2023年1月13日金曜日

「台湾防衛」日米同盟は「かなめ」 米シンクタンクが台湾戦争の机上演習

 米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)は、中国が26年に台湾を侵攻すると想定した「台湾防衛」の机上演習を行った結果、日本の役割は、あらゆる同盟国の中でも最重要「要(かなめ)」になると指摘し、在日米軍基地の使用と自衛隊の参戦を促しました。
 自衛隊は在日米軍や自衛隊の基地が攻撃された場合に参戦し中国側の攻撃で平均122機の航空機、26隻の艦船を損失し米軍も毎回2隻の空母が撃沈されたほか、168~372機の航空機、7~20隻の艦船を失い、台湾軍も平均約3500人の犠牲者が出るという結果でした
 米軍は「在日米軍基地の使用なしに戦闘機・攻撃機は戦争に参加できない」として、航空基地の嘉手納(沖縄県)、三沢(青森県)、横田(東京都)、岩国(山口県)を使用するとしているので、当然これらの基地は中国のミサイルの標的になります。しかし基地に留まる保証は何もなく、実際には逆に首都東京をはじめとして日本の主要都市は灰燼に帰しますが、机上演習結果の報告は軍隊の被害に限定されています。

 問題は、中国は台湾との間で膨大な貿易量を維持していて、台湾を侵攻する意図を持っていないにもかかわらず、米国が何故その蓋然性が高いとして26年とか27年に台湾戦争を想定しているのかということです。
 それは中国は、今後も急成長を続け26年か27年にはGDPで米国を追い抜くと米国が想定しているからで、無理にも台湾戦争を誘発させることで中国本土に激烈な損害を与えてその発展を阻止しようとしているからです。日本が今後5年間で軍事費を倍増させる理由もそこにあります。
 しかしそんな理不尽で子供じみた米国のプライドのために、なぜ日本が廃墟にならなくてはならないのでしょうか。
 しんぶん赤旗と毎日新聞の記事を紹介します。
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「台湾防衛」日米同盟は「要」 日本の「先制攻撃」に言及
   米シンクタンク報告書
                        しんぶん赤旗 2023年1月12日
 米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)は9日付で、中国が2026年に台湾を侵攻すると想定した「台湾防衛」机上演習結果を公表しました。結果をまとめた報告書は、日本の役割は、あらゆる同盟国の中でも最重要の「要」になると指摘。在日米軍基地の使用と自衛隊の参戦を促しました。
 報告書は、想定するすべてのシナリオで「在日米軍基地を使用しなければならない」と断定。とりわけ、「在日米軍基地の使用なしに戦闘機・攻撃機は戦争に参加できない」として、航空基地の嘉手納(沖縄県)、三沢(青森県)、横田(東京都)、岩国(山口県)に言及しています。
 「台湾防衛」のための在日米軍基地の使用は、日米安保条約第6条に基づく事前協議の対象になりますが、報告書は、「日本は使用を認めるだろう」としています。
 その場合、在日米軍基地は当然、中国軍によるミサイル攻撃の対象になると想定しています。そのため、報告書は、基地の防護シェルター増強と、部隊を分散して展開するために民間空港の使用を提案しています。
 自衛隊の参戦については、「(自衛隊)基地、または米軍基地が攻撃された場合にのみ、日本が戦争に参加する可能性が最も高い」としていますが、在日米軍基地への攻撃が前提となっている以上、自衛隊は自動的に参戦することになります。
 さらに、報告書は、日本の国土が攻撃を受けていなくても、自衛隊が当初から戦争に参加する可能性に言及。その根拠として、「日本政府は、(敵対国が)日本への攻撃に着手したとみなせば、先制攻撃は可能だとしている」として、「台湾戦争のたくらみは、先制行動を正当化する環境を整えるかもしれない」と指摘しています。
 同報告書は、敵基地攻撃能力は「先制攻撃」に使われるものだとみなしています。敵基地攻撃能力や、米軍・自衛隊基地の強靱(きょうじん)化、民間空港の軍事利用はいずれも、岸田政権が閣議決定を強行した安保3文書に盛り込まれています。


中国の台湾侵攻防いでも日米は大損害 米シンクタンクの机上演習
                            毎日新聞  2023/1/10 
 米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は9日、中国人民解放軍が2026年に台湾への着上陸侵攻を図ると想定した机上演習(ウオーゲーム)の結果を公表した。米軍が台湾側で参戦したシナリオの大半で、中国は早期の台湾制圧に失敗したが、在日米軍や自衛隊の基地が攻撃され、日米も多数の艦船や航空機を失った。日本が中立を保って米軍の参戦部隊の基地使用を認めなければ、台湾側が中国に敗れるという結果も出た。
 机上演習は22年夏から行われ、米軍の元幹部やシンクタンクの軍事専門家らが参加した。「中国が台湾に侵攻し、米国が台湾防衛に加わる」「核兵器は使用されない」との前提で、数週間の軍事衝突をシミュレーションした。米軍の参戦時期、台湾軍の即応体制、米軍の空対地ミサイルの対艦攻撃力の有無などの前提条件を変え、計24のシナリオを試した。
 CSISが最も可能性が高いとみる条件で行った3回の演習のうち2回では、中国側が台湾の主要都市を制圧できないまま、10日以内に補給困難に陥り、「敗北」との判定になった。残る1回では南部・台南の港を一時制圧したが、米軍の空爆で港は使用不能となり、「こう着状態だが中国に不利」と判定された。
 一方、自衛隊は在日米軍や自衛隊の基地が攻撃された場合に参戦したが、中国側の攻撃で平均122機の航空機、26隻の艦船を損失した。米軍も毎回2隻の空母が撃沈されたほか、168~372機の航空機、7~20隻の艦船を失った。台湾軍も平均約3500人の犠牲者が出た
 台湾や米国にやや不利な条件で行われた17回のうち3回では「こう着状態だが中国に有利」との判定も出たが、中国の「勝利」と判定された例はなかった。
 だが、台湾が単独で防戦した場合や、日本が中立を保って紛争に参加する米軍部隊の在日米軍基地の使用を認めなかった場合には、中国が「勝利」した。
 CSISの報告書は台湾が中国の侵攻に屈しない条件として、台湾陸軍の強化▽在日米軍基地の使用▽初期段階からの米軍の直接的関与▽米軍の長射程対艦巡航ミサイルの強化が「非常に重要だ」と指摘し、台湾への武器供与や日本との緊密な連携などを米国政府に提言した。

 演習を運営した安全保障研究者のマシュー・カンチアン氏は「中国は多くのシナリオで在日米軍や自衛隊の基地を攻撃した。日本は九州・沖縄の航空自衛隊基地の強靱(きょうじん)化など備えを進めるべきだ」と指摘した。

 米中間の紛争を想定した机上演習は、米軍やシンクタンクも実施している。米軍の20年10月の机上演習では、中国が開戦初期に米軍の通信ネットワークを無力化し、米軍は「みじめな失敗」(当時のハイテン統合参謀本部副議長)に終わった。シンクタンク「新米国安全保障センター(CNAS)」が22年4月に「27年の中国による台湾侵攻」を想定して行った机上演習では、米中双方が大きな被害を受けて、戦争は早期に決着しなかった。【ワシントン秋山信一】