イスラエルとパレスチナ自治区ガザ(イスラム組織ハマス)の攻防が激化していることに関し、中山泰秀防衛副大臣は12日、
「最初にロケット弾を一般市民に向け撃ったのは誰だったのか? 私たちの心はイスラエルと共にあります」
とツイッターに書き込んだことに批判が集中しています。
中山氏は書き込みをした理由について、「テロリズムをなくしてほしい。イスラエルはテロから自国民を守る権利があるのではないか。これをしっかり訴えたいと思ったまでだ」と記者団に説明したということですが、それによって認識が大いに現実から遊離していることをより鮮明にしました。
14年に行われたイスラエルによるガザへの軍事作戦では、パレスチナ人2000人以上が死亡したことをどう考えているのでしょうか(イスラエル側の死者は極少)。今回の攻防でも圧倒的に死者数を出しているのはガザ住民のパレスチナ人です。
防衛副大臣の肩書を持っている人間がそんな認識でいて、しかもそれを軽々しくツイッターで表明していいのでしょうか。
14年のガザ戦争時に現地に行き、それ以前の08年末~09年初めにも現地に行っている田中龍作氏が、「永遠に続くガザ・イスラエル戦争 男の子は ~ 」とする記事を出しました。
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永遠に続くガザ・イスラエル戦争 男の子は「ハマス兵士になる」と答えた
田中龍作ジャーナル 2021年5月13日
←つい今しがた、父親をイスラエル軍の空爆で失い号泣する女の子。なだめる母親。=2014年、ガザ北部 撮影:田中龍作=
現場を見ずして記事を書くのは極めて不本意なのだが、猛毒である日本型コロナ変異株を、ただでさえ弱っているガザに持ち込むわけにはいかない。
前々回(2008年末~2009年初め)、前回(2014年)のガザ戦争の現地取材を思い出しながら本稿を進める。
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イスラエル軍のバンカーバスターは、5階ビルの屋上から1階まで真っ直ぐ貫いて落ちていた。
対するハマスのロケット弾はブリキ製だ。田中は現物を見たが、まるでオモチャのようだった。イスラエルはこれをアイアンドームと呼ばれる精巧な防空システムで迎撃する。
大人と子供の喧嘩なんてものではない。巨象とアリの戦いである。圧倒的な力の差である。当然、ガザ側の被害の方がはるかに大きくなる。
子どもたちが描く絵は、イスラエル軍のドローンが圧倒的に多い。親族がドローンから攻撃されて命を落としているからだろう。
目の前で父親がイスラエル軍に殺されたという男の子に「将来何になりたいか?」と尋ねた。
男の子は迷うことなく「ハマスの兵士になる」と答えた。圧倒的な力の差が、ハマス兵士を産む。
【写真説明】不発弾が当たり前のようにそこかしこにあった。危険極まりないのだ
が、子供はそれを玩具にして遊んでいた。戦争の日常化だ。=2014年、ガザ
中部 撮影:田中龍作=
この先、本格戦争になれば、イスラエル軍は陸上侵攻する。
空爆では叩けないハマスの地下施設を発見し、潰すためだ。地下施設は民家の一階が入り口になっていたりする。こればかりはドローンでも発見できない。
イスラエル軍の陸上部隊は、内部通報に基づき、地下施設の入り口と思われる民家を急襲する。
民家への攻撃の際、起きるのが虐殺とレイプだ。家が丸ごとすっぽりと消え、キャタピラーの跡だけ残っているのは、蛮行を隠すためだ。虐殺の現場を見届け世界に伝えるのは、ジャーナリストをおいて他にない。
イスラエル軍の広報官を務める将校は、田中のインタビューに、民家への攻撃を認めたうえで「(ハマスの地下施設を叩くために)どうしても行き過ぎが起きる」と苦笑した。
「母親がレイプされ殺された」と話す少年は後に、ハマスより過激とされる「イスラム聖戦」の戦士となった。
力の差があればあるほどガザ地区における民間の犠牲者は増える。肉親を殺された子供は戦士となる。
イスラエルは米国の援助を受けて米製兵器を大量に買う。そして消費する。
永久運動のループである。この戦争は尽きない。
← つい数日前まで暮らしていた集合住宅は、爆撃で破壊された。人々はテントの下でアラビアンコーヒーを飲んでいた。=2014年、イスラエル国境に近いガザ北部 撮影:田中龍作=
~終わり~