2023年1月21日土曜日

第8波 医療崩壊深刻 救急搬送困難が最多

 コロナによる1日の死者数は最多更新が続き、11月以降でこれまでの累積数の3割に達しています。コロナの感染拡大に伴う医療崩壊は深刻で、119番につながるまでに40分乃至2時間かかると言われます。運よく救急搬送先が見つかっても車内で2時間待つケースもあります。ある病院では通常1日10件を受け入れていますが、現在はその6~10倍もの要請があるということです。

 こうした破綻がこれまでの新自由主義的な効率優先の医療構造改革で急性期病床を減らし、ベッドの回転率向上を求めてきた政府の政策に拠っているのは明白で、それを、「行動制限せず社会経済活動を回すというのなら医療体制を拡充するしかないのに岸田政権は発熱外来の診療報酬を引き下げたり、空床確保補助金の補助範囲の縮小など逆行する政策をとっている」とある医師は告発します。それは本来なら助かるべき命が失われていることにつながっています。
 しんぶん赤旗が医療崩壊の実態を報じました。
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2023・とくほう・特報
8波 医療崩壊深刻 救急搬送困難が最多 「119番」かけても切れる・重症者も受け入れ不能
                        しんぶん赤旗 2023年1月19日
 日本で初の感染確認から丸3年が経過した新型コロナ感染症。第8波の感染爆発で「医療崩壊」を起こし、患者の搬送先がすぐ決まらない「救急搬送困難事案」は4週連続で過去最多を更新しています。1日の死者数も最多更新が続き、死者は昨年11月以降で1万7000人を超え、累計死者数(6万3320人、17日)の3割近くです。第8波の死者の9割以上が70歳以上の高齢者です。岸田政権は重大事態に目をつぷり、医療費公費負担の根拠となる感染症法上の類型見直しなど対策緩和を進めています。高齢者をはじめ多くの国民が命の危機にさらされています。 (内藤真己子)

 「頭痛と顔面マヒで119番しても応答がないまま切れてしまう。救急病院で診察されるまで4時間半。医療崩壊をひしひし感じた」。東京都町田市の男性(77)は恐怖を隠しません。
 昨年12月30日午後1時すぎ、障害のある40代の娘の異変で119番通報すると「呼び出しましたが、お出になりません」と音声が流れ、切れてしまいました。6回目でつながるまで40分ほどかかりました
 駆け付けた救急隊員が脳神経外科の病院を総当たりし、やっと横浜市内の大学病院が受け入れてくれました。ところが到着しても車内で2時間待機、救急外来に入れたのは午後5時25分でした。
 I19番につながるまで2時間かかる」ともいわれ、第8波が招いた医療崩壊は、緊急通報体制の崩壊にまで連鎖しています

救急隊出動できず
 今月上旬。東京都立川市の立川相互病院(287床)の救急医療用の端末から警報音が鳴り響きました。東京消防庁から「救急隊は全隊出動し、今後1時間は救急出動できない」とのアナウンスが流れました。「警報はコロナ禍で初めてです」。山田秀樹救急診療部長・副院長は危機感を募らせます。
 同病院の通常時の救急搬送受け入れ率は約9で、1日平均10件を受け入れます。それが年末年始を挾み要請数は6倍~10倍に激増しました。冬期に増える急性疾患にコロナが重なっていますが、受け入れ数は1日20件前後にとどまります。
 その理由を山田医師は「感染力の強いオミクロン株により近隣の病院や高齢者施設でクラスター(感染者集団)が多発、コロナ病床(35床)は満床状態が続いています。私たちの病院の一般病床でもクラスターが出て新規入院を停止していました。家庭内感染で欠勤する医師・看護師が減らず運用できないベッドがある」と説明します。
 重症の救急患者も断らざるを得ません。酸素飽和度が70~80台の重い呼吸不全のコロナ患者心肺停止、緊急手術が必要、出血や脳卒中の疑い…。
 「救急患者の多くは高齢者です。救える命が救えない人権侵害が広範に起きている」と山田医師。「政府は新自由主義的な効率優先の医療構造改革で急性期病床を減らし、ベッドの回転率向上を求めてきました。それがコロナで破綻しているのです行動制限せず社会経済活動を回すなら医療体制を拡充するしかないのに岸田政権は、発熱外来の診療報酬を引き下げたり、空床確保補助金の補助範囲の縮小など逆行する政策をとっている」と告発します。

高齢者の人権が
 コロナ病床使用率が78超で全国2位の神奈川県。川崎市川崎区の川崎協同病院には今月中旬の深夜、3台の救急車が救急外来の受診を待ち、さらに2台が向かっていました。
 「横浜市の救急隊が『市で30力所かけてもダメ。待ってもいいから』と市境を超え時間以上かけて来ます。搬送要請は1日30件。半分以上斯らざるを得なとと言うのは同病院コロナ病棟責任者の和田浄史外科部長。救急外来はコロナを疑う発熱とそれ以外を分離していますが、高齢者の転倒や入浴中の水にコロナが潜んでいる例が増え、患者ごとに清掃を徹底するなど気が抜けません。
 2020年4月にコロナの「重点医療機関」の指定を受け、中等症患者を受け入れてきました。現在16床のコロナ病床で、のべ550人以上の入院患者を診てきた和田医師はこう語ります。
 「第5波までは30~50代の肥満の人が呼吸不全でばれましたが第7波から様変わりし、現在の入院患者の平均年齢は83です。全員に食事や排せつの介助が必要で、看護師には感染防護具をつけ、医療処置のほかに長時間の介護支援が必要になり、大きな負担がかかっています
 高齢者がコロナにり患すると基礎疾患の悪化や誤嚥性肺炎で命を落とす例が目立つと言います。さらに、救命しても食事や排せつの介助が必要になったり、痰の吸引や点滴など医療的処置が必要になることが多いとも。
 「元いた自宅や施設に戻れないことも多い。医療的処置ができる近隣の施設は月20万~30万円かかり、負担できなけれぱ家族と離れ山間部の方の施設へ行く。コロナになると生活の質が著しく低下し寿命も短くなる人権を考えると、高齢者だから仕方ないとはとてもいえません」。和田医師は苦悩を打ち明けます。
 3年間、同病院では員同士の会食や旅行の自粛を要請してきました。「感染が拡大するたびに医療に負荷がかかり、職員は疲弊しています。旅行支援に税金を出すくらいならコロナ病床の看護体制を増やしてほしい」と話します。

政府は対策強化せよ
 日本共産党東京都委員会谷川智行コロナ対策部長の話
 感染急増で発熱外来はひっ迫し、治療にたどり着けず自宅で容態が急変するケースが続出しています。高齢者施設でクラスターが多発、入院できず患者が施般に留め置かれたことが被害を広げています。病院では職員の感染や院内クラスターで病床ひっ迫と救急医療の崩壊が深刻になりました。
 政府は対策の緩和ではなく、医療機関、高齢者施設などへの支援を強化し、高齢者施設での頻回検査と感染者の入院治療を徹底すべきです。


救急搬送困難事例件数の推移(グラフ)

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