財務省の決裁文書の改ざん問題で、国は6日、自殺した近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54歳)が改ざんの経緯をまとめて職場に残した「赤木ファイル」の存在を初めて認め、6月赤木さんの妻雅子さんが起こしている裁判で提出することを明らかにしました。
国はこれまで「裁判上、必要ない」としてファイルが存在するかどうかも明らかにしていませんでしたが、大阪地裁が3月、開示するよう促したことで対応を一転させました。
ファイルには改ざんの過程などが時系列でまとめられた文書や、財務省理財局と近畿財務局の間でやり取りされたメールや添付資料が綴じられているということで、ファイル文書のうち裁判と関係ない個人情報など、一部を黒塗りする処理をしたうえで開示するとしています。
これまでの例では全面真っ黒というようなケースが多数あるので、黒塗りの範囲がどの程度に抑えられるか注目されます。
雅子さんは、「(命を絶ってから約3年)ようやく一歩進んでくれた」、「夫が苦しみ抜いて残したものがまだあったんだと安心しました。国は内容を一切マスキングせずに全部明らかにしてほしいです」と語りました。
立民の福山幹事長は「野党側が国会で存否を明らかにしろと言ってきたにもかかわらず、これまで明らかにしなかった。速やかに国会に提出するよう求めていきたい」と述べました。
共産党の志位委員長は「ファイルの存在を隠しきれなくなったということ。公務員を『自死』に追い込んだ非常に深刻な問題で、政府には真実を明らかにする責任があり、国会で真相究明をすることが必要だ」と述べました。
毎日新聞の記事を紹介します。
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「事実を公に」赤木さんの無念 妻「ようやく一歩、全て明らかに」
毎日新聞 2021/5/6
学校法人「森友学園」を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、国は「赤木ファイル」の存在を初めて認め、開示する方針を示した。改ざんの経緯を克明に残したとされる近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54歳)が命を絶ってから約3年。「ようやく一歩進んでくれた」。真相究明を求め続けてきた妻は、文書の全面的な開示を国に訴えた。
妻雅子さん(50)は6日夕、大阪市内で報道各社の取材に応じ、「夫が苦しみ抜いて残したものがまだあったんだと安心しました」と語った。
赤木さんがファイルの存在を妻にほのめかしたのは、2017年2月に学園への国有地売却問題が発覚してから間もない頃だ。「大変なことをさせられた。犯罪行為も全て残してある」。今まで見たことのないような深刻な表情だった。
死の直前まで改ざんに苦悩し、18年3月に自宅で亡くなった赤木さん。死後に見つかった手記では、「事実を公的な場所でしっかりと説明することができません」と悔しさをにじませた。
理財局と近畿財務局間のメールなど含まれ
雅子さんは赤木さんとの会話や元上司の証言も踏まえ、「赤木ファイル」の存在を確信。夫は誰に何を指示され、どう抵抗し、何に苦しんでいたのか――。最愛の夫を亡くした失意の中、「事実を公の場で話したかった夫の遺志を継ぎたい」との思いで裁判を起こし、文書開示を求めてきた。
国は今回の回答書面で、ファイルに財務省理財局と近畿財務局との間で送受信されたメールや添付資料とされる文書が含まれていることも明らかにした。
雅子さんは「夫の気持ちを酌んで、国は文書を全て明らかにしてもらいたい。二度と夫を見捨てないでほしい」と強調。妻側の代理人弁護士も「メールの文面が残されていたのは驚きで、開示されればより詳細な改ざんの経緯が判明する可能性がある」と期待を寄せた。【松本紫帆、芝村侑美】
改ざん巡る財務省と近畿財務局のメールも赤木ファイルに 国の回答要旨
毎日新聞 2021/5/6
学校法人「森友学園」の国有地売却を巡り、財務省の決裁文書改ざんを苦に自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さんの妻が国などに損害賠償を求めた訴訟で、国は「赤木ファイル」の存在を初めて認め、6月23日の口頭弁論で開示する方針を示した。ファイルには、財務省と近畿財務局で改ざんに関してやり取りされたメールも含まれていることが明らかになった。国が妻側などに回答した書面「文書提出命令申し立てに対する意見書」の要旨は次の通り。
【本件文書提出命令の申し立ての対象文書】
国において特定した文書
国が特定した文書(以下「本件文書」という)は、以下がとじられたものである。
・改ざんの過程などが時系列にまとめられた文書
・改ざんについて、財務省理財局と近畿財務局の間で送受信されたメール及びその添付資料と思われる文書など
文書の特定根拠
原告から提出された証拠や文書提出命令の申立書の内容で本件の対象文書を識別するための情報が相当程度具体化された。そこで国としては、このような識別情報を踏まえ、探索作業を行い、整合する本件文書を統括国有財産管理官に確認した結果、本件文書が対象文書であると特定するに至った。
【本件文書を任意で提出する予定であること】
任意提出について
1)原告はかねて国に対し、本件対象文書の「存在の有無を明らかにした上で、存在する場合は速やかに証拠として提出されたい」としていた。原告が本件対象文書によって明らかにしようとする事実は、いずれも決裁文書の改ざんの経緯や内容などの事実であって、国は決裁文書の改ざんの経緯や内容などの事実についてはおおむね争いがないことから、回答の必要はないとしてきた。
2)しかし、2021年3月22日の進行協議で、裁判所から国に対し、本件対象文書は「仮に存在するのであれば、証拠調べの必要性がないとはいえないことから、国には任意の提出を検討してもらいたい」旨の指示・要請があった。本件文書は元来、行政文書ではなく、赤木俊夫さんが個人的に作成した文書であると考えられるものの、民事訴訟法220条の除外事由に該当しない文書も含まれていると解されるので、国としては裁判所の訴訟指揮に対して真摯(しんし)に対応することとし、本件文書を提出する予定である。
提出範囲について
本件文書については、次のとおり、マスキング処理の必要性が認められる。
文書には行政内部のやり取りが含まれていることから、いわゆる公務秘密文書に該当する情報が含まれていることは否定できない。
さらに、行政内部でやり取りされたメールに記載されているパスワードなど情報セキュリティーに支障を生じかねない情報や、本件訴訟とは直接の関係が認められない第三者の個人に関する情報なども含まれている。
特に、森友学園案件は報道などで引き続き取り上げられる実態があり、このような状況下で財務省の調査により決裁文書の改ざんなどの一連の問題行為に関与したとは認定されていない者や、関与した者で幹部職員ではない者の個人に関する情報を公にした場合、取材などが殺到することなどで、職員や家族の私生活の平穏が脅かされるおそれがあることも否定できない。そこでこれらの情報については、情報セキュリティーや個人のプライバシー保護などの観点からも、取り扱いに注意をする必要がある。国としては、裁判所の訴訟指揮に対して真摯に対応するという観点から、マスキング処理の範囲についてはできる限り狭いものとする予定である。
結論
以上の通り、本件文書はマスキング範囲の精査について慎重に行う必要があり、その検討にはなお時間を要する。もっとも、国としては裁判所の訴訟指揮に対して真摯に対応するという観点から、早急に検討を進め、第4回口頭弁論期日(6月23日)には、本件文書を提出する予定である。
※書面の要旨は、表記を読みやすいように修正した箇所があります。