2021年5月7日金曜日

07- コロナのさなか高齢者の医療費負担2倍化の法案を強行採決へ

 やるべきことはやらずに、やるべきでないことをやり続けているのが菅政権です。

 新型コロナが拡大する中で政府がやるべきことは山ほどあります。医療体制の強化、PCR、ゲノム解析といった検査体制の強化、水際対策の強化、そして緊急事態宣言延長に伴う支援の拡充等々で、支援に関すること以外は全て厚労省が行うべきものです。
 しかし衆院厚労委員会で現実に行われているのは、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の審議で、年金を含む年収が単身世帯で200万円以上の75歳以上の医療費を現行の1割負担から2割負担に引き上げようという法案です。
 菅首相は改定の趣旨を「現役世代の負担上昇を抑え、能力に応じた負担をしていただく」などと述べていますが、現役世代の負担が減る額は年間720億円。1人当たりでは「年間700円、1日あたり2円」でしかなく、もっとも削減されるのは国と自治体の公費980億円であり、現役世代の負担減は口実でしかありません。
 その一方で、75歳以上の負担増は政府試算でも、「膝の痛み」の外来では年3万2000円、関節症と高血圧性疾患で通院する場合は年6万1000円に上ります。
 しかも「200万円以上」に適用というのも実は有名無実で、政府が政令で自由に変えることが出来ます。
 LITERAが取り上げました。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コロナのさなか自公が高齢者の医療費負担を2倍にする法案を強行採決へ! 
厚労委でコロナ対策の議論より医療削減優先する異常
                             LITERA 2021.05.06
 本日6日、国民投票法改正案が衆院憲法審査会で可決された。懸念されていたCM規制については「法律の施行後3年以内に検討し、必要な措置を講ずる」と附則が明記されたが、「コロナ禍にやることか」「不要不急」「コロナにかこつけた火事場泥棒」などという批判が起こっている。
 当然だ。この緊急事態宣言下で、大阪などは医療崩壊の真っ只中にあり、東京も後を追いかけるように重症患者数が増加。また、イギリス由来の変異株にくわえ、インドで猛威を振るっている変異株が国内で確認された一方、ワクチン接種は一向に進んでいない。医療提供体制やPCR、ゲノム解析といった検査体制、水際対策の強化はもちろんのこと、緊急事態宣言延長による支援の拡充など、憲法改正などまったく必要なくすぐに対応がとれる問題の議論が山積み状態だ。
 しかし、こうした喫緊の課題を差し置いて与党が推し進めている問題法案は、国民投票法改正案だけではない。なんと、コロナ対策にとって重要な議論の場である衆院厚労委員会では「そんなことをやってる場合か!」と言わざるを得ない、ある法案の審議がおこなわれており、与党は明日にも強行採決に踏み切るのではないかとも言われているのだ。
 それは、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の審議。なんと、年金を含む年収が単身世帯で200万円以上の75歳以上の医療費を現行の1割負担から2割負担に引き上げよう、という法案だ。
 コロナ渦中の厚労委員会で、コロナ対策ではなく、まさか年収200万円のギリギリの生活を余儀なくされている高齢者の医療費負担を2倍にしようという法案が審議されている──。昨年、予算委員会などで当時の安倍晋三首相をめぐる「桜を見る会」問題の追及がおこなわれると、安倍応援団を中心に「こんなときに『桜』をやっている場合か」などという声があがったが(ちなみに、その後、安倍首相が「桜」問題で少なくとも118回も虚偽答弁をおこなっていたことを衆院調査局が認めたように国会審議を空費させていたのは安倍首相だった)、「100年に1度とも言われる世界的パンデミックの最中に医療費値上げ審議」とは、これこそ「そんなことやっている場合か!」という話だろう。
 現に、この法案審議では、野党議員から「大阪や兵庫は医療崩壊状態で、こんな審議をしていて国民にコロナの危機感は伝わらない」「医療崩壊や変異株について議論すべき」という声や、立憲民主党や共産党が国会に提出している「コロナ特別給付金法案」を審議すべきだという声があがってきたが、自民党所属の渡嘉敷奈緒美・厚労委員長はそれらを無視してきた。

厚労委員会・筆頭理事の菅原一秀の現金提供疑惑で一旦、強行採決を見送りもどさくさ紛れで再び…
 しかも、さらに信じられないことに、与党側は緊急事態宣言の発出が決定された4月23日、この法案の衆院厚労委員会での強行採決を目論んでいた。しかし、同日朝に厚労委員会の筆頭理事である菅原一秀・前経産相が有権者に現金を配布していた疑いで東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けていたことが報じられ、筆頭理事を辞任。そのことによって法案の強行採決は見送られたのだ。
 菅政権がコロナ対策の議論を放り出して医療費引き上げの審議を優先させていること自体が常軌を逸しているのに、緊急事態宣言の発出を決定する日にどさくさ紛れの強行採決を狙い、その強行採決が見送られた理由が「筆頭理事の有権者買収疑惑」とは、まさしく菅政権がいかに腐りきっているのかを物語るような話だ。
 当然、こんな法案はとっとと取り下げ、コロナ対策の議論をおこなうべきだが、与党側はこの「医療費2倍法案」を明日にも委員会で強行採決に踏み切るのではないかとみられているのである。
 しかも、この法案、どさくさ紛れの強行採決など絶対に許すわけにはいかない危険な内容なのだ。
 そもそも、この法案について菅義偉首相は「現役世代の負担上昇を抑え、すべての世代が安心できる社会保障制度の構築は待ったなしの課題。能力に応じた負担をしていただくことが必要だ」などと述べているが、医療費の引き上げによって受診控えが起これば、当然、病状が悪化し手遅れになる危険が高まる。実際、政府試算でも、「膝の痛み」の外来では年3万2000円、関節症と高血圧性疾患で通院する場合は年6万1000円も負担が増すという(しんぶん赤旗4月9日付)
 その上、菅首相はあたかも現役世代の負担が減るかのような言い草だが、現役世代の負担が減る額は年間720億円。これを1人あたりに換算すると「年間700円、1日あたり2円」でしかない。むしろ、もっとも削減されるのは国と自治体の公費980億円であり、現役世代の負担減は口実でしかないのだ。

法案は、年収制限をとっぱらって「75歳以上全員2割にする」ことも可能な内容
 だが、この法案が恐ろしいのは、法案を見てもどこにも「2割負担の対象者は年収200万円以上」とは書かれておらず、対象者は「政令」で決める内容になっていること。つまり、政府の独断で対象者の幅を広げていくことができるのだ。
 実際、4月14日の衆院厚労委員会では、立憲の山井和則衆院議員が「年収200万(以上)ではなくて、『75歳以上全員2割にする』と決めた場合、法改正や国会審議は必要なのですか?」と質問した際、田村憲久厚労相は「政令で定めるということになる」と答弁をおこなっている。ようするに、この法案は事実上、「高齢者の医療費を2割負担に引き上げ」を可能とするものなのだ。
 コロナ対策では国がおこなうべき医療提供体制や検査の強化・拡充という仕事もせず、国民にばかり我慢と痛みを押し付けてきた菅政権だが、この緊急事態の最中に、自分たちの思いのまま高齢者の医療費負担をフリーハンドにできる法案を強行採決しようとは言語道断、下劣にも程がある。いまからでも遅くはない。強行採決に「NO」の声をあげ、法案取り上げを訴えなくてはならないだろう。(編集部)