 2021年5月16日
菅義偉政権が入管法(出入国管理及び難民認定法)の改定案を衆院法務委員会で採決する動きを強めています。国際社会から非人道的と批判が相次いでいる日本の入管行政の欠陥を改めるのでなく、在留資格を失った外国人の人権侵害を一層深刻化させる重大な内容の改定案です。審議の中では現在の入管当局の人権無視の体質や、法案の抱える問題が次々と明らかになり、国民の批判も急速に広がっています。改定案の強行は絶対に認められません。
死亡事件の真相解明急げ
審議で大問題になっているのは、今年3月、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が死亡した事件です。入管が必要な医療を受けさせず死を招いた疑いが極めて濃厚だというのに、菅政権は真相解明に背を向け続けています。
留学生として来日したウィシュマさんは同居人からDVを受け、警察に保護を求めたところ留学生ビザが失効していたため逮捕され、昨年8月に収容されました。体調が悪化し、食事も歩行もできないほど衰弱しました。支援団体が一時的に収容施設を出る「仮放免」を求めましたが、入管に認められないまま、亡くなりました。
法務省・出入国在留管理庁は4月に事件についての中間報告を公表しました。しかし、死亡2日前に診断した医師が、仮放免すれば状態改善が期待できると指摘した事実が記されておらず、入管の隠蔽(いんぺい)姿勢に批判が集まりました。
さらに2月にウィシュマさんが診察を受けた外部の医療機関の診療記録に「(薬を)内服できないのであれば点滴、入院」と指示が書かれていたことが「毎日」13日付の報道で明らかになりました。中間報告に「医師から点滴や入院の指示がなされたこともなかった」と記載されていることと全く異なります。なぜ正反対の記述なのか、政府からまともな説明はありません。真相を知りたいと訴える遺族にも死亡の詳しい経過が伝えられていません。事件の徹底解明なしに改定案の審議はありえません。菅政権は、遺族や野党が求めている収容中のビデオ映像の開示などに応じるべきです。
ウィシュマさんは、外国人の人権や尊厳を保障しない現在の入管制度の犠牲者です。在留資格のない外国人を全て収容する「全件収容主義」は、国連の人権理事会などから人権侵害だとして改めるように求められてきました。しかし、改定案は、国際的な要請にこたえず、むしろ逆行しています。
長期収容の解消にはつながらず、厳罰化もすすめます。難民申請が2回却下されると強制送還が可能になる改悪も盛り込まれました。入管の裁量と権限の拡大は人権侵害を一層強めます。改定案は廃案しかありません。
「廃案」の声を大きく
菅政権は大型連休明け直後から改定案審議の打ち切りと採決強行を何度も狙ってきました。それを許さなかったのは、野党の国会での共闘の力と、SNSなどで広がる反対の声です。作家、弁護士、国際法の研究者らが廃案を求める声明を発表し、議員会館前では外国からの移住者支援団体の座り込みが連日取り組まれています。世論と運動をさらに広げ、改定案の成立を断念に追い込みましょう。
入管で死亡スリランカ女性葬儀 変わり果てた姿 妹「信じられない」
毎日新聞 2021/5/16
収容先の名古屋出入国在留管理局(名古屋市)で3月に亡くなったスリランカ女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の葬儀が16日、名古屋市内で営まれた。妹2人ら遺族や関係者ら約100人が参列し、ウィシュマさんに最後の別れを告げた。
ウィシュマさんの妹である次女のワユミさん(28)と三女のポールニマさん(26)はこの日午前、ウィシュマさんの遺体と初めて対面。変わり果てた姿に「姉でないようだ」と泣き崩れた。2人は1日に来日した後、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため14日間の自主隔離生活に入っていた。
葬儀はスリランカの仏式で執り行われた。遺族代表としてあいさつしたワユミさんは「姉のために参列、支援してくださって感謝します。母も来たがっていましたが、来られず残念です。父が亡くなった後、姉は家族の支えでした。姉が33歳の若さで亡くなってしまったことは信じられません」と涙ながらに語った。
また、亡くなって2カ月が過ぎても明確な理由が分からない現実を残念がり「姉は大好きな国で亡くなってしまいました。耐えられず悲しいです」と話した。遺族らは出棺の際、参列者らに「ありがとうございます」と日本語で感謝を伝え、頭を下げた。
「難民送還ではなく保護を」 入管法改正反対訴え 日比谷でデモ
毎日新聞 2021/5/16
在留管理を厳格化する入管法改正案に反対するデモが16日午後、東京都千代田区の日比谷公園周辺であった。難民や日本に在留する外国人を支援する弁護士有志の呼びかけで参加した約180人は、「難民の送還ではなく保護を」「REMEMBER Wishma(ウィシュマさんを忘れるな)」などと書かれたプラカードを掲げて静かに行進した。
改正案は、国外退去処分を受けた外国人が入管施設に長期収容されるケースを解消するため、退去を拒否した人に対して退去命令を出し、違反すれば罰則を科すことを盛り込んでいる。また難民認定の申請が2回却下された場合、手続き中でも退去させることが可能となる。
入管法改正案を審議している衆院法務委員会では、名古屋出入国在留管理局(名古屋市)で3月6日に亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の事案の真相究明を巡って与野党が激しく対立。ウィシュマさんが収容施設で適切な医療を受けられなかった可能性があるため、野党は死亡までの様子を撮影した監視カメラの映像の提出を求めたが、与党が拒否した。立憲民主、共産、社民の3党は14日、義家弘介法務委員長の解任決議案を衆院に提出したが、与党は18日の衆院本会議で解任決議案を否決し、今週中にも法務委で入管法改正案を採決する方針だ。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。